【九十九路】アンフィサ 【第四期】

佐治
Preview Images1/22/2

◇…羽冠の贄器 アンフィサ
羅針盤:月光/年齢:20/性別:女 ポイント 50pt (強靭:10 知能:20 器用:10 機敏:0 幸運:10)

普通の暮らしを夢見ていただけの穏やかな女性。
聖体結晶の真実を知った彼女は、結晶化する前に死ぬことを望んでいる。

絆:『匣』部屋のあるじ ジンさん(illust/63008690) 愛しい聖獣の少女
祠に連れられてから、どれほど経ったか分からない
羽冠が閉じてからの感覚がもう分からないほどになっていた
ある日、気が付いたら違う場所に居たことに気付く
祠とは空気が違う、それだけは分かったから
-----
空気が動くのを感じられた。きっと目の前に何かがいる。
それでもその時の私にはどうでもよかった
この状況が夢であっても、自分の状況が変わらないことにひどくがっかりしたから
現実でも夢でも同じなら、意識を手放してしまえば楽になる

目が覚めるといつもの祠 慣れた空気の匂いだった
-----
再び意識を手放したとき、またあの何処かだった
今回は何かが私に触れた どうやら触れたものは手のようで、おそらく人であった
男性の手というほど大きくも無いけれども、触れる手はどこか優しかった
断片的な情報を得つつも、困惑の中に少しの恐ろしさを内包し始める
またしばらくしてから意識を手放した
-----
目が覚めるとどこか視界がぼんやりと明るくなっていた 羽冠が開き始めたのだ
あの何かはやはり私の聖獣のようだが、祠にはいない あの場所は夢ではない…
…では私は一体どうやってあの場所へ?
-----
気が付けば度々あの場所にきていた
羽冠が開き始めたことで、垣間見えるその場所は白く眩しい
また此処にいる何かも白いような気がする
言葉も発せず、何も反応がない私に、その何かはどう思っているのだろう
もし人であるなら、私の願いを聞いてくれるだろうか 嗚呼、でも声がない…
-----
羽冠が開ききった頃、初めて何かを目にした時は驚いた
彼女はジンという名で、この『匣』に閉じ込められているらしい
自分と似た境遇に同情を覚えたのも束の間 彼女が、この目の前の聖獣が、私を殺すのだと悟った
あれだけ殺してほしいと願ったのに、何故だろう 途端に恐ろしく思えた
緊張したまま身構えていると、彼女は唐突に私に口づけをした
あまりにも唐突な出来事に、唇から熱が全身に渡ったような気がした
「何で……」
声が戻ったことに気付いて驚いた 彼女を見るとこちらも唖然としていた
その顔はおかしくて、いつ以来だろうか 少し声を出して笑ってしまった
-----
聖獣、いやジンの寵愛を受けたからには、やはり殺されるのだと思うと、どこか身構えてしまっていた
それでも彼女は変わらず私に接してくれる どこか不思議な気持ちであったがまだ人と認められている気がして嬉しかった
自分のことを話すうち、つい結晶になる前に殺してほしかったことも言ってしまった
彼女はひどく悲しい顔をして、置いていかないでほしいと言った
貴女が醜く恐ろしい魔獣であったなら、憎しみや恨みを込めて、どうせお前に殺されると言えたのに…
無垢なジン 罪人が閉じ込められるという『匣』にいる彼女
このまま結晶化してしまえば、私は、ジンに罪を背負わせることになってしまう…
 
「置いていかないわ。貴女を置いて、逝ったりしない」

祠に戻ったら結晶化してるかもしれないのに 私は彼女に嘘をついた
-----
目が覚めたら結晶化していなかった 手足の拘束も消滅していたし、羽冠もゴトリと音を立てて外れた
贄器になって以来、胸がこんなにも熱く、こんなにも寂しく思ったことはあっただろうか
生きたい 呪縛を解き放ってくれた彼女の為に生きたい でも…

「ジン、此処に貴女はいない。どうして?」
-----
来訪者が『匣』に訪れることができる期間は短いと聞いた
もしかしたらこれが最後かもしれないと思うと寂しくてたまらなかった
その『匣』に訪れたとき、ジンに願いはないのかと聞かれた
一度死んだような身に願いごとなどと思っていたけれど この間抱いた感情に思わず口が動いた
「祠を壊してほしいの。あの場所には、貴女がいなくて寂しい。それに祠を壊せば次の贄器もしばらく作れないわ」
どうせなら此処に居たいと願えばよかった でもきっと彼女はそれを喜ばないだろう…

「ジン、貴女が外に出られる日を待ってるわ。私が此処に訪れることができなくなったら、貴女が私に会いに来て」

希望をこめて

「そうね、あの絵本にあったような可愛らしい家がいいわ」

今度は私が迎えて自分の話をまくしたてるわ、ジンが初めて私にしてくれたようにと、彼女に笑って見せた
-----
目が覚めると祠に亀裂が入っていた 慌てて外に出ると音を立てて崩れ始めた
その光景を見て、もう二度と『匣』を訪れることはない気がした
感傷に浸っている間もなく、足早に聖獣の庭を駆ける 彼女の為に生きると、待つと決めたから

愛しい聖獣よ、早く私の元に来て


◆…羽冠の贄器(しき)
聖獣の力をその身に宿すための贄器として奉げられる者のこと。
聖獣の庭の祠に奉げられた贄は、羽冠で目と耳を覆われ、声を奪われ、祠の外では生きることができない呪縛を施される。

聖獣の寵愛を受けた贄は結晶に閉じ込められ、ある聖都の大聖堂に聖体結晶として納められる。
その際、結晶武器が一本削りだされ、神聖武器として聖騎士に預けられる。
聖体結晶は各国・街の守護結界として長きに渡り安置される。
力を失った聖体結晶は破壊され大聖堂に戻された後地下の泉に沈められるという。

設定詳細はこちらに→novel/8240627

◆…設定は企画内にてご自由にドウゾ。

■企画元(illust/60865485)

#【九十九路】#【九十九路】羅針盤:月光#【九十九路】第四期#【九十九路】女性#【九十九路】絆:済

2017-05-20 22:09:35 +0000