【魔女恋】榊原 莉瑚【魔女】

桐真ユタ
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魔女と永遠、恋と執着【illust/97238892
こちらの素敵な企画に参加させていただきます。

♡榊原 莉瑚(さかきばら りこ)
 25歳/162cm/魔女
 調香師として香りの専門店を営む女性。
 一人称や身に纏う香水をころころと変える飄々とした性格。
 魔女としての記憶はあまりなく、そのためか自分というものが欠けていると感じている。

♡彼岸の魔女 リコリス
 幼い頃に養い親である老女に拾われ育てられた薬師の少女。
 老女が魔女であることを知らず、自身も魔女であったことを知らずに魔女狩りで処刑された。


♡わたしが心臓を奪ったあなた
 ♡欠けた私をその中に見つけ出す君
久遠周さん【illust/99004618
怪我をしたあなたと出会ったのが始まり。
まだまだ未熟で「こんにちは」すら碌に言えなかったわたしがおばあちゃんの周りをちょろちょろと動き回っているのを見て「頑張れよ」と笑いながら声をかけてくれた。
それで、優しい人なんだと思って、とてもどきどきして。
そうなの。わたし、単純なの。
でも、その一度だけではなかったから……わたしの恋は本物。それだけは、恥ずかしがりで隠したがりのわたしの本当。

「あ、あ……エメさん……! また来てくれたの? わたし、おばあちゃんのこと呼んでくるね……あっ、その前にお茶、淹れるね……!」
「おばあちゃんから怪我の時に使える薬の作り方を教えてもらってるの……。もし、もし上手に作れるようになったら……えっと……や、やっぱりなんでもない……」

時が経つにつれ理解することは沢山あった。
エメさんはいわゆる"いいところ"の人で、拾われ子のわたしなんかと一緒にいるような人ではないこと、そんな彼にとってわたしはまだ小さな子どもで、よくて妹のようにしか思われていないこと。
それでも、わたしをリコと呼んでくれるその声が、いつまでもわたしの心臓をどきどきとさせた。

寄り添えなくてもよかったの。
あなたがわたしの名前を呼んでくれたなら、あなたがわたしの知らない誰かと添い遂げたとしても、それだけできっと幸せな思い出を持ったままいられる。
本当にそう思っていたの。

――おばあちゃんが"魔女"だなんて呼ばれて、いなくなってしまうまでは。
いつからか、頭の中で咲くその花が、少しずつ枯れていく様を見ていた。
枯れないように、枯れないようにと頑張ってきたけど、おばあちゃんのその花はそのまま枯れてしまった。
わたしはおばあちゃんが魔女だなんて信じてないけど、人々の中ではそれが真実で。きっとそれが運命で。
姿見の中に映るわたしの花も少しずつ枯れていく。
ああきっとわたしももうすぐだ、とすぐに気がついた。

終わりがわかっているなら、最期に願うなら。
最期はきっと、あなたに会いたい。

「なんでも…なんでもないの。なんとなく会いたくなっただけ……。ありがとう、エメさん」

最期だから、再会を願う言葉は言わなかった。
でも、気づかないでいてね。あなたの思い出の中では明るいままのわたしでいさせてね。

そう思っていたのに。
ああ、今のわたしって、本当に幸せ?
ここにあるのは後悔しかない。
はじめて、嫌だと思った。ずっと前から、花が枯れる日をわかっていたのに。
それでも今、わたしは、あなたといられないこの運命を嫌だと思った。

ああ、やっぱり会いに行くんじゃなかった。
好きです、あなたが好きです。
この思いが届けばよかったのに。
あなたも、わたしのことが好きだったらよかったのに。

――燃える身体とともに、消えてしまえばよかったのだ。何もかも、そう、何もかも――

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風が二つの音を運ぶ。
その音は私の名前であって、私のことを呼んだようではないと感じた。

「……リコ? もしかして、僕のこと呼んでるつもり? おかしいな……君と会ったことはなかったつもりだけど。
 人のことを尋ねる前に自分の名前を名乗るべきではない? ね、君の名前は何?」

久遠周。やはりその名前に馴染みはない。
間違いなく初対面だと思う反面で、その淋しそうな瞳が、何故か懐かしいような、心苦しいような、私をそんな気持ちにさせた。

「周くんは小説を書くの? じゃあ、久遠先生だ。作家先生とご縁があるなんて初めてね。
 ……先生の本、読んでみたいな〜。お気に入りはどれ?」

彼の書いた文字を辿る。
こうやって集中して文章を読むなんてどれくらいぶりかわからなかったけど、……楽しかった、んだと思う。
作品が違えば登場人物だって、そこにいる人物の心境だって違う。
けれどいつもその奥底には、いつだって彼の何かが存在していると思った。

「このお話、俺は好きだったよ。
 なんだかくすぐったい気持ちになるけど、幸せにもなれる、そんなお話だと思った」

言葉のやり取りができることが心地よかった。
時折彼の見せる切なそうな表情の正体はまだわからないけど。
……まあきっと、いつか教えてくれるだろうって傲慢。

「ふぅん、君はこの匂いが好きなんだ。
 それなら今度君に会う時にはまたこの香水をつけてこようかな、なんて、恩着せがましい?」
「……ああ、煙草を吸うところは初めて見せたかな?
 パイプがない時に時々吸うんだ……よかったら君も吸う?」

薫る煙が私たちを包む。
あ、今私たちは同じにおいをしているんだ……そう気づいた時、……私は今、嬉しいんだと、初めて気がついてしまった。

「ねえ、周くん。小説を書いてよ。
 もし私が小説の登場人物だったら、君は私をどう描く?
 知りたいんだ……きっと君の文字の中でなら、私を見つけられる気がするから」

「……ごめんね、変なこと言った。でも、そう思ったのは本当。
 小説は書いて。私のことじゃなくていい。
 それでもたぶん私は、きっと勝手に”わたし”を見つけ出せると思う」

▼編集中…

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キャプション随時更新(2022/07/14)

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2022-06-17 14:55:13 +0000