【黎明航路】リナリス=ラクリ【第3期】

アヤカワ
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3/18 22:35 お返事しております。諸々問題なしです!

世代交代企画 黎明航路 に引き続き参加させていただきます。

◆名前:リナリス=ラクリ

◇前期:メロリア illust/102825502
◇前期婚姻相手:炎の国 琴鳴(コトナリ)さん illust/103084909
 「いつまでも勝てないの。悔しいけど、諦めないんだから!」
 「書かない理由? この世で一番大好きな『人魚の恋物語』が、既に2作あるのよ。
  それを超えられないうちは、半端なものを書くつもりも、ましてや、出すつもりはないわ」
◇前期婚姻相手当代:灰の国 ヴェーン(ヨノヤミ)さん illust/104943050
◇兄(分家投稿):セヴ(アヤナシ) illust/104943039
 「兄様たち、そこに座って。二人ともよ」
 「もう分かってるでしょう? 花はどこにいたって、どこまででも香るものよ」
 (だから、どこへだって行けばいいの。絶対にあなた達を見失うことはないのだから)

◆婚姻 (1/21…素敵なご縁をいただきました)
灰の国 / 兪 春兆(ユ チュンジャオ)さん illust/104593884

「私の亡骸を燃やすなら、貴方の炎がいいわ」

手をつないで。抱きしめて。心臓の音を聞かせて。
それから、息もとまるようなキスを頂戴。



"拝啓 お父上様

私、今日ほど父様との血の繋がりを感じたことはないわ。
つまりどういうことかと言うと、怪我人を拾いました。大きめの。
これまでもなかった話ではないけれど、随分とずぶ濡れで、一番ひどい有り様ね。
でも、髪を乾かしてあげるとふわふわで──なんだか探りがいのありそうな人。

追伸:母様も兄様も留守中なの。だからこれはまだ二人の内緒よ"




海で落とし物を拾うのはよくあること。
それが遠くから流れ着いたものなら僥倖、
どこからどんな旅をしてきたのか誰の持ち物だったのか
それだけで一曲は書けるわ。

でも、ま、人を拾うのは少し珍しいわね。
あらまぁ、そんなに慌てなくても。
恩義といっても、返しにきれもらえなかったとして、
取り立てに行くための足はないのだもの。

まぁいい、

「次はいつきてくださるかしら。
 こぉんなに痛い思いをして命を救った恩人のお願い、きっと叶えてくださるわよね?」

約束、と小指を差し出せば、

「ええ、喜んで」

必ず、約束です。
私よりのそれより幾分か硬い指が、優しく触れた。



「なに、やっ、てんですか!」

"散歩がバレてしまった。
しかも彼の商品を悪用、もとい、新しい可能性を模索している最中に。

「ザンユ、ねぇ、自分で戻れるわ。
 信用できない……? う、まぁ、それもそうかしら」

「ではお任せするわ、素敵にエスコートしてね。
 うーん…もっと深く肩を抱き寄せてくださらない?
 首をこちらに……失礼。これでいいわ。お上手」

身体に貼り付けられた札にため息をつき、爛れはじめた肌に眉根を寄せて。
それでも、自分が屋敷まで運ぶ、と言い張るものだから。
小言を漏らしながらでも、耳をから向けてくれるから。

そんなだから──。



きれいな横顔、きれいな瞳。
気づいているかしら、今日の貴方は──
 
触れられそう、
  触れられない、
    こっちを見て、見ないで
 
   ………あ。
 
「え~~っと? 奪っちゃった……☆」
 
目が合った。あ、その表情も新鮮。かわいい。かわいい?
 
「あら、私ってば、貴方のことが好きなのかしら──?」
 
そんなに怒らなくたっていいじゃない?
稀に見る美少女のファーストキスよ!!
それにほら血液ほどじゃありませんけど健康促進効果もありますし? お買い得じゃない?



逃げるように去っていった彼が、再び現れたのは半月ほど経ってからだった。
あの時見せた動揺が嘘みたいに、いつもと変わりなく、まるで何もなかったかのように振る舞うものだから、私は──

私は……? どうしてほしかったんだろう?
くるくると思考が巡るせいで、せっかくの新商品の説明がうまく入ってこない。

「お疲れでしたらまたにしましょうか、お嬢さん」

そうね、だか、また今度、だか、自分がなんと返事をしたかわからない。
けれど、目の前の彼はするすると帰り支度をはじめていた。

「きてくれてありがとう。次はね、これを見繕ってほしいの。あのね、待ってるわ」

いつもみたいに振る舞えているかしら。袖を引くときの力加減は合っている?
はじめて、彼の顔を見るのが怖いと思った。

「……ええ、次はいつきましょうか」

小指が、差し出される。

「必ず、約束です」と。



二度目のキス。
(一応、断らせてもらうけど、わざとじゃないのよ。つい)

ひとしきり私のことを叱ると、彼は、兪春兆と名乗った。
好意を与えるのに値しない男だと。

『ひどい…騙していたのね!』

母様仕込みの舞台用の声をあげれば、男はびくりと肩を揺らす。

「……なぁんて言うと思った? 安く見られたものね!」

ご愁傷さま。

「やっと目を見て話ができるわね。お話しましょ」

恋する人魚から逃げられると思って?
演技だろうと偽物だろうと、ザンユだろうと春兆だろうと。
貴方自身にだって否定させてあげない。



──やめたほうがいい……意味、もう解るでしょ──

何度目かのキス攻防戦。
(断らせてもらうけど、やっぱりわざとではないのよ!)

真っ直ぐに見つめられて吐き出された台詞に、一瞬思考が停止する。

「わからないわ…それって…両想いってこと? なら、キスしていいわね!」(※ダメです)
「うううう……あなた、私のこと、好きなのよね?」
「ほんとにほんとにほんと?」
「ちょっと頬をつねってくださる?」
 
なにこれ
 
「待って、やだ。きっと変な顔しているわ。見ないで」
 
覗き、こまれる。
 
「やだって言ったのに!! 馬鹿!! 大好き!!!!!」



ああ! ああ! くやしい!
でも、悔しいと思えるのは、なんて誇らしいことかしら!

泣かないで。
だって私、だれより幸せだったのよ。
だから…ねぇ、笑って?

「しばしの別れっ」

(ああ、でもやっぱり。
 貴方の最後の炎を見られないのは、残念ね)



大作家ナナクモの最後のお話を託すわ。
もうずっと最初の読者でいてくれた貴方へ。

私の最高傑作よ、
煮るなり焼くなり食べるなり、お好きにどうぞ。
泣き虫で怖がりで私のことを大好きな人。
貴方が望むならなんだって──





「あなたはだあれ?」
「はじめまして、兪春兆さん。わたしの大好きな方。私はリナリス、貴方のお姫様よ」

◇◇

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2023-01-09 05:00:29 +0000