「どうどう。いい子だ」
企画元:ポラリスの英雄歌【illust/80979654】
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□雹然 (ひょうぜん) Neviitisca-ネヴィティスカ
[ 運命数:2/総ポイント:50pt/所属国:白雨国 /❖女神の奇跡]
■母:氷花【illust/85456420】(20pt)
■父:---
熱気冷気を纏う、途轍もなく近寄り難い傭兵の男。誰に対しても「ネビ」と名乗る。
その精神は傭兵に挟まれ培われたためか、闊達としながらも孤高である。
敵を作らない程度の人の好さを備えつつも、心根にはなんぴとも触れさせない頑なさを持つ。
影に覆われ、陽光遮られた空の下に彼はいた。
ほど近い場所に、惨状でも融けることなく残っていた大剣があった。
それを、自然とおのれの物にして。
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灼熱の巻き上がる世を見た。冷え冷えと廃れていく世を見た。
彼は知っている。焼き尽くす焔が憎まれるのも、凍える雪が溶ける日を願われるのも。
そのように憚られた両を兼ね揃えて生まれた末に、息苦しいその世界から彼は滑り落ちた。
女神の声に誘われるまま、門を抜けて。今の世界に投げ出された。
――それは真に世界に拒まれたことにはならぬだろうか?
心の底ではそうでないことを彼は理解している。女神が救ってくれたのだとわかっている。
だが、過るのだ。過ってしまうほど、生き辛い世界に彼は生まれた。
告げられてしまったような気もした。「お前はこの世界にいらない」と、
世の人の声を代弁し、女神がおのれを放り出したのではないかという一抹の疑念。
本当は。暴れたかったのかもしれない。生まれた場所で。
母も父も知らぬけれど、自分はその名残にしがみつきたかったのではないだろうかと、
こちらに来てから薄らと思うようになった。
何故って。そんな不安が過ぎるからには、故郷が恋しい以外に何がある。
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■スキル:雪隠し/白焔
空気を凍てつかせ雪塵を纏う。
親兄弟すら焼き殺すその焔は唯一、心を許した者のみ焼かれることはないのだとか。
□受け継いだ種族設定
雪童子【illust/83995926】
白焔龍【illust/83468134】
■既知関係
それは短き師弟のような:リートさん【illust/86010411】
傭兵の群れによく垣間見たその小さな姿は、剣を失くし、彼を頼った。
彼は訊いたようだった。よほどの理由か。剣を取り上げられてまでの、と。
「……師匠?」
短い仕事だった。
然れども、技を乞うた小さな姿が彼の後を辿る景色は、会うたび点々と、暗雲の下に繰り広がった。
兄のようだな、と。どこかから聞こえた。傭兵連中は彼らをよく目にしていた。
それは師だったろう。屹度。厭わなかったのだから。
「リート。ひとつだけ聞け。世界は善い人ばかりでは屹度ない。
俺に学ぶつもりなら、自分を守ることは覚えろ。俺もそうして生きてきた」
――きょうだいがいた。自分にも。
再び凍る氷のように形を帯びたそれを、御陰で思い出す。
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▼婚姻:素敵なご縁を頂きました!
ラピス・アイさん【illust/86222221】
浴びた一太刀はほのかな火の粉を飾りながら、痺れる痛みとなってのしかかった。
肩口を割り沈む刀、雪の裂け目からあふれ出る白い、焔。
相撃つ主をしかと見た。視野に白く火が散る。こちらを睨む瞳が焔に照らされて、細くなる瞼のあいだで石のように照った。
両者譲りもせぬその一瞬。喧しい戦場の声が、両者のほかすべてが蚊帳の外かのようにどうしてか静かだった。
痛かった。それは、まるで焼くように。
(-編集後程-)
お前の焔は私を焼かない。
強い言葉とともに突然踏み込まれ、一、二歩、気付けば自分は退っていた。
伴の蛇が踏み入った女をけたたましく威嚇している。瞠目した自分を見て、脅かされたのだと彼女に怒っている――そこで漸く、俺は動揺させられたのだ、と知った。
来るものはすべて燃えると了解していた。盛る炎に自ら飛び込む愚かなものを気に留めていてはきりがつかない。俺が気に留めることではない。そう、大昔に大勢を見限って、今までこうして生きてきた。
だというのに、どうして俺は後退った? 驚くままの自分はよそに瑠璃の目はなお迫った。焼かないと言いながら、端々に白が乗り移って焦がしていく。
厭うたのだ。この、瑠璃を燃やして失ってしまうことを。俺は、それが恐ろしいのだと。
自身を瑠璃と言った女に対し、なお沈黙したままだった名前がある。
ネビ。ネヴィティスカ。更にもう一つ、おのれの名を雹然という。
誰に呼ばれたこともない。名乗ったこともない。けれどおのれの名だと知っていた。
俺の家族が、記憶の中で、確かにそう俺を呼んでいたから。
「雹、と」
許されるなら、お前が、
俺を呼んでくれ、と、声を続けるのがどうしてこんなに難しい。
2020-11-29 15:08:53 +0000