【PFLS】衝動【黎明の戦い/緑】

ぽふのじ

遅くなりましたがこちら【illust/73638671】へのお返事です。
漫画からキャプション文の順でご覧ください。



「例えば、イーが剣を取り、戦場で戦うのだと願ったとしたら?」



今回の「遠出」の話をすると、魔王はすぐには何も言わなかった。
探るように、問いかけるように、ただ自分の目を見つめてくる。
……何が言いたかったのか、わからなかったわけではない。

例えばイーがそう言ったなら、きっと悲しく思う。
そしてそれは望まないと、イーが戦わなくても、自分達がやってみせると、信じて待っていてくれと、きっと言いたくなる。かつて自分がそう言ってもらえたように。
……いいや、かつてだけでなく、今だってそうなのだろう。
だから魔王も、リオロも、「遠出」についてすぐには賛成してはくれなかった。
腕に包帯を巻いていたあの頃よりもできることは増えたけれど、力なく、弱い、子どもであることは自分もイーもそう変わらないのだ。
戦場に向かうことなど、誰も望んではいないことはわかっている。戦うつもりはない、支援だけといったところで、都合よく剣矢が届かない場所ではない。
皆が帰る場所を守りながら、そこで信じて待つことも強さなのだと、たくさんのヒトが目で、口で、教え続けてきてくれた。
実際にこうして、近く遠く、剣戟が聞こえ戦火が上がるのを見上げる戦場に来たことで、イーが、剣など持たず、健やかなまま、あの城で待っていてくれると思う、それだけで安まるものがあるとわかる。皆が自分に望むものも、きっとそういうものだと理解した。
わかっている。
忘れていない。
信じられなくなったわけではない。
けれど。
……けれど。

「……ボクは、やっぱり本当に、まだ『こども』なんだねリオロ」
戦場となった森の中、星詠みで見つけてくれた安全地帯で休みながら、ポツリと呟く。
口数の少ないリオロはただ顔を上げて、目線だけで静かに続きを促す。すぐに否定もせず、肯定もしない。ああ、やっぱり「このヒトも」とても優しい大人だと思う。
そう思いながら、イーの例え話から始まる思考の渦を少しずつ言葉に乗せていく。言葉にしないと、自分にもわからなくなりそうな何かを見つけたくて。
「望まれていることよりも、やりたいこと、優先してしまった」
「やりたいこと?」
「出来ることがしたかったの。……待っていることができなかった」

力になりたいというのなら、前線でいたずらに心配をさせるより、後方で帰りを待っていたほうがきっとよかった。けれどできなかったのだ。
ホースヒルの、あの場所で。
激しい戦闘。血しぶきをあげて倒れる、味方と敵。
そうして眼の前にした、物言わぬ躯となった生きていたもの達。
母が重なる。ヒカレータが重なる。いつかなるかもしれない親しい、愛しい人々が重なる。
戦場で戦うことを選んだ、その結果だ。
死んでなどほしくはない。それは悲しいことだ。
けれど、それと同じだけの強さで胸をつきあげてくるものがあった。

自分も、と。

「死にたいのですか」
「ううん」
「戦いたいのですか」
「…たぶん、ちがう」

望むことは何なのか。
何がしたいのか。
形にできない。言葉にならない。ああ、まだ自分は知らないことが多すぎる。
どうしてこんなにもじっとしていられなかったのか。
胸の奥から急き立ててくるような、熱い塊の名前がわからない。

それを放置はできない。そのままではきっと、無策で戦場に手を伸ばすような無茶をまたしかねない。
だから。

「…いいですよ。気の済むまで付き合います」

ハッとして顔をあげると、リオロは変わらない表情のまま自分を見つめていた。
「止めても、無駄。それは貴女自身ですらそうなのでしょう?」
言って、すっと細い指を向けてくる。その先には自分の胸元。ウノムーには飲ませずキチンと自分で持っていた数少ない荷物が入っている。

『我が一族には己が大事にしている物を相手に預け、互いの無事を祈る風習がある』
『これを貴女に預けましょう』
『必ず、貴女が私にこれを返して下され』
『私も必ずこれを受け取りに戻ります』

そう言って送り出してくれた彼を思い出す。
彼も止めなかった。止めずに、ただ託して信じてくれた。
自分の周りにいてくれるヒト達はみんな、みんなそうだ。

『燻るままであれとは言わぬ。それほど望むならば好きにするがいい』
『だが、同じように我も好きにお前に望もう。生きて戻れ。子どもを死なせて生きながらえることなど誰も望んではおらぬ』

魔王はハッキリとそう言って、出立の許可をくれた。
…あのヒトがそういうから、周りにもそういうヒトが集まるのかなとふと思う。
止めずに優しい道を示してくれる。愛しい、愛しい人々。
だからこそ力になりたい。
戦場に立つ彼らの後ろで、守られて待つだけが、どうしてもできない。

だから。

「ごめんなさいリオロ。もう少しだけ一緒にいてほしい」
「勿論です。貴女を生きて戻せる星を詠み続けますよ」
「にゃぁん」

同意するようにエラノールが鳴いて、すり寄ってくる。その温かさにも申し訳なく感じる。こんなところにまで連れてきてしまって。

「うん。大丈夫。…ちゃんと三人で戻ろう」

懐に抱いた大切な『大事な物』に手を添える。
重ねてくれた温かさを思い出す。
…ああ、握れないのがもどかしい。



ニフ
現在所持品:
エニスさんから頂いたエリクシル【novel/10852609
トゥーリさんとヴァロさんから頂いた夢守の笛【illust/73620767
そしてアルバートさんからお預かりした『大切な物』

アルバートさんへお預けしたもの:
応援し隊最初期メンバーで撮影してもらった写真の焼き増し【illust/73084300

問題ありましたら一つのパラレル時空として扱いください。行動を縛ることはありません。

もうしばらく黎明の戦場で支援行動して回っています。後は結果次第ということで。


お借りしました(敬称略)
ネズミの剣士 アルバート id=72938275
星詠みのリオロ id=73311906
イゾーク id=73375955
公式より魔王エレバス id=72287104

自キャラ ニフ id=72939644

#manga#pixiv Fantasia: Last Saga#Eldergran#The Battle of Dawn【green】#【隠れ城の弱掌の子供】#Erebas the Demon King of Eldergran#【魔王様応援し隊】#【黒梯騎士団ベアステイル】#【アンダーリアの窯の飯】

2019-03-16 15:11:29 +0000