ディオネッタillust/101987321
イベント、砂塵紀行illust/102325198
に参戦します!
対峙する強敵、ルイシャムさんillust/102329835
(時間軸としては
レンちゃんたちとの交戦illust/102464864
の前段階という想定です)
頼りになる先輩、サクヤさんillust/102075646
戦う車掌さん、レーンさんillust/102098454
(こちらillust/102462948
のシーンをお借りしています)
出現したボスエネミー、テナルデイの書illust/102455892
に全力の一撃を放ちます!
(ゼラルディア戦闘技能調査illust/102305416
にも参加させていただきます)
※
己の手札が他とは毛色を異にしていることは承知している。
回転鋸も銃笏砲も、この狭い戦場では味方を巻き込む恐れがある。
増してや、この壮麗な夜行急行に傷をつけずに立ち回るのは
至難の業だろう。
ならば、自分が受け持つべきは列車の外から迫る敵だ。
ペタル・ドレ・エクスプレスを狙い並走する
馬上の盗賊たちが次々に矢を放つ。
列車の灯りを照り返す鏃を見据え、
銃笏からの重力弾で撃ち落とす。
余裕があれば本体をも撃ち抜き、
徐々に盗賊たちを排除していたところへ現れたのが
悪名高き列車強盗、鉄虫団だった。
装甲に鎧われた鉄虫の額めがけ虎の子の徹甲弾を放つが、
艶のある黒鉄は難なくこれを弾き、
急行車両へと強引に追い縋ってきた。
次々に投げ込まれる団員たちに続いて、
明らかに異質な影が上空から襲来する。
肥大した上半身、毒々しい緑の複眼、蠢く赤黒の筋組織。
脇下に広げた翼膜で滑空し、器用に列車状に着陸した
フレッシュゴーレム、『肉壁のルイシャム』が
けたたましい嬌声を上げる。
「へへへ・・・存分に暴れさせてもらうぜェ?
あくまでも、安全になァ!!」
剛腕を支える筋肉が隆々と盛り上がり、
唸りを上げる剛拳がディオネッタに迫る。
際どくもかわせたのは、ナイトシェード入隊以降
叩き込まれた体術のおかげだろう。
身を捩りながら手元に呼び出した回転鋸を振り上げ、
伸ばされた腕を粗雑に切り飛ばす。
「ギギギィッッ!痛ェ!切りやがったコイツッ!!」
ゴーレムに痛覚などあるのだろうか?
疑問に思う一瞬の間に、切断された上腕の筋組織が
ザワザワと震え、幾つもの束を撚り上げる。
「・・・なぁ〜〜〜んてなァ!!」
一転嘲弄するようなルイシャムの声と共に、
切断面から無数の触手が伸びる。
回転鋸の質量を軽減。取り回しを早めて次々に襲いくる
肉鞭を切り払うが。
「ヒハハハハハハッ!そォらおかわりだぜッ!!」
もう一方の巨腕までもが千々に裂け、
左右からディオネッタを包囲する。
あまりにも大量の触手を噛み込んだ回転鋸が停止して、
防ぐ手立てを失った体は触手に拘束される。
「いいねぇ。安全圏から拘束された獲物を見下ろすのは
サイコーの気分だぜぇ・・・!」
舌なめずりの音さえ聞こえそうな余裕ぶり。
「ヘヘッ、すぐには殺さねぇぜ?
久々に楽しめそうなオモチャだからなァ・・・ッ!?」
・・・ルイシャムの疑問は言葉にならなかった。
音さえ追いつけぬ、神速の斬撃がディオネッタを
縛る触手を一息に切り捨てる。
「こんなところで遊んでいる場合か」
血風の中に独眼が煌めく。
『初月』サクヤの鋒を突きつけられた
ルイシャムの判断は早かった。
「チィッ・・・悪ィな先生!一旦そっちに合流するぜ!!」
退く巨体をあえて追わず、
わずかに振り向いたサクヤがディオネッタに目配せを送る。
「お前の力が必要だ。・・・カレ様が、苦戦しておられる」
あの女傑をして苦戦させるほどの敵。
戦いが重大な局面を迎えつつあることを悟り、
ディオネッタは息を呑む。
・・・脅威の正体は程なくそれと知れた。
車体の上に立ち上がる、先刻のゴーレムをも
はるかに超える巨大な肉塊。
なるほど、尋常の武器では有効打にはなるまい。
「テナルデイの書、と呼ばれる召喚の魔術書だとか。
あなたのその大げさな武器、見掛け倒しではありませんよねぇ?」
レーンと名乗った翠眼の車掌に、ディオネッタは無言で頷く。
こんな時、私にリュウガタを解放する力があれば。
騎竜種の古老、アドヴェンチャーですら
己の正体を解き明かすには至らなかったことが悔やまれる。
「少し、時間を稼げるか」
「・・・お客さまの、ご要望とあらば」
ディオネッタの言葉に応え、レーンが手にした狙撃銃を構える。
ディオネッタの銃笏砲に、重力魔術の暗い光が宿るのを
認めたテナルデイが腕の一本を伸ばして阻止を図る。
無言のうちに引き金を引くレーン。
つんざく銃声と共に、迫る掌が正確に撃ち抜かれるが、
大質量の接近はまだ止まらない。
熟練を窺わせる高速装填からの矢継ぎ早の銃撃。
着弾衝撃に慄えながらも、その侵攻はなお続く。
禍々しい肉塊は既に目前───
「充分だ」
ディオネッタの持てる力の全てを注ぎ込んだ一撃。
大砲を取り囲む6本の銃笏からの重力魔術が、
装填された焼夷弾にエンチャントされる。
超重力で一点に凝縮された熱量が、奴にどこまで通用するか・・・
撃ってみなければ、わからない。
「一旦下がれ!・・・重圧縮砲を発射する!!」
闇よりも昏い光が、夜行列車を駆け抜ける。
2022-11-03 13:45:17 +0000