【PFT】撤嘸至於迷桜落花ノ図

よし(北雪恵子)

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『椿真珠物語』へ続く…illust/56444777

昔々、新天地が閉ざされるよりずっと昔の事でした。

鬼のよって首を刎ねられた大連illust/56065757の魂は、イザナ神illust/55643541の深い慈悲を受け、
現在『新天地』と呼ばれる地に長い年月留まって消える事はありませんでした。
古の弔いの香炉「撤嘸至於終朱摂」illust/55954900の力によって再び目覚めた大連は、
恋人の若那illust/56066912を探し、その足で尾原の民の元へと向かいました。

道中、美しい桜を目にした連は香炉の神へ言いました。本当に綺麗な桜だったのです。

「綺麗じゃのぉ、綺麗じゃのぉ。
 某が死して眠っている間、若那は何度、新津の桜を目にしただろう。
 某は若那を置いてけぼりにしてしもうた事を心残りに思うとる。すまなんだと思うておる…。」

連を蘇らせた香炉の神は、長い事、閉ざされた新天地で人に置いてけぼりにされていましたから、
連はこの神の孤独や憤りをずっと気にかけていたのです。

「人間の時には限りがある、命にも限りがある、そうして果たせぬ約束も、この世にある。
 某には今、痛いほどそれがわかる。だから、某がそなたに謝ろう…。
 人間がそなたに長く寂しい思いをさせた事、許しておくれ、撤嘸至於。
 きっと良き主が見つかるだろう。大切にしてくれる者が見つかるだろう。
 人には、そなたのような葬いを司る者が必要じゃ。
 香が生きて残る者にとっての慰めとなり、煙は死して逝く者にとっての導となる。
 この世の命の生き死にが理ならば、そなたの事を必要とする者は決していなくならない。
 だからどうか、人間を許しておくれ。」

それから連は暫く口を噤んで、そしてこう続けました。

「若那は某を大切に思ってくれた。剣を振るえば帝も民も某を褒めてくれたが
 若那は某の『そのまんま』を好いてくれた最初のおなごだった。
 尾原のあの真珠の岬に、若那の墓があるならば、…もしもあったとしたならば…
 若那は某を許してくれるだろうか。尾原の岬で、待っていてくれただろうか?
 それとも帰らぬ男に愛想を尽かし、とっとと天へ帰ってしもただろうか?」

花びらのように想いは降り積もります。
はたして連の行く先に、若那はいるのでしょうか?

//詳しい事情はもちろん知らないのだけど、連はせっちゃんに謝っときたかった。
//こちらillust/56344588の素敵なおまじないを信じて最終戦に挑みますよ!

//第四章「新津新天地編」illust/55643642、オハラ国illust/55643541
//最終章「新津を継ぐ者」illust/56431506

//テーマ企画【illust/49662235

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2016-04-20 09:08:41 +0000