【黎明航路】ヴェーン【第3期】


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企画元:黎明航路【illust/100438853

魔物に追われていたところを青年が助けてくれたという。
凍原を通るキャラバン曰く、青年はそればかりか、損害に嘆く商人を見かねてか
おもむろに宝石を取り出し、彼らに譲ったというのだ。
商人は仰天したそうだが、それを売ったおかげで仕事を建て直せた、と語る。
「作り話みたいだろ?」と、 夜の宿場で、余った宝石を手に商人は話し続ける。
「あの日は今日みたいによく冷える夜でさ――」


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ヴェーン=ラクリ/Ven(ヨノヤミ/夜鵺海)
▶灰の国/男性/19歳
▶通常は「ヨノヤミ」を名乗る。一人称は「僕」、時折「俺」。

父:メロリア=ラクリさん【illust/102825502
母:琴鳴【illust/103084909
「森の部屋を見ると、父がよく草花に歌っていたのを思い出す。舞台を見ると、
母の舞に皆が手を叩いていたのを思い出す。……まだ、懐かしいと思うことは難しいよ」
「『一口も残すな』って約束だったんだろ。メロリアは、……怒るかな」

妹:リナリス=ラクリさん【illust/104373706
「君を口説いていた奴なら――あっちに投げた。……西の方がよかったか(北側の窓を指しながら)」
「解らなくていいから。知ってるだけでいいんだ。アヤナシが、君が、生まれた時。僕には生きる意味ができたんだよ」

半身:セヴさん【illust/104943039
「また噂に釣られたお嬢さんだったな。もう、呆れるのにも飽き――
 ……はぁ。おい。手を止めろアヤナシ。聞け。そういうところだと言ってるんだ。君のことは別の意味で心配する。
 俺は……はぁ。僕の口が悪いのは、君に感化されたせいだろ」
「リナリスを頼む。セヴ」


「ナナクモ。セヴ。ヴェーン。『“七”は吉兆、縁起が良い』……」

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〈アジノス・ラクリ〉という人魚の住む屋敷で「番犬」を務めていた青年。
客人を見定め、それが心無い客であれば制裁ののち、雪原に放り捨てていた。
傷ができれば、漏れ出るのは血ではなく影の残滓である。
連れるこぐまの名は「マチネ」。『いざとなったら自分がお前の陰になってやるよ』とついてきたものの、
悲しきかな、小さすぎて果たせていないようである。

◇受け継いだ種族
朱鷺鬼:【ID:102124572】 朱色の翼は不意に背に現れるが――大方、呪いに苛まれるたび翼の陰で蹲っている。
ロドロノ族:【ID:102058838】 厄介な客人は、見た目にそぐわぬ怪力で雪原に投げ捨てていたのだとか。
アジノス・ラクリ:【ID:101645942】 彼女らにかけられた呪いを写し取った。ヴェーンの所持する数多の宝石は、自身から析出したもの。
とある花の妖精:【ID:101810184】 花弁を用いた奇跡を起こすと言われるが――果たして。

※5p目は当系譜の種族補足です。ふんわりご覧いただけると幸いです。

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素敵なご縁を結んで頂きました
◆婚姻:灰の国/ウェンディさん【illust/104784280


それは夜闇の海のような、

先に言ったのは君の方だよ、お嬢さん。『俺を助けたい』って。


充てがわれた宿場の一室に荷を下ろし、ふと視線を遣る。
ほの暗い部屋だった。格子状に切り取られた窓硝子の、向こう側だけ眩しい。北向きの部屋は日差しもなく、おまけに窓のすぐ側には見事な針葉樹が一本、景色を阻む。
きっと人には不評なのだろうが……なるほど、俺には丁度いいわけか。
「おいで、マチネ」
呼ばれた小熊がひとはねして、駆け寄ってくるのをひと撫で。窓辺に寄ってみると、確かにこの木は邪魔なことこの上ないが、兎も角、梢の向こうは雪原である。白い大地の奥に、大海がのぞいていた。普段、黒い雪雲を映す海は、この日はよく晴れて少し青かった。

視界の隅で、きらりと何かが光る。よく見れば青い石が四つ、薄く光を浮かべて窓の角に陣取っている。
ーー光を軽減できるかもしれない。と、楔の得物をかざしながら真剣に話すあの人を、思い出した。
(本当に、こういうところにはよく気が利く人だな)
追憶の隣で、『何を見ているんだ』と小熊が窓枠によじ登っていた。
「落ちるなよ」とだけ告げ、はて、と見上げてくる小熊をそのままに、解きかけの荷から傘を引き抜く。

到着早々軽く支度を済ませると、休んでいるようにと言いつけ、彼女は調査へ発っていった。
明け方の消耗を悟らせたつもりはないが、大体は察されているらしかった。事実、俺は少々手負いである。
彼女の真意がどうであれ、ここのところ、待たされることが増えた。

さてと、ひっくり返った荷から紙筒を引き出し、子熊が並べたらしい乱雑な書類群をひとつひとつ整えて、座敷に並べていく。手にしたぶ厚い資料には、前の宿で張り付けた付箋が無事生き残っていた。しるしを頼りに頁を捲ると、ずらり文字のおでましだ。
びしりと詰まった文字の群れは、けして知らぬ言葉ではない。けれど紐解くまで意味のわからぬそれは、異国言語と言って差し支えもない。幸運にも、俺にはこれが読めた。難解な文字の羅列に意味を見出だせるのは、兄弟からの恩恵だった。
ーーそんな草の文字ばかり読んで誰の役に立つんだ、と呆れて言ったこともあったか。
アヤナシの仕事も、彼女のような人々にとっては、大いに役立つそうである。
(それも詫びるか。覚えていたら)
念には念をと番傘を立てかけて、陰に座す。

学者の役をこなすには頭脳不足だが、やれるところまではしてみよう。取り柄というにはおかしな話だが、真似切ることにおいては自負もあるから。
古来、影武者というものは、文字通り主人の写し影としてその役割を果たしたという。

筒から出した半紙を伸ばしていると、窓辺のマチネがなにごとか鳴いていた。
わかってる、と短い相槌に留め、ようとして、思い直す。
「お前のきょうだいにも、久しぶりに会えるかもしれないよ」
答えてやったのを知ってか知らずか、桃色の小熊は懐かしい雪原をずっと見ていた。

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2023-01-30 11:30:51 +0000