こちらの企画【illust/67011335】に三人目失礼します。
───今まで何人斬ってきたのだろう。
───今までどれだけ殺めてきたのだろう。
戦友の亡骸を踏みつけながら、ただ前を見て進むのみ。
そうする以外、道はなかったから。
そうする以外、許されなかったから。
そうする以外、知らなかったから。
だから、殺してきた。
敵を。憎い相手を。
家族を。友人を。
気付けばひとり、骸の山の中に立ち尽くしていた。
ああ、そうか、みんな。
みんな俺が、殺したのか。
おれを置いて、逝ってしまったのか。
───だからおれには、何もない。
置いて逝かれた、恨み以外は。
「おれも、連れて行ってくれればよかったのに」
「目が覚めて、この姿になって…言われるがまま、武器を捨てた。だから、おれには何も無いんだ」
「きみが恋しい。…側に、いてくれ」
空(くう)
性別:男
種族:妖怪(霊鬼)
年齢:不明(享年31)
身長:189cm
一人称:おれ
二人称:きみ、~くん、呼び捨て(親しい相手に)
過去の戦いで死亡した男。生前の記憶は殆どなく、ただただ「置いていかれた」という記憶だけが残っている。『空』という自分の名前すら正しいのかどうかわからない。置いていかれた恨みと憎しみ、寂しさから、鬼と化す。
◆素敵なご縁をいただきました
きみだけが世界の全て きささん【illust/67617486】
「もしや…きみは人の子か?…おれは空。見ての通り───何もない男さ」
ふらりと訪れた山奥の神社で出会ったのは、年若き聡明な女だった。
言葉を交わせば交わすほど、彼女のことを知りたくなる。
瞳の奥に、寂しさを、おれと同じものを、抱いているような気がして。
また会いに来るよ、そう声を掛けてしまったのは、ただの気まぐれ、だろうか。
「…山を降りたいと思ったことはあるか?きみが望むのなら、おれが外へと連れて行こう」
相反する答えを期待しながら。
「きみのもとへ、俺以外の誰かが訪れたこともあったのかい、きさくん?」
どうか彼女のうつくしい瞳が、自分以外を映しませんようにと、願いながら。
「随分ときみは、笑うようになったね」
彼女が笑顔を見せるたび、心の穴が埋まっていくようで。
彼女が名前を呼ぶたびに、曖昧な己の存在すら確かなものとなっていくようで。
彼女の元を訪れる間隔が、少しずつ、短くなっていって。
生前ですら知り得なかった、その感情の名を知った。
───これじゃあ、まるで、人間のようじゃないか。
「きみと共に生きることができたら…どんなに幸せだろう」
小さく呟いたその言葉は、隠しようのない本心で。
その髪に、その指に、その肌に。
触れたいと願っても、いいだろうか。
そうだ、おれは、きみのことが。
初めて出会った、あの日から、
「愛しているよ、きさ。たとえ全てを失っても、きみだけは決して離さない」
空っぽだったおれを埋めてくれた、世界の何より大切なきみだけは。
───ああ、それでも。
きみもいつか、おれを置いて逝ってしまうのだろうか。
◆何かありましたらメッセージにてご連絡ください。
よろしくお願い致します。
───それならば、いっそ。
独りよがりな願いだけれど、
「…きさ。おれと死んでは、くれないか」
彼女はいつものように微笑んで、それを肯定してくれた。
思わず、その小さな体を抱きしめる。
おれのすべて。空っぽだったこのおれを、埋めてくれたのはきみだった。
きみと出逢えたから、おれはこんなにも満たされている。
だから、何も心配しなくていい。
未来永劫、過去さえも、
「決してきみを一人にはしない。愛しているよ、きさ。おれの、奥さん」
2018-03-03 04:51:18 +0000