企画元:ポラリスの英雄歌【illust/80979654】
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「私が解ければ草花が喜ぶよ。それだけは皆、生まれた時から染み付くように知ってた」
□風花 (かざはな) [ 運命数6/総ポイント:20pt/所属国:白雨国 ]
地に視線を這わせ、枯れ葉を食べ歩きながら草の間に野花を探す。
見つけたそれを凍てつかせては、懐に収めることを好む、冷たく静かな蛇龍の娘。
▽スキル:雪隠し
空気を凍てつかせて雪塵をまとう。雪童子を目にすることは珍しい、と世に謂われるのは、
彼女らのこの能力が作用するためである。
▽その他
自身の蛇をひとつ切り、雪に捏ねて次世代を生み出す。蛇は雪の心臓になる。
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▽雪童子
白雨国の山間の陰の、洞に棲むと云われる蛇龍種。
蛇の髪と蛇の下肢に雪塵をまとう。陽光に弱く、
触れられれば溶けてしまう雪のままの儚い存在である。
本来の姿は、地を這い、吹雪を呼び覚ます蛇龍。
だが暖かな空気に委縮し、巨大な図体を隠すことも
ままならぬため、人の姿を捏ね、ひそやかに生きる。
人に触れるだけで完全に溶け失せることはないが、
陽の下に立ち続ければ雨水へ転じ、程無く絶命するだろう。
魔王が君臨し、その土地は激しい寒さを纏っていた。
灯火すらも吹き消えそうな寒波の雪の中、偶々、龍が生まれた。
龍は身を裂くような寒さにとてもとても強かった。
魔王が治めんとする世界に適応していたのだ。
やがて女神と勇者の手で世界は守られ、魔王の時代が退いた。
春が来た。暖かな光は雪を溶かし、そして龍も崩した。
荒廃に適した龍にとって、救われた世界は生き辛いものだった。
――寒い。そう思った。
行き場を失った龍はすべらかな雪の温度を求めて、
春に沸く人々と真逆の陰へ、去っていった。
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◇婚姻:素敵なご縁をいただきました
白焔龍 ヴェルディアさん【illust/84090412】
彼の行く跡は雪解けのよう。
堅牢な積雪もみるみるほどけて、何年も眠っていた実りが地表とともに顔を出していて。
――時代が違えば、春を呼ぶ龍だったんだね。と。
雪解けの跡を辿りながらふいに零した言葉に、すこし遠くで振り返る貴方の顔が、わたしには、
◆小話:novel/13713145
わたしと貴方の間には常に幾ばくの距離があり、見えない境界があった。境より一歩を踏み出せば、貴方の焔がわたしを溶かす。溶解した白は雪崩れて貴方を襲う。わたしたちは相容れないのだと、出会った頃から知っていた。
けれど貴方の焔で身がにじむのを、初めて出会った一度を除き、わたしが厭うことはなかっただろう。たとえ溶けた日があったとしても、貴方の焔で雪解けとなることが私には尊いもののように感じられた。
その踏み込んではならない領域に、前のめる。いつもなら形を失くしだす蛇が、けれどこの時は崩れることなく、さらに踏み出しても弾け飛ぶこともない。愕然、しながらもなお。恐る恐ると伸ばした指は、震えながら黒い手に触れ、掴んだ。
瞬間、何かが芽生える。
雪解けのあとの種のように。――けれど種皮を破ったのは、けして青々とした芽などではなかった。
じわりと指先が滲む感触。火傷する、といつか貴方が言ったのが過る。それでもこれは、貴方の言う火傷ではないと知る。水を帯びだした指先でなお、黒い指を握る。
髪も身体も変化なく、ただ触れた手だけが解けそうだった。
「……熱いんだね」
声が、喜びに震えている。あるいは悔しさに。
雫がしたたる。注がれた黄金の双眸が、離すようにと訴えている。
春など来なければ。いつだか貴方が言った意図が、そのわたしはわかる気がした。
――わたしが雪でなければ。
まだ少し、この手を握っていられただろうに。
あるまじき自我が雪解けから息吹いた。
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「ヴェルディア」「一緒にいては駄目?」
2020-08-28 14:59:29 +0000