【PFT】椿真珠物語9

よし(北雪恵子)

【椿真珠物語】前illust/57202285 次illust/58197462
【物語の最初から】illust/56065757

今は昔、新津の地にて。

一瞬の隙をつき、椿切刀の斬撃が連の御首にかかります。
何百年も生き物の血を吸い続けた凶暴な刃は ヒュボリッ と音を立てて彼の首を刎ね飛ばしました。

いいえ、そのはずでした。それは空を斬る音だったのです。

「まぁ!」と椿姫は驚きの声を上げ、再び連を斬りつけます。
いくら斬っても、斬っても斬っても、連を傷つけることが出来ません。
まるで霧か霞のように、刃は連の身体を通り抜けてしまうのです。

さぁ、椿姫は驚きのあまり「あぁ!主様はバケモノだ!」と声を上げました。
椿姫に斬れぬものなど、この世にはなかったはずなのに!
すると連はピシャリと姫に言い放ちます。天も割らんとするような怒鳴り声です。

「馬鹿者!刀で亡者が斬れるとでも思うたか!
 貴様の前に見えておる某の姿は、弔い香炉の黄泉送りの煙が形を成した姿じゃ!
 鬼人に化けて何百年も『者』を斬るの一つ覚えで、お前は何も学んではこんかったらしい!
 そんな刀の変化風情に某の御首がとれるものか!某は新津国の『鬼斬りの大連』ぞ!!」

椿姫は恐怖のあまり「きゃぁ!」と泣き叫ぶと、その姿は元の折れた大刀の切っ先に戻ってしまいました。

「あぁ!あるじ様など大っ嫌い!!つばきはあるじさまなどだいきらいです!!」

持ち手を失い、ガシャリと音を立てて地に落ちた悪刀を、連は元の鞘に納めます。
連が死んでからもずっと手放すことのなかった、椿切刀の大鞘です。
連の魂はイザナ神によってこの鞘の中へ納められ、来るべき日を待ち続けていたのです。

「…某が死んでから、一体どれほどの年月が流れただろう。
 お前はまだまだ元気な様じゃ、今からでも人の世に渡り、斬る以外の事柄を学ぶがいい。
 若那が某を大切にしてくれたように、戦う以外の事を知るがいい。
 世の中は広い、人は悪党だけではなく親切な者もおる、花も驚くほど美しい、今からでも、遅くは無い。」

連の心に生前の思い出が蘇ります。
椿切刀は連が父王より授けられた唯一の贈り物でしたから、連にとっても彼女は大切な剣でした。
命じられるまま、椿切刀とたくさんの者共を斬って斬って、その末に連は死にました。
オハラの岬で優しい若那と出会うまで、連もきっと戦う道具のようなものだったのかもしれません。

そして連は、自分をここまで導いてくれたillust/56931257香炉の神・撤嘸至於を思いました。
暗い森で独りきり、人から引き離されて寂しい思いをしていた娘の神の怒りと悲しみの面差しが、
泣き叫ぶ椿姫の無垢な顔にどこか似ていたように思えました。

「……お前は戦に用いられた剣ゆえ、戦人に必要とされた。
 それと同じように、お前も戦人を必要としとったのだな…。」

封じた太刀を見つめながら、あぁ…と小さくつぶやく連の背に、不意にかわいらしい娘の声がかかります。
連は驚いて振り返ると、地面に見事な大粒の真珠がコロリと転がっておりました。

「まぁまぁ!貴方様が『鬼斬り連』…?私(わたくし)、貴方様を存じております。
 幼き頃より、母が寝所でいつも貴方様のお話を私に話して聞かせて下さいました。
 昔話の英雄にこうしてお会いできるなんて!こんな驚く事、真珠は生まれて初めてにございます!」

//お名前お借りしました
死を葬る香炉・終朱摂ちゃんillust/55954900

//大連武尊illust/56065757と天女の若那illust/56066912
//首狩り椿姫illust/55672182illust/56318852
//阿古屋真珠比売illust/55722931illust/56647581

//四章活動宣伝(皆様ご参加ありがとうございました!!)
//海神真珠貝兵団illust/55643952
//自キャラタグ:椿真珠物語 自キャラ用タグですが真珠姫・椿姫との交流の際に是非!
//タグ提案【嵐の大海演乱舞】illust/56221246

//第四章「新津新天地編」illust/55643642、オハラ国illust/55643541
//「新津新天地編」最終章結果発表illust/56686568

//テーマ企画【illust/49662235

#yosi_pfT#pixiv Fantasia T#椿真珠物語#PFT新津新天地編#【真珠貝兵団】#yosi_pfT新津

2016-07-05 07:27:13 +0000