同盟【深淵に臨む・第3章】

紙装甲Mk-Ⅳ

ブラックの入ったカップを、不死原さんは静かにソーサーに戻す。
「…話は分かりました。
真相を打ち明けて頂いたからには、きちんと礼を尽くさねばなりませんね」
「つまり、協力してくれるってことでいいのかな?」
彼女は緩やかに目を閉じ、頷いた。
「そう捉えて貰って構いません。
桜さんはどうしますか?無理に、とは言いませんが」
五百旗頭さんは頭を掻きながら、さも面倒臭そうな様子で答える。
「…ここまで聞いといて、このあと二人仲良く死なれでもしたら、こっちの寝覚めが悪いじゃない。
いいわ、あたしも協力する」
「ふふ…やはり、そう言ってくれましたね」
半ば予想していたような口ぶりで、不死原さんは僅かに口角を上げた。
片や私は、てっきり彼女は断るものだと思っていたので、意外な答えに少し驚く。
自分の見識の甘さを再認識したが、これは嬉しい誤算というやつだ。
「…交渉成立ね。そうだ、もう一つ渡すものがあったわ。
身の上話を聞いた位じゃ、危険に見合わないものね。
とりあえず前金でこれだけ。残りは達成した後に」
私はおよそ学生の身に余る額の小切手が入った封筒を差し出す。
命を懸けるには、これでも安いけれど。
「心付けとは随分俗っぽいですが…
ならば、この資金で私と桜さんの装備を調達しましょう。
それで、怪異の情報はどれほど集まっているのですか?」
不死原さんは話題を現状分析へと切り替える。
「今のところ、例の生徒…鈴懸(すずかけ)さんからの連絡のみよ。
手掛かりらしいものは、まだ何も」
「ふむ、では明日から本格的に調査を開始する、と」
「ええ。宜しく頼むわね」
話が纏まった所で、私たちは立ち上がった。
「この出会いが、実りあるものでありますように」
右手を差し出すと、不死原さんもそれに応じる。
「そうあって、欲しいものです」
そして抑揚の無い声で、しかしはっきりと、彼女は返した。
完全に信用してはいないと言う意思の表れ。
…ともあれ、同盟は結ばれた。
共通の敵を倒すという目的の下に。

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2021-02-01 13:17:44 +0000