縁は異なもの味なもの【illust/67011335】
満ちゆく愛は誰のもの?
知りたくて角を食べました。
憎らしい愛は誰のもの?
知りたくて耳を食べました。
溶け合う愛は誰のもの?
知りたくて眼を食べました。
────それなのに、
「それでも、いつかは」
◆ 春夏冬 声/あきなし こえ
半妖(人間・霊鬼・化猫・覚・絡新婦)
男│24歳│174cm
「綺麗な月夜に、こえと邂逅してしまうなど、不運なことです。哀しいことです。えぇ、御愁傷様としか言いようがありませんでしょう?」
「頬の傷は自分で付けたのです。近付けば、“彼”と同じように幸せになれるのではないかと……可笑しいですね。夢の話だというのに」
「よいのです。えぇ、私は構わないのです。其れがお前の愛だと云うのなら、俺は其れを解として、全てを喜んで受けとりましょう」
黒猫の父と蜘蛛の母の間に生まれた半妖の男。
実家でもある貸本屋の手伝いをしているが、営業時間中にうたたねをしたり、ふらりと散歩に出掛けてしまったり。
傍目にはぼんやりして見えるが頭の回転は早く、たまに話が飛躍する。ついでに話し始めると回りくどくて長い。
目は見えているものの、他人の感情がその人自身に重なって視認できるがゆえに、相手の顔を“顔”として認識できていない。知人は声で判別している。
誰かを食べたいと思ったことはないが、時おり何かに耐えかねて自身の身体を食いちぎる。
それは唐突に、いつもと何も変わらない様子で。
“愛”を求めながら、彼は其れが何かは解っていない。
ただ解っていることは、愛の形が決してひとつではないということだけ。
◇ 家族
父:はる【illust/68502438】
母:春夏冬 次実さん【illust/68523737】
「父は常に笑顔でした。えぇ、悲しげな姿など目にしたことはありません」
「母は振り返りませんでした。えぇ、振り返ったりしませんでしたとも。最後に眼に焼きつけた父の姿を追って逝ったのです」
妹:春夏冬 次陽さん【illust/69137899】
「お前がとても優しいから、時おり考えてしまうのです。なぜ、こえの妹に生まれてしまったのか」
「それでも、えぇ。次陽が“愛”を知るまでは、傍に居たいと私は願ってしまうのですよ」
6/01:主催様より、承認いただきました。
最終世代、ありがとうございます。
ご縁を繋いでくださった、ELさん、七篠さん、おーたむさんに、心から感謝を!
ずっと大好きです!
◇ 不備などありましたら、ご連絡ください。
“愛”を知った、かわいい妹。
笑う姿に嬉しく思い、同時に少し寂しくなる。あの子の隣は、既に私の場所ではない。
幸せにおなり、愛しい子。兄は、必要なくなったね。
何処へ行くのかと問う妹に、いつも通りに散歩へ行くと笑いかけて、帰らぬつもりで家を出た。
目的もなくふらりと街を抜け、道を逸れ、綺麗な花に誘われるように山へと踏み入る。細い獣道を辿るうちに、段々と不思議な感覚に囚われた。
あぁ、私は、俺は、こえは。
───どうしてか此処を知っている。
何処へ行くかもわからぬのに、足は迷うことなく前へと進む。
ただひたすらに、前へ、前へと。
日が沈み、辺りが闇に包まれた頃、ようやく其処へと辿り着いた。
月明かりに照らされて、ぼんやりと浮かび上がるのは、寂れた社。初めて見るはずのその建物は、何故だかとても懐かしい。
縁側に佇む女の姿を、知っている気がした。
庭で遊ぶ双子の姿を、知っている気がした。
扉を開く黒猫の姿を、知っている気がした。
花を摘む兄妹の姿を、知っている気がした。
そう、花。
花が、咲いている。
これは、何の花だったろう。父が、誰かが、この花の名前を確かに教えてくれた気がするのに。
この花を、私は、俺は、こえは知っている。
『都忘れの花』
『赤い芍薬の花』
これは母の花だと撫でてくれたのは誰だったか。
これは父の花だと笑ってくれたのは誰だったか。
わからない。何もわからない。
ただ、湧き上がるように、流れ込むように膨らむこの感情が、誰かが向けてくれたあたたかい眼差しが、掛けてくれた優しい言葉が、どうしようもなく──。
きっと、これが“愛”なのだろう。
手にした2輪の小さな花に、幸せの涙が溢れて消えた。
都忘れの花が、赤い芍薬の花が咲く頃、
2輪の花を握り締めて、白寂に抱かれながら眠りにつく。
ありがとう。おやすみなさい。
こえの愛しい、全ての人。
最終更新:18/06/30
2018-05-31 16:20:10 +0000