「ずず」
涙目の発芽ネズミが寄り添うゴーグルは血糊で赤く染まって濡れていた。遺体は既に何かに捕食されたのだろう。
「ずず、ずーず」
傍らの妖精――ココロザシナカバデさん、と呼ぶらしい――が延々とネズミを呼ぶ。
かれらは「先人達」を模倣しただけの存在だ、とわたしに語ったのは彼だったが、とりわけそういった感情的なものに影響を受けやすいのも彼だった。
「ずず、おいき、ずず」
この山の恐ろしさはもう身に染みている。散っていった者達ひとりひとりにそうしていれば一生終わることはないだろう。しかし、この行為が置いていかれた小さき者への慰めになるのならば無意味ではないはずだ。
「おいき、ずず、おいき」
心を読んだのだろうか、彼はわたしが何かを言う前に立ち上がり、手頃な枝をふたつ見つけてきた。組み立てられるのを眺めながら杖をひと振り、そこに静かに花が芽吹いた。
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ライフ:♥️♥️→♥️♥️♥️
◇仲間が増えました。
お借りしました:冥廻草illust/88483000
ココロザシナカバデさんillust/87877001
発芽ネズミillust/88279126 多肉植物の耳のようです。
よろしくたのまれた illust/87834721
2021-03-20 14:33:42 +0000