【九十九路】『匣』【第四期】

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部屋のあるじ ジン 年齢不詳/女/150cm 一人称:わたし 二人称:あなた
 明星の羅針盤 ポイント計75pt(強靭:0 知能:75 器用:0 機敏:0 幸運:0)

 90年前に何もない『匣』のなかでめざめた少女。30年前に出会った友人に「ジン」という名前を貰った。
 “ともだち”との出会いと別れを経験しかなしみと安堵を知り、憂うような表情も見せるようになった。
 『匣』のなかへ本当に来訪者が現れることが裏付けられたため、次の来訪者を心待ちにしている。
 次に誰かがやってきたら友人の行く末を訊ねるつもり。

『匣』
 四方の壁も床も天井も、30年前に突然一か所が青く塗りつぶされた以外はすべてが真っ白だった何もない部屋。
 日によって広さが異なる。
 少女、改めジンは自らの居る空間を便宜的に『匣』と呼ぶことに決めた。
 
 (誰からも教わっていないにもかかわらず)少女が知っていることは以下の通り。
 ▶ジンは『匣』から出ることができない。
 ▶30年にひとりだけ、この『匣』に訪れて「なにか」ひとつを残していくことができる。相手が出入りできる期間は長くて1年ほど。
 ▶もたらされた「なにか」によって、『匣』とジンは変容しうる。
 ▶ジンは「なにか」を施してくれた相手のために、ひとつだけ願いをかなえることができる。
 ▶ジンは死ぬことができない。


 よく見ると壁の一部には奇妙なレリーフが薄く彫られている。
 少女はこの図案の意味を知らないが、それを目にするとなぜか懐かしいような気持ちになる。


「祈りの花園」
 29年前、イェツェンが『匣』に出入りできなくなってから「青い壁」の一区画にちいさな扉が出現した。
 その扉の先に広がっていたのは、『匣』内の新たな区域と思しき部屋。
 白い祭壇に似た広々とした空間で、種の特定できない白桃色の花がどこからともなく降り注いでいる。

前期絆関係
 前期/無名だった少女【illust/62440669
 前期絆相手/神託下る安寧の国メ・ルチア イェツェンさま【illust/62436772
   「つぎにこの部屋にだれかが訪れるなら、あなたの消息をたずねたい。
    もうとっくにあなたが終わりを迎えていたとしても、さいごの足どりまでちゃんと知っておきたいから」
 絆相手今期/神託下る安寧の国メ・ルチア エイデスさま【illust/63062830
   「イェツェンの故郷が、今もこれからもイェツェンの望む路を辿れるといいな」

絆/『ともに生きてほしいひと』 アンフィサさんillust/62996246】(5/29)
▽囚人
イェツェンが閉じ込められているわたしをはじめにそう解釈したように、
一般的には彼女の如く拘束されているものをつみびとと呼ぶのだろう。
わたしと似たような状況下にあるのだから、彼女と親しくなれそうな気がした。
「わたしはジン。あなたは?」声をかけても反応はない。昔のわたし同様に声を出す機能がないのだろう。
わたしと似たようなものならそうあって当然なので別に悲しむことではないし、
それ以前に二人目の来訪者を歓迎しないわけにはいかない。
本の中には喜ぶべき客人を歓迎していない物語はないから間違いない。
ゆえに、彼女が応じないのも気にせず話せることを話し続けた。彼女はずっと無反応のままだった。

▽執心
彼女に意識はあるのだろうか。いっそ意識がない方が良いのかもしれない。
感知できず発信できないのに思考しつづけるのは、知性ある動物として苦痛に違いない。
わたしはだんだん自分だけ話すのではなく、彼女の声も聞いてみたくなった。
瞳が見たくなった。笑顔を見せてほしくなった。
意味ある対話は成せていないが、もう十分に彼女はわたしにとって大切な相手だった。
このまま何も話せないまま別れたら、きっと“さびしい”。

いつからか彼女の顔を覆う羽が少しずつ開いている。
彼女はたまに上を見てはうつむくので、もしかしたら光がまぶしいのかもしれない。
今度はただの光だけじゃなくて、わたしのこともみてほしいな。

▽羽冠
その日彼女の羽は完全に開ききって、彼女は何か恐るべきものを見るような目でわたしを見た。
大事な人には何をすればいいのだったか、あの本にはなんと書いてあったか。
そうだ、眠る“姫”には“口づけ”をするものなのだった。
…“王子様”のようにできただろうか。
見れば信じられないと言いたげなまなざしだった。とてもきれいな瞳だった。

▽誓約
最初彼女は警戒しているようだったが、次第に話をしてくれるようになった。
彼女はアンフィサという名で、罪人ではなく羽冠の贄器とよばれるものらしい。
初めは羽冠が開いて結晶になる前に殺してほしかったのだと言うから、わたしは悲しくて仕方なかった。
 「もうそんなことは願わないで。置いていかれるのは悲しい。わたしを置いて死なないでほしい」
死ねないくせに、そんな我が儘を口にした。

▽願い
アンフィサはたいていはわたしの願いを聞いてくれた。けれど、あまり自らの願いは口にしない。
それでは割に合わない。イェツェンといい、来訪者たちはなぜこうなのか。
本当に大きなことでも大丈夫だから言ってみてほしい。わたしは今、あなただけのために願いを叶えたい。
…請えば、忌わしい祠を壊してほしいと頼まれた。
 「わかった。あなたのつらかったこと全部、その祠と一緒に壊そう」

▽遺されたもの――『糸口』
アンフィサはわたしと再会するまで待つと言った。
祠の外でわたしを待って生きていてくれると言った。
だから、わたしも外へ出たい。アンフィサに会いたい。メ・ルチアに行きたい。

祠から出れば死ぬはずのアンフィサが『匣』に訪れたのにはきっと理由がある。
それを解き明かせれば、わたしもきっと…。

:企画元:九十九路の羅針盤(id=60865485)

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2017-05-21 13:13:29 +0000