企画元様【illust/52333018】
「死を求めて来たか。そうでなければ……否、そうであろうが去れ、目障りだ」
「この様な場所に灯りも持たずに入って来るからだ……馬鹿者め」
「寄るな、触るな、死にたければ一人で勝手に朽ちて死ね」
【淵叢の祟り神】
鬱蒼とした森の奥、黒く淀んだ沼に住んでいると言われる竜の様な生き物。
その存在は周囲に呪いと災厄を振り撒き、触れた者に病と死を呼び込む。
畏怖を込めて祟り神と呼ばれているが、その祖は動物霊が集まり歪んだもの。
火乃 黒燿(ひの こくよう)/男/外見20代/230㎝前後(175㎝前後)/一人称「我」二人称「貴様」/黒髪・炎を灯した藍色の瞳
(祟り神・鬼火・お歯黒べったり・怨霊・野狐)
竜の様な、狐の様な姿をした妖。
気難しく言葉の端々に刺があるが危害を加えられない限りは他者を襲う事は無い。
道に迷った者が居れば半身である炎を灯した提灯を人の姿で持ち、一定の距離を保ちながら森の出口へと導く。
自身が他者を苛むものであると自覚している為、誰にも心を開かず寄せ付けない様にしており
それは優しさというよりは存在自体が疎まれる事への苛立ちによるものが大きい。
記憶される事を無意識下で怖れており、それ故に己の名を人に明かす事を嫌っているが
どうしても必要な場合は父の姓のみを名乗る。
野兎を撫でたら動かなくなった
母は「我らはそういう"もの"だ」と澄ました顔で宣った
呆然とする自分の傍らに 半身とは違う炎が寄り添う様に揺らめいた
「僕はあの野兎を、腕に抱きたかっただけなのに」
悲しい 恐ろしい 頬に伝う涙すらも黒く濁り 落ちた先の葉は枯れ崩れ去る
馬鹿者であった自分は そうして 漸く理解した
この身が人並の幸福を欲する事は 罪であると
母親(妖怪):淵叢の祟り神【illust/54498065】
「その身が子を成す意味、貴様は分かっていたのか
分かっていても抗えないものであったのか、それは」
父親(妖怪):火乃 爐さん【illust/54369667】
「何故あの女の呪いを受け入れた、結果貴様は肉体を失い不幸になったのではないのか
我の知る貴様は仄かに揺らめくばかりで、何も……一言でも良い、父の言葉を聞きたかった」
姉(妖怪):火乃 炬子さん【illust/55054382】
「姉上、また人に関わったのですか……いえ、姉上がそれで宜しいのならば、特には
ただ……どうかあまり遠くへは、行かないで下さい」
「姉上、黒燿はもう頭を撫でられて喜ぶような歳では……っ……一回だけですよ」(尻尾を振りながら)
◆◆◆
素敵なご縁を頂きました!
愛らしくも気丈で眩しい橙さん【illust/55461153】
蝶を見た 橙色の
この森には似つかわしくない 随分と愛らしい蝶だった
蝶は 娘は 悍ましいこの身を目にして ふわりと笑ってみせた
「迷ったのならば案内してやる、此処は貴様のような娘が来るべき場所ではない」
真っ直ぐな瞳 炎とはまた違う 暖かさを纏うそれに
諦めた筈の何かが 心の底で燻ったのを 今でも覚えている
「次など存在しない、貴様とはこれで最後だ……それが貴様の為でもある」
次は無い それが良い
ここが良くない場所であると 一度迷えば分かる筈だ
今一度顔を見せれば命の保証は出来ないと 脅しに近い念を押した
自分自身に言い聞かせる様に 燻ぶる感情を拭い去る様に
本当は期待していたのかもしれない
「娘、我の話を聞いていたか?次は無いと言った筈だ、ましてや名前など」
暗い森の狭間に 橙色が見えるのを
翳りを飛ばす様な その声が響くのを
「何故、我に会いに来るのだ……貴様に何の得がある」
「畏れるどころか手土産まで持ってくるとは
おかしな娘だ、橙色の……ほお、名は体を表すとはこの事か」
燻っていた孤独感は 止め処無く溢れて止まらない
「名など無い、覚えなくて良い、早々に忘れるのが貴様の為だ
何度でも言うぞ もう此処へは……、……」
結局は 野兎を抱いたあの日から 何も変わらない 馬鹿者だ
「これで分かっただろう、橙」
地に落ち 動かなくなった蝶を見下ろして 彼女の瞳を見据える
これで分かっただろう 触れなかった理由が
これで分かっただろう 此処から出ない理由が
存在自体が禍であると 知られるのは
こんなにも 苦しい事で あっただろうか
本当は触れたかった 彼女の手を取って 彼女の店を見てみたかった
彼女を抱き寄せて 安心させてやりたかった
出来なかった 思い出してしまった 命を奪う恐ろしさを そうして訪れる孤独を
彼女を失いたくなかった 彼女と共に在りたかった
「これで最後だ……もう、此処には来るな」
橙色の蝶は森を離れる事は無かった
その身の蝶を 少しずつ捧げながら
祟り神の傍らに 寄り添う事を選んだそうだ
そんな蝶に 祟り神は
「許せ……我は、こんな形でしか貴様を愛せなかった」
ゆっくりと その手を伸ばした
「……温かいな」
◆◆◆
ご縁をくださったお二方のお陰で最後まで繋ぐ事が出来ました。
改めて此方でご挨拶させて下さい。
楽木さん、割増微塵子さん、本当にありがとうございました。
伴侶さんもごきょうだいも大好きです…!
2016-02-08 09:52:42 +0000