「朽ちゆく世界にハナムケを」(illust/67637283)、2家系目はエステロントにお邪魔します。
よろしくお願いいたします。
「お届けしましょう、どんな言葉も、どんな想いも」
--コムニコ--(Komuniko)
女/15歳/149cm/エステロント/ 30pt / 一人称:私/二人称:貴方
言葉を預かり遠く離れた誰かに届ける、「玉梓の民」の娘。
エステロントの片隅に小さな配達屋を開き、ひとり暮らしている。
早くに両親を亡くしたためか玉梓の民としての誇りや使命感に乏しく、
身の内で鳴り止まぬ他者の言葉に倦み、いつかその言葉に押しつぶされる未来に怯えながら
息をひそめて生きている。
多分誰かに見つけてほしい、だけどこの声はあまりに小さくて、きっと誰にも届かない。
「私の中はいつも誰かの言葉でいっぱいで、私が入る隙間がないの」
「だから私は、とても空っぽ」
6/2 素敵なご縁をいただきました!アトリ・ラドアルヒェ様(illust/68814578)
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私は戦を知らないけれど
その人は戦のにおいがした
抗いようもない嵐と火の粉のにおい
来いと言われ手をひかれた
多分二度とここに戻ることもなく
父や、母や、もういない同族の多くがそうだったように
私もこの人に使われて死ぬのだと、そう思って
ひどく安堵したのを、憶えている
・
「私を使わないの?」
赤と黒の世界に来て幾日か
堪りかねてその人に訊ねた
言いたい事があれば直接出向けばいいだろう、と
そうかもしれない、貴方には彼方まで見通せる目があるのだから
この溶岩洞から私を見つけて星の国から連れ出したように、容易く
それならどうして私を連れてきたの?
・
生きるために言葉を運ぶのが苦痛だった
「玉梓の民よ」「どうか言葉を」「あの人に」
掠れた声が絡みついて動けない私を
たくさんの想いが押しつぶしていく
私の代わりに誰かの言葉が詰め込まれた器を生かすために
声を預かって、送り、届ける
届かなかった言葉は想いごと降り積もって、また、
何のために、こんなこと、いつまで?
道具として使われて壊れるなら
それはとても優しい終わりだと思った、なのに
・
はじめて苛立つという感情を知った
貴方は傲慢で身勝手で、貴方の言葉はどれも、どれも
こんな言葉は、知らない
言葉は降り積もるものだとばかり思っていた
貴方の言葉はまるで嵐のようで
私の都合などお構いなしに気ままに吹き荒れるばかり
積み重なって沈んでいたたくさんの言葉たちが
強い風に煽られて浮かんで吹き散らされていく
火の粉と一緒に舞って、消える
聞こえるのは吹き荒れる風の音だけ
ああ、嵐の懐はこんなにも、静か
・
貴方の声が吹き抜けて、ようやく
――私が私で満ちていく
・
満ちた器に名前が欲しいと思ったの
名前をつけて欲しいと思ったの
「……私は貴方のお嫁さんなの?」
傍らに立つ彼を見上げる。
不満かと問い返されて、かぶりを振った。
「いいえ」
器に満ちた私が小さく跳ねる。溢れる。こぼれる。
自分の中の音が、はじめてこんなにも心地良い。
「……嬉しい」
――私が貴方で、満ちていく。
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長男:ハーヴィ(illust/69597259)
「いつの間に、こんなに大きくなったのかしら。
…そう?案外、今でも背負えるかもしれないわ。試してみましょうか。……冗談よ」
「ハーヴィ、貴方がいないと、うちが広いわ。たまには帰ってらっしゃいな。
アトリはああ見えて、寂しがりやだから。」
長女:フラグリ(illust/69569168)
「フラグリ、あまり、無茶をしないの。それから、よそ様に、迷惑をかけないのよ。
……眠ってるのね、仕方のない子。」
「玉梓の民として生きるなら、自分の外に、自分を入れる器を持っておきなさい。
できれば、持っておいてくれる誰かを。
……見つけたの?そう。――それなら、良かった」
--玉梓の民--
預かった言葉を木の葉に変じ、風や水の流れに乗せて届ける能力を有する一族。
背に雁に似た羽根を持つ。
言葉を届けるために相手の体の一部(髪や角など)が必要という制約はあるが、
条件さえ満たせば他の方法よりはるかに速く、また相手の居場所が分からなくとも配達が可能。
体の一部の代わりに宛先人の持ち物を媒体とすることもできるが、
こちらは精度が低く不着となることが多い。
既に亡くなっている、あるいは風や水が届かない場所にいるなどの理由で宛所に辿り
着かなかった言葉は送り手の玉梓の民の元に戻り、背の羽根に蓄積される。
戦闘能力を持たない虚弱な一族だが、その能力から内戦時に伝令兵として徴集され、
多くが犠牲となった。
コムニコの両親は数少ない生き残りであったが、戦時に力を酷使した影響で早世している。
種族・スキル等についてはこちら(novel/9688058)
2018-05-27 16:38:29 +0000