縁は異なもの味なもの【illust/67011335】
素直な言葉を吐きたいと、葛藤する母を父はいつまでも待っている。
母の姿を優しく眺めながら。
母の声に耳をすませながら。
言葉とは、なんて儚く、刹那的で、危うい存在なのだろう。
羽を優しく踊らせる風にすら、木々が穏やかに歌う音にすら、簡単に呑まれて跡形もなく消えてしまう。
だからこそ、伝えたいと思うのだ。
流れる瞬間、空に強く輝く流星(meteor)のように、明るく、美しく、鮮やかに。
音が記憶に呑まれても、せめて心に残るように。
いつまでも、いつまでも。
◆ ミーティアベル<meteor bell>
妖魔(毛羽毛現・スプライト)
女│16歳(外見12歳前後)│140cm
「ふむ。見目に反して面白い奴じゃな、異種族。一緒に遊んでやるのも吝かではないぞ」
「何を隠そうベルはかわいくてきらきらしたもふもふじゃからの、簡単にふわっと飛ばされてしまうんじゃよ~。……気を利かせて手を繋ぐとか出来んのか、異種族~」
「ベルはお主を気に入っておるゆえ、ぎゅーってしても構わんのじゃよ~。好きじゃろう、もふもふ?」
もふもふの父ときらきらの母の間に生まれたきらもふな娘。
もふもふ姿はまだ直径40cmほどの小さな毛玉。もふ型だろうが人型だろうがとても軽いので、風が吹くとわりと簡単に飛ばされる。あ~れ~。
飛ばされた先でよく迷子になっているが、楽天家なので何とかなる。
人間でいえばそろそろ自立する年頃なのだが、大人としての自覚は全くない。
少しひねくれた口を利くが、母の真似をしているだけなので根は素直。父に蝶よ花よと甘やかされて育ったせいか、謙遜せずに自分をかわいいと言ってのける。
母が仕事で積み上げていた本を読んで育ったため、意外とかしこい。意外とか失礼な奴じゃな~!
◇ 家族
父:う【illust/67652573】
「父上は今日もふかふかじゃな~。ベルがもふもふしてくれるわ、えいえい~!」
母:スターヘレナさん【illust/67707414】
「母上~。ベルとてもふもふじゃし、今日は父上ではなくベルとお昼寝しようぞ~」
姉:スカイエリスさん【illust/68145521】
「ベルも姉上が大好きじゃよ~!」
◆ 素敵なご縁をいただきました!
繋いだ手のぬくもり*りんさん【illust/68017244】
くるくると風に流されて、見知らぬ山でもふっと着地した場所は、見知らぬ異種族の顔面だった。
2本の角に若草のような1つの瞳。突然の出来事に目を白黒させる表情のなんと面白い──そう思った途端に異種族はすぐに表情を改めて、へらりと笑った。
「そこの異種族、ここはどこかのぅ。愛らしさゆえに風に拐われてしまっての、帰りたいんじゃが!」
「ミーティアベル、じゃよ~。ベルのような魅惑のもふもふを見るのは初めてじゃろう? なにせベルの父上は上質な羽布団……ではなく、毛羽毛現じゃからな!」
「お主、“りん”と申すのか。何やらおなごのような綺麗な名じゃの~」
他愛のない言葉を交わしながら、その日は異種族にもふもふ抱えられて、風の吹き抜ける山を下りた。
「そこの異種族! 先日の道案内の礼を持ってきたぞ! ……どうした、呆けた顔をして。あぁ、前はもふもふ姿じゃったかのぅ。また違ったベルの愛らしさに声も出まい!」
先日の道案内のお礼をと、手土産片手に頭上から。
突然の出来事に呆けた顔を──やはりすぐに改めて、異種族はへらりと笑う。
「髪が綺麗じゃと? そうじゃろう、なにせベルの母上はそれはぴかぴかのきらきらじゃからな! まぁ少しばかり珍しいかも知れんのぅ」
「異種族……お主、もふもふじゃったのか! ベルには及ばぬが、なかなか良いもふもふ……」
「手を引いてくれるのかのぅ。気が利くではないか、異種族~。これで風が吹いても安心じゃな!」
山を己の庭のように自在に歩き回る異種族は、山から離れた場所には行かないようで、特に母親から聞いた異国の話をしたときには、たいそう興味を引かれた様だった。
面白そうに相槌を打ちながら、時おり笑みを浮かべながら、それでも静かに聞いている。
「……飽きたゆえ、ベルの話はこれでおしまいじゃ! 次はりんの番じゃぞ、山にも面白い場所はあるじゃろう?」
「見当たらぬと思うたら、今日はもふもふ姿だったのじゃな。……ふむ、小さくて愛いのぅ。すりすりしてくれるわ、えいえい~!」
「今日は山の外へ散歩に行かんかのぅ、面白い場所を見つけたんじゃよ~。少しくらい大丈夫じゃろ?」
「ふっふっふ。ここが何処かなど風に聞け、ベルが知るわけないじゃろう? りんと一緒であれば場所など些細な問題じゃよ~」
ある日、眼前に広がる見知らぬ景色を『一緒に見られてよかった』と、彼は珍しく“言葉”にして、いつも通りにへらりと笑った。
言葉は、繊細でありながら強力だ。
ゆえに願うものではないけれど、あまり自分の気持ちを口にしない彼の“言葉”が聞きたいと、そう思ってしまうのは我儘だろうか。
それでも、
言葉にしなくては、曖昧にしか伝わらないから。
言葉にしなくては、消えていくものもあるから。
言葉にしなくては、
きっと、欲しいものは手に入らないから。
「ベルはりんが好きじゃぞ。りんもベルが好きじゃろ?」
ただ一言、肯定して欲しくて。
────それなのに。
『ずっと傍に居てほしい』などと、『連れて行ってほしい』などと、彼は少し照れた様相で、それでも丁寧に“言葉”で告げる。
穏やかに真摯に降り注ぐこの声が、記憶に呑まれる日がきても、彼が伝えてくれた言葉だけは、決して忘れることはないだろう。
ただ、今だけは、音すらもいたずらな風に流されることのないように。
優しく繋がれた手を、強く引いた。
◇ 不備などありましたら、ご連絡ください。
最終更新:18/04/11
2018-04-04 11:50:14 +0000