京浜急行電鉄600形(Ⅲ):
本形式は、1500形に次いで都営地下鉄浅草線乗り入れ車両である1000形の置き換えを目的として1994年に登場した京急の通勤型電車で、600形を名乗る形式はこれが3代目となる。
都営浅草線への直通のため、1号線規格に基づいた3扉車体となっているが、
本線の快特運用も想定して京急では唯一の3扉オールクロスシートとなった。
特筆すべきはその座席構造で、ラッシュ時には座席の一部を収納または折り畳みができるようになっている。
これは混雑率に応じて座席数を増減できるようにしたもので、愛称募集により「ツイングルシート」と命名された。
また前面部分からはついにアンチクライマーが消え、全体として丸みを持たせたヨーロピアンスタイルで纏め上げられた。
これは2100形(illust/111644670)や1000形Ⅱ(illust/111665497)にも継承され、京急の新しい顔となっている。
主要機器は1500形VVVFインバータ制御車(illust/44786815)と台車以外同一の機器を採用しており、東洋製と三菱製の主電動機・主制御器・補助電源装置、東芝製と三菱製の空調装置と各編成ごとに異なっている。
1~3次車は前面のワイパーカバー塗装色がイロンデルグレーだったが、視認性向上のため1995年に上縁を黒、それ以外をアイボリーに変更した。後述する4次車は登場時からこの塗装である。
落成当初、スカートはダークグレーに塗装されていたが、1999年以降、順次明るめのグレーに塗装が変更された。
1次車は登場からしばらくはツイングルシートをPRするヘッドマークを装着して運転され、1995年に2~3次車が製造された。
2~3次車では、1次車の使用実績をもとに設計変更が行われ、吊り手の増設など立ち客に配慮し、1次車にあった中間の客用扉上部には締め切りであることを表示する装置の省略、ワイパーが中央から両側に開く動作から2本が並行に動作するものに変更されている。
1996年に製造された4次車(608編成および4両編成の650番台車)では4両・6両・8両編成に設計変更を行わずに対応できるように機器構成が大幅に変更したことでM-T-T-Mの1ユニット構成となったほか、集電装置を菱形からシングルアーム形に変更、車内座席配置を変更し、整備面で難のあるツイングルシートは姿を消し、一部収納座席のあるボックスシートとなった。中央扉部分にも折り畳み式補助椅子が設置された。これに伴い窓配置も変更された。
台車の車端ダンパを準備工事のみとし、軸受ダンパを1996年秋以降に設置された。
この機器構成は後に登場した2100形・新1000形(1・2次車)に引き継がれた。
だが、混雑が常態化している都営線内においてクロスシートはあまり評判がよくなかったらしく、また1~3次車のツイングルシートは経年による機能維持が困難になってきたことから、扉間の座席をロングシート化と、同時にバリアフリー対応改造が実施されている。
改造内容は、扉間座席をロングシートに改造、袖仕切りは新1000形と同じタイプに変更、荷棚の延長とつり革の増設工事を実施、座席下に収められていた機器類を床下と妻面に移動、暖房機器は座席つり下げ式に変更、内装化粧板と床敷物を全て交換、バリアフリー対応として、ドア上部にLED式の車内案内表示装置を設置し、ドアチャイムを設置、転落防止幌の設置が行われている。
なお、各車両の車両番号表記は壁材の張替を行っていないためプレート板のままである。
2009年からは、601編成皮切りに車体更新工事が施工されている。
工事内容は、ワイパーカバーを2100形や新1000形を基にした形式番号「600」のスリットが入ったものに変更、スカートを狭幅のものに交換、1次車はワイパーの動作方向を変更、車端ダンパ取付座と側面サボ受の撤去、車側灯のLED化、冷房装置の交換、一部内装と床の張替、各ドア上部に2台の17インチ液晶ディスプレイ設置(後に1台に変更)が行われている。
2014年の655編成の更新工事施工をもって全車の更新が完了した。606編成は「Keikyu Blue Sky Train」塗装で出場した。
また、東洋製と三菱製が混在していた608編成の主制御器は、更新工事の際に三菱製に統一され、代わりに651編成の主制御器が東洋製になっている。
その後、全車の前面種別・行先表示がフルカラーLEDに変更されている。
現在、8両編成8本および4両編成6本の計88両が活躍中である。
2023-10-08 01:32:12 +0000