縁は異なもの味なもの【illust/67011335】今期も参加させていただきます。
「天を迎えに来てくださる方は、いらっしゃるのでしょうか」
「常人ならば、寂しさで鬼とはなりますまい?」
「美しいでしょう、そうでしょう?この右眼はかあさまのそれだ、そういうことです。恐ろしいでしょう、そうでしょう?この左眼はとうさまのそれだ、そういうことです」
「もしも御前様が天より先に死する運命ならば、天はその骸を抱いて眠りましょう。もしも天が御前様を置いて逝く運命ならば───その時は、御前様も道連れに」
天(そら)
性別:女
種族:半妖(人間、霊鬼)
年齢:16歳
身長:158cm
一人称:天
二人称:御前様、呼び捨て
山奥の社でひっそりと暮らす少女。
実年齢より精神年齢が幾分か幼い。断片的に父親の記憶を受け継いでいる。
狭い世界で生きてきたため、人との関わり方・距離の取り方を知らず、誰に似たのか話し方が回りくどい。たまに深夜に山を降りることもあるらしい。
愛する人と心中することを何よりの幸福と考える。
◆大切な家族
父:空【illust/67549340】
母:きささん【illust/67617486】
「とうさま、かあさま、幸せでおられますか」
「なんとも羨ましい最期でありました。天もあのように逝きたいものです、愛する人と」
片割れ:はゆさん【illust/68034271】
「きっとはゆははゆだけの幸せを見つけるのでしょう。そうしたら教えてくださいね、天だけには」
「はゆがいたから天は生きたいられたのです、ひとりぼっちじゃなかったから」
◆素敵なご縁をいただきました
何もいらないから側にいてほしい 御子神 ひさめさん【illust/68011369】
それは確か、月の欠け始めた夜のことでした。
「こんばんは、こんな月夜に一体何を?ええと…天は散歩をしていただけなのです。ああ…誰かに会うのは初めてなものですから、おかしなことを言っていないでしょうか?」
指折り数えて4人目。
天が出会う、はじめての『外』のひとでした。
ええと…なんと言葉を交わしたのでしたっけ?
なんだか鼓動がとても早くて、息がとてもくるしくて…。
あの時の空気と月明かり、風の音、天を見つめる彼の双眸、それらは全て覚えているのに、何故だか交わした言葉が、思い出せないのです。
「また、逢えるでしょうか」
何気なく呟いた言葉。「また逢えるよ」、そう言って貰えたとき、どれほど嬉しかったことか!
───天、今日はなんだか上の空だね?
あの夜のことを思い出していた時の、かわいい片割れのその問いに、とてもとても、驚きましたっけ。…でも、きっと彼女には全てお見通しだったのでしょうね。ずっと一緒だったのですから。
ねえ、とうさま、かあさま。聞いてくださいますか、天の話を。
初めてだったのです、また誰かに逢いたいと思うのも、こんなにも心を支配されるのも。
過ぎゆく季節や散りゆく花たち、囀る小鳥たちに、そんな思いを抱いたことはなかったのに。
「御前様の家へ?…伺っても、よろしいので?」
また逢えた、それどころか!
願っても無い申し出でありました。
彼にもっと近付ける、そう思うと、また知らない『何か』が天の中に生まれました。
それにしても息が苦しいのです。顔がとても熱いのです。両手が、震えるのです。
帰したくない。そう告げられて、心が揺らぐのがわかりました。天は今まで、こんな想いを感じたことは、なかったのに。
とうさま、かあさま。
一体『これ』は、なんなのでしょう?
帰りませんよ。ここにいます、そう言いかけて、口を噤みました。
…だって天は、まだ。
「約束いたしましょう、必ず御前様の元へ戻ってくると。それでも心配ならば御前様も共に。…だから、最後に家族に会いに行かせてくださいな」
それで総て、終わりにしますから。
きっとその手を取れば、二度と離したくなくなるでしょうから。
せめてさいごに、大切な両親に、それから、大好きな片割れに別れの言葉を。
天にはそれが、全てでしたから。
「さようなら、とうさま、かあさま。…さようなら、かわいいはゆ。いつかどこかで逢えるなら、また家族に生まれましょうね」
何よりも大切な、大切だった家族にお別れを。
…ああ、これでもう、天はひとりぼっちです。
だけど、きちんとお別れした筈なのに、なんだかとても怖くて、涙が止まりませんでした。嬉しい筈で、心はとても満たされているのに、どうしてのでしょうね。
ゆっくりと、それでも確実に、待っていてくれるであろう、あのひとの元へと。
「…ひさめ、ただいま帰りましたよ。これからは、ずっと一緒です」
きっとこれからは、天の世界にいるのはひさめだけ。でも、それでも…いいえ、それだから、幸福なのです。彼の双眸にうつるのは、天だけで良いのです。
同じ時間を過ごすたび、そのうつくしい瞳を見つめるたびに、ひさめがくれる暖かい『何か』が、天の心を満たしてゆくのがわかりましたから。
きっと、初めてあったあの日から、全てが変わったあの日から、天は御前様に心を奪われていたのでしょうね。
「愛しています、大切なひさめ。天はどこにも行きません、ずっとひさめの側におります。…だからね、ひさめ。御前様も、ずっと天の側にいてくださいね?」
御前様がいてくれるなら、天は他に何も望みません。
天の運命、天のすべて。優しくて、暖かくて、可愛らしくて、うつくしくて、天だけの、大切なひと。
天の中に生まれた『これ』が、一体なんだったのか。
やっとわかったのですよ、ひさめ。
だからどうか、天の願いを聞いてはくださいませんか。
「ねえ、ひさめ。天と一緒に死んでくださいな、十度の四季を経た後の、ひさめと出逢ったあの日の晩に」
天は、それしか終わりを知りませんから。
この体が崩れ落ちようと、この魂が壊れようと、ずっとずっと御前様の隣に。
たとえ行きつく先が地獄であろうと、
「ひさめだけがいればいいのです。ひさめがいてくれれば、天は永遠に幸せですから」
この手だけは、離しはしません。
水底で、ふたり、泡になりましょう。
「また、逢いましょうね」
ひさめは天の運命だから。必ずまた、出逢えるから。
…だから、その時まで。
少しの間、眠るだけです。
2018-03-31 15:00:28 +0000