そういえば、ボルカと約束してたっけ。
…僕を新大陸へ連れていってくれるかどうか、当初僕とボルカは揉めに揉めた。
当然と言えば当然かも知れない。未開の土地での危険を伴う任務、必ずしも安全が保障されている訳では無い。成体になって力を付けたとしても、そんな場所へ生まれて間もない僕を連れて行くのは抵抗があったのだろう。
結局の所、この議論はボルカの根負けによって幕を下ろしたのだが、その代わりに彼は一つの条件を僕に課した。
ボルカ「何があっても、何が起こったとしても、死ぬ事だけは絶対に許さん。この鋼の血にかけて約束しろ。」
おかしな約束だと思った。この世界に『絶対』なんてどこにも無いと、僕は知っていたから。
前提から破綻した口約束一つを破った所で、僕を罰せられる存在なんていない。
生きる上では特に必要の無い意味、価値、心。
きっと人間ほど理屈に合わない道理を通そうとする生き物は他にいないだろう。
………
…でも、
そんな意味の無い生だからこそ、僕は惹かれ、人として生きる道を選んでしまったのかも知れない。
約束は、守らなくちゃね。
出来れば使いたくはなかった手段だけど、そうも言っていられなかった。
…今の僕はここまでだけど、次はもっと良い子にするよ。
いっぱい食べて、いっぱい勉強して、いっぱい遊んで、
そして、人を愛する人になるから…
だから、ごめんね。
バイバイ
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封じられしものとの闘いで力を使い果たして致命傷を負ったムウは命を繋ぎ止める為に全ての記憶を失って幼体に戻る事になりました。
ムウ(illust/78958998)
2020-04-07 13:04:45 +0000