【夢現ノ陣】猪八重 萩玄【東軍】

御門まの
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「もう大丈夫。もう、きっと揺らがない。俺は“ここ”に居るために生まれ変わったんだ」
「今度こそ、今度は、絶対護るよ。先頭は任せろ!!」
「これで最後!!行こう!書人!!」

◆闘乱祭【illust/82137647
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猪八重 萩玄(Shugen Inohae)/3年/174cm/75㎏/男/7月6日生まれ
一人称:俺
二人称:キミ、呼び捨て(男子)、~ちゃん(女子)、~先輩など

基本的に脳天気にゆるふわ頭でしゃべるお気楽男子。
成績は頑張って中の上、体育など頭を使わず体を使う授業はそこそこ成績が良い。心剣の技能も、大振りでまだまだ隙が多いが一撃一撃の攻撃力は高い。
とある縁で胡蝶結家の一人娘を守護する従者の片割れとして、共に玉鋼学園で勉学に励んでいる。

心剣【焔之猪牙丸(ホムラノチョキマル)】:猪の牙のような質感の刃を持つ長巻。常時顕現型。鞘から抜くと瞳が燃えるようなオレンジ色に輝き、溢れる力が右目から炎の形を取り燃え上がる。刀自体重量があり一撃一撃が非常に重く、また力を貯めて一気に打ち込むことも可能。その際は彼の切り開いた道筋が陽炎で揺らめく。

◆関係者様(敬称略)
胡蝶結 深水(深水ちゃん/深水さま)【illust/85230227】:拾ってくれたおうちの子。彼女の側に居続けるために従者らしい振る舞いも出来るようになってはきたが、公の場以外ではまだまだ友達感覚。でもそれで良いのだ。その肩書きが重すぎた時、自分の存在が彼女の息抜きの場になれば良いと思う。
「深水さま~、ここは我々が引き受けますので、どうぞお下がりくださ~い」
「ねーねー深水ちゃん~!見て!お芋貰ったよ~!焼く?蒸かす?三人で一緒に食べよ~」


鹿乃寺 書人(書人)【illust/85230233】:一緒に従者をしてる同い年の子。彼を見習うべき部分も確かにあるけれど、それだけではなくお互いが違う立ち位置でカバーし合う事で、二人の従者である意味がきっとある。俺は君の隣に立つ男でありたい。
「猪八重は切り込み隊長だからね。背中は任せた、書人」
「従者が二人いる理由、何となくわかった気がする。……俺、書人が相方で良かった」


六条 竜洞(竜洞)【illust/85150379】:あの夏、心の傷を拡げられた後輩。でもきっと、それがあったからこそ生まれ変われたんだと、今ならそう思う。
「ごめんね。もうキミに負けてらんないんだ。見せてあげるよ、俺達の本当のチカラ」


◆夢を見た。全てを失くす夢を。
家族を亡くした。家を亡くした。受け入れてくれた家からも見離され、必要としてくれた彼女達も……。
心剣ももう無い。心剣があったからこそ、あの家は自分を受け入れてくれ、彼女達も自分を必要としてくれたのに。
心剣の無い自分の居場所はもうどこにもない。

足元に咲く蒼い花が、くすくすと笑っている気がした。


ゆっくりと浮上していく意識が、重い目蓋を押し上げていく。ふわふわとした感覚のまま視線を傾けると、こちらを覗き込む顔がふたつ。
ぼんやりと拡散していた意識と記憶がだんだんはっきりと形を取っていき、さっきまで見ていた夢が、全てが全て夢ではなかったと思い出す。それでも、こうして二人は変わらず傍に居てくれたのだ。
あの時は迷いと不安で泣きそうになりながら呟いた言葉を、今度は確認と確信を持って穏やかな気持ちで呟く。

「ねぇ……俺、ここに居ても……良いかな……?」


前回の闘乱祭が終った後、あの言葉の答えを主から聞いたか聞かないかのその刹那、ヒビの入っていた心剣がそこから真っ二つに折れた。
散り散りに崩れる心剣が日の光を反射して、きらきらしててきれいだなぁ……なんて思ったのを最後に、そこから意識が途切れている。目を覚ましたのは数日後。

それから更に数週間をあけて、今日はとある場所に向かっている。
「行きたい場所があるの。」という主の言葉を実行に移す日。
見慣れた道、だが久しぶりの道を三人並んで歩く。途中で止まってしまうかと思った足は案外スムーズに目的地に向かって動いてくれた。もう五年ぶりになるだろうか、久しぶりの道を懐かしみながら、目的地である《我が家》へと。

玄関の鍵を自ら頼んで開けさせてもらった。「……ただいま」と言ってみるが当然返事はなく、静寂だけが返ってくる。
数年をかけて清められてはいるものの、消しきれない当時の痕跡が至る所に残っている廊下をぎしりと進み、自分の部屋、両親の部屋、祖父母の部屋、客間、風呂場、台所……家中を時折壁の傷をなぞりながら見て回る。意外と心は穏やかで、少しだけ残っていた遺品に触れては、静かについてきてくれている二人相手に思い出を話した。
最後に覗いた居間は当時人が一番集まっていた場所の為か、今まで見た中で一番荒れており赤黒く染まっている。
部屋を見回しているとふと、この部屋で唯一綺麗な場所が目に入った。
奥の間の押入れ。丁度そこは、母親だったか、祖母だったか、他の誰かだったかもしれない……誰かが自分を押し込め守ってくれた場所。
ふらりとそちらに足が向き、引き手にそっと手をかける。回りの惨状に対しそこはするりと抵抗無く開いた。
あの頃よりずいぶん大きくなった体を丸め、ほとんど無意識に中へと潜り込む。

何かに呼ばれた気がした。


『戻りたいか?お前にその意思があるなら大丈夫だ。俺は意地になったが、お前なら、きっと……』


何かに呼ばれた気がした。
どうやら少し寝てしまっていたらしい。
慌てて二人の元へ戻ろうと身動ぎするが場所が狭い上に腹のあたりに何かが引っ掛かり身動きが取れない。
そうこうする内にスパンと戸が開き、覗き込む二人の視線に呆けていると、二人の目線は自分の顔から腹のあたりへと降りる。自分も二人の視線を追って自分の腹を見下ろす。

艶りとした朱色、猪八重の紋、紋を象った鍔、長い柄。


それは、一本の心剣の形をしていた。

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2020-10-25 06:45:13 +0000