■ポラリスの英雄歌【illust/80979654】第三期参加キャラクターになります。
■キャプション全文【novel/13839826】
■(10/04)素敵なご縁を頂きました!
レェ・シャーリー・エインズワース【illust/84717519】さん
彼女が欲しい、と。なによりも最初に、思ってしまった。
「これ、私の兄さん。この子は学園の友達。シャーリー」
妹が家に連れてきた少女。たれ目がちの、柔らかそうなほほえみで、軽く頭を下げて。
「珍しいな。あの部屋にあげるのか?」
「あげないけど?余計なこと言わないでよもう」
初対面であんなことを考えるなんてどうかしている。きっと勘違いだ、彼女は、妹の貴重な友人だ。と自分に言い聞かせながら、接したつもりだ。けれど家を訪ねてくるたび妹とリビングで話し込んでいれば、どうしても知ってしまうもので。
生意気な妹に負けず劣らず、意外と飄々とした子だな、とか。
はっきりとした目的に向かって、熱心に勉強しているんだな、とか。
……甘いものに目を輝かせる姿が、かわいい、とか。
そこまでくればもう流石に勘違いではないと分かってしまう。俺は、妹と同い年の少女に、一目惚れしたのだ。
だから、妹が学校を卒業して、旅に出て、もう会うこともないだろう、と。胸の奥にひっかかれるような気持ちを抱えながら、少し安心もしていた。会わなければ間違うこともない。
それなのに、どうしてか、彼女はまだこの家を訪れて。申し訳なさそうに、ご迷惑でしたか、というものだから。
「迷惑じゃない。きみが来たいんなら、いつでもくるといい」
男のところになんか一人で来てはいけないと、言わなければいけないのに。彼女とまた会えるのが嬉しくて、そう、声をかけてしまった。
それから。友人の名残を感じに、不在の物足りなさを埋めにくる彼女と、たびたび話をした。
知りたい情報を上手に尋ねて、自分の話もきちんと喋って、それからこちらの話も引き出して、世間話を続けてくれる。会話の引き出しに乏しく口下手な自分と喋っているのに、関心するくらい優秀な子だ。……それと同じくらい、さみしいのだろう。
『シャーリーさんが心配してたぞ、友達なんだろ、たまには手紙くらい出してやれ』
『わかった。とりあえず、私一人じゃないし、元気にやってるから安心してねって伝えておいて』
……本当にどうしてこの自由な妹の友人なのか?仲良くする相手はもう少し選んだほうがいいと思う。妹が直接やり取りをしていれば、彼女は俺のところになんか、こなくても済むのに。
***
――俺は、誰かが欠ける苦しみを知らない。
祖父が死んだのは、母が幼いころだと聞いている。だから俺は、直接的には人の死を経験したことがない。
ただ、思い出話をする家族の遠いまなざしを、知っているだけだ。
俺は、話を聞くことしかできなくて、それが自分にできる一番いいことだと分かってしまって、歯痒くて……抱えきれない悲しみを溢れさせ、ぽろぽろと泣く彼女にも、そうしてやることしか、できなくて。
その涙を拭い、手を握ってやることができたら、と思っても。俺は、それが許される立場じゃない、彼女の悲しみに本当の意味では寄り添えない。彼女の涙を止めてやる権利があるのは、いつか現れる、ほかの誰かだ。
「俺にはなにもしてやれないが、言葉にするだけでも、少しはマシになるんだろう。なにも気にしなくていい。他に話せる相手がいないうちは、いくらでも」
君に信頼されていたい。苦しいときに頼ってくれるのが俺であることが嬉しい。
俺を信頼しないでほしい。君が苦しいときにこんな後ろ暗い喜びを感じているなんて。
俺は、君に幸せでいてほしいと願っているはずなのに、君を救ってやれる誰かの迎えなんか永遠にこなければいいと思っているんだ。
***
そんなことを考えながら、いつまでも、頼れる隣人なんてできるわけもなく。自分のものにしたいなんて、他の誰にも渡したくないなんて、醜悪な感情ばかりが強くなって。
「もう、ここには、こないでくれ」
取返しのつかないことを、してしまう前に、と、怯えながら。
どうにか絞り出した声は、自分が思っていたよりずっと低く、強く彼女を拒絶していた。
「迷惑じゃ、ない。そうじゃないんだが、きみは妹の友人だから、」
傷付けたくない、まさにいま傷付けている、情けない、こんな醜い姿を。潤みはじめた瞳が伏せられる。薄く開かれた唇が、謝罪や強がりを口にする前に、はやく彼女を裏切らなければ。もうとっくに手遅れだが、悪いのは誰か、誤解だけはさせたくない。
「シャーリー、きみが、好きだ。だから、もう、」
こないでくれ、とは、言えなかった。ぼろぼろと涙が零れ落ちて、間違いなく泣かせてしまっているのに、何故か彼女は俺の名を呼んで、それから、花が咲くように、笑って。
――自分に都合がいい夢を見ているのかもしれない。
けれど、
この涙は、俺のものにしていいはずだ。
***
……俺は、誰かが欠けることを、知らなかった。
君はいつも、こんなものを抱えて泣いていたのか。
それでも、誰かのために、生きようなんて。
こんなことを思うようになったのは、君のせいだ、シャル。
「大丈夫だ、俺たちのことは、なにも心配しなくていいから」
体温の低い手をずっと握っていたい、明日なんかこなければいい、と。
君のせいで、俺は明日も、ちゃんと生きていく。
■コーディエ・ヴィヴ
24歳/男性/197㎝/翠才国
総ポイント125pt
運命数[6]
先代キャラクター:シトラ【illust/83708363】 総ポイント:50pt
先代婚姻相手:ルクソール【illust/83760584】さん
今期妹:シャレイ【illust/84719192】さん
今期妹:イオン【illust/84717696】
■種族設定/引継ぎ要素
ヴィヴ族(鰭墨竜)【novel/13666650】植獣竜【illust/82833248】
妖精族【illust/83760584】白の花籠り【illust/83038098】
2020-09-30 15:00:28 +0000