【新津今昔物語】前illust/56369198 次illust/56605879
『椿真珠物語』へ続く…illust/56444777
昔々、新天地が閉ざされるよりずっと昔の事でした。
鬼のよって首を刎ねられた大連illust/56065757の魂は、イザナ神illust/55643541の深い慈悲を受け、
現在『新天地』と呼ばれる地に長い年月留まって消える事はありませんでした。
古の弔いの香炉「撤嘸至於終朱摂」illust/55954900の力によって再び目覚めた大連は、
恋人の若那illust/56066912を探し、その足で尾原の民の元へと向かいました。
道中、美しい桜を目にした連は香炉の神へ言いました。本当に綺麗な桜だったのです。
「綺麗じゃのぉ、綺麗じゃのぉ。
某が死して眠っている間、若那は何度、新津の桜を目にしただろう。
某は若那を置いてけぼりにしてしもうた事を心残りに思うとる。すまなんだと思うておる…。」
連を蘇らせた香炉の神は、長い事、閉ざされた新天地で人に置いてけぼりにされていましたから、
連はこの神の孤独や憤りをずっと気にかけていたのです。
「人間の時には限りがある、命にも限りがある、そうして果たせぬ約束も、この世にある。
某には今、痛いほどそれがわかる。だから、某がそなたに謝ろう…。
人間がそなたに長く寂しい思いをさせた事、許しておくれ、撤嘸至於。
きっと良き主が見つかるだろう。大切にしてくれる者が見つかるだろう。
人には、そなたのような葬いを司る者が必要じゃ。
香が生きて残る者にとっての慰めとなり、煙は死して逝く者にとっての導となる。
この世の命の生き死にが理ならば、そなたの事を必要とする者は決していなくならない。
だからどうか、人間を許しておくれ。」
それから連は暫く口を噤んで、そしてこう続けました。
「若那は某を大切に思ってくれた。剣を振るえば帝も民も某を褒めてくれたが
若那は某の『そのまんま』を好いてくれた最初のおなごだった。
尾原のあの真珠の岬に、若那の墓があるならば、…もしもあったとしたならば…
若那は某を許してくれるだろうか。尾原の岬で、待っていてくれただろうか?
それとも帰らぬ男に愛想を尽かし、とっとと天へ帰ってしもただろうか?」
花びらのように想いは降り積もります。
はたして連の行く先に、若那はいるのでしょうか?
//詳しい事情はもちろん知らないのだけど、連はせっちゃんに謝っときたかった。
//こちらillust/56344588の素敵なおまじないを信じて最終戦に挑みますよ!
//第四章「新津新天地編」illust/55643642、オハラ国illust/55643541
//最終章「新津を継ぐ者」illust/56431506
//テーマ企画【illust/49662235】
2016-04-20 09:08:41 +0000