それはまだ、新大陸へと冒険者たちが足を踏み入れる前のこと。
空飛ぶ骨のクジラの植物園『ホエルアーク』にあるという、
欲しくて欲しくて仕方がなかった、空と海と大地を閉じ込めたような素敵なジャム。
カーターヒルの側に通りかかるらしいぞ!というロイダ局長のラジオ収録を聞いてから、
荷物持ちのメラムを連れて、空飛ぶ臨時の乗合馬車に一も二もなく飛び乗った。
スタジオを飛び出すときに、後ろでロイダ局長が慌てたような声を出していた気がするけど、
ごめんなさいそれどころじゃないのです。
だってこのチャンスを逃したら、二度と味わえないかもしれないから!
その甲斐あって、無事にジャムを買えた帰り道。
みんなのおやつに出した時の反応を考えて、心はポカポカ幸せ模様。
アサガオスタジオに向かいながら、ふと、奇麗な男の人とすれ違った。
灰に混ざる金色の髪に、キラキラ光る、蜜のような目。
「(女の人みたい)」
少しだけ、失礼なことを思いながら邪魔にならないように少しばかり右にずれる。
すれ違う瞬間、風が吹いた。
──ふわり、と。鼻先をくすぐる、あまい、匂い。
周りに花は咲いてない。
ホエルアークの植物園でも、こんな香りはしなかった。
甘くて甘くて誘うような、釣られて振り向きたくなるような。
この、匂いを。マアルは知っている。
──ああダメだ、これは、多分、『あまくて、こわい』匂いの花だ。
ざわりと背筋が粟立った。
瞬間。
「YO!マアル!遅かったNA!局長のお昼の放送始まっちゃうZE!」
やかましくて大きな声が降ってきた。
シグナの声にホッとして、その鋼の巨体に駆け寄って、くるりと振り向けば、もうそこには誰も居らず。
「……NAんかあっTA???」
「……ううん、何でもないの。……迎えに来てくれたの?」
「局長が、『マアルが一人でホエルアークまで行っちゃっTA!!』って血相変えてたからNE!」
差し出されたシグナの片手を握って歩き出す。
嗅ぎなれたシグナの鉄と鋼の匂いに、鼻の奥に少しだけ残っていた甘い香りが消えていく。
"──ああ、残念。"
少しだけ、どこか遠く、耳をかすめた低い囁きを振り切るように息を吐く。
何だっただろう、あの花の香りは、確か──……。
■14歳のキャラを描いたからには一度シーレーンの方とすれ違ってみたかった。(などと申しており)
ニアミスしただけなのでセーフ!!セーフです!!セーフですか!!?(と、言い張る)。
作中で、妙にマアルの嗅覚が鋭い理由はマアルが『ノドナシ』な為ですが、感じ取れないものだったらすいません何か上手い感じでパラレルでお願いいたします……。
こちら【novel/12341832】のマアルの過去小説でどうぞ。
ちなみに時間軸はパラレルでお願いします(土下座)(大体皆さん新大陸行ってるので)
一度描いてみたかったほぼファンアート。
子攫い艦隊シーレーン【illust/78953120】から
毒師のディエンさん【illust/78985987】
このジャムに一目ぼれした。
うみ・そら・だいちのリンゴジャム【illust/79343702】
わたしはジャム欲しさに勝手にカーターヒル近くを通りがからせましたごめんなさいの札を首から下げる。
箱庭飛鯨 ホエルアーク【illust/78995394】
この荷物持ちちゃんめっちゃ可愛い。
メラム【illust/78995664】
キャプションのみで誠に申し訳ないハウラジのお二人。
でも2m超えの巨体といい、声の大きさといい、彼なら側にいるだけで絶対攫われないな!!と思いました。
シグナ・ダブルカラーさん【illust/78971322】
そこまで過保護かな??と思いつつ、多分なんか子攫い疑惑とかの情報があったんだと思います。(?)
ロイダ局長【illust/78954064】
素敵ロゴ【illust/78962445】
自キャラ:割と行動力おばけになった。
マアル・パハ【illust/79003395】
■企画元:pixivファンタジアAOS【illust/78509907】
※戦場(?)タグは応援したいところを適当に両方付けたので、キャラのいる場所とかではないです。
2020-02-10 10:48:32 +0000