【PFAOS】『強いもの』

kaduki/かづき
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空を行く二人はやがて都跡と思われる場所にたどり着いた。
自分たちもあらゆる場所を旅し、あらゆる町や遺跡を見たが、こんな構造物がある場所は初めてだった。
都跡はそこに暮らしていただろうもの達が去ってから、時を止めたようにしぃんと静まり返っている。
だが、ある一角に冒険者だろうか、人がたくさん出入りしている構造物があった。

遺跡から出てきた冒険者達の話を盗み聞きした限り、そこは鏡がたくさんある場所だという。
しかもただの鏡ではない。
自分の本当の姿や別の姿が映る鏡だという。
さらにその場所に星光石があるらしいと聞いたトウガは渋るハティを連れ、
正面からではなく遺跡の隙間から入り込んだ。

そこは一面鏡張りの部屋だった。
裏口…もとい遺跡の隙間から入り込んだため他の冒険者は見当たらず、しめたとばかりに二人は探索を開始する。
しかし鏡を見ながら歩いても期待していた効果は現われず、星光石も見当たらない。
部屋を鏡に沿って歩いていくと突き当たりに大きな鏡があった。
何かあるかもと期待してトウガがのぞき込んでも、鏡はトウガそのままの姿を映した。
拍子抜けしてしまったトウガは期待外れだなと笑って隣のハティを見た。

ハティは固まっていた。

そこに映る姿は最初は現在模倣している王冠蟲【illust/79923027】と似た姿だった。
だがその姿はみるみる崩れ始め、黒く汚い泥の様な物となった。
そして己を映した泥は突然何者かに引き裂かれた。鏡の奥から何かが歩いてくる。
その者が何か分かった瞬間、ハティは震え出した。

「ハティ!ハティ!」と隣で己を呼ぶ声も聞こえず、ハティは鏡に映るそれから目を離すことが出来なかった。
真っ赤な口に真っ赤な目、鋭い爪と牙を持つ、『強いもの』。
それはハティを見るとニヤリと赤い弧を描いた。そして鏡に映ったトウガを爪で引き裂いた。
必死に自分を呼んでいたその顔が鮮血で染まる。鏡にべったりと赤い血がついた。
鏡の向こうのそれは勝ち誇った雄たけびをあげて、鏡の向こうのトウガを喰い始めた。

思わずハティが後ずさると、両側にある鏡に
かつて己が模倣した姿が鏡に映り、ハティを見据えてゲラゲラと笑う。

――これがお前の望んだ姿だろう――

もう限界だった。

「ちょ、まっ、ハティ!俺、まだ乗って、ない!!」

突然飛び立ったハティに驚き、トウガは慌てて角を掴んだ。
だが凄まじい速度で飛んでいくハティにトウガの体が離れ、手が悴んでいく。
そして……トウガはある都跡の構造物に振り落とされたのだった。

「ハティ…」

徐々に小さくなっていくハティを見送って、トウガは途方に暮れた。

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◆分 断 し ま し た。【illust/79943165
トウガは着地に失敗し左足首をひねり、しばらくは足を引きずってます。
ハティはどこかに飛んで行ってしまいました。
回収、エンカウントご自由にどうぞ。二人とも欠損、死亡表現はなしでお願いします。
回収されなくてもトウガの羽がある限り、ハティが迎えに来ます……たぶん。
(トウガの羽はハティの体の一部です【illust/79224606】)

◆鏡に映ったのはおとぎ話の生物を模倣した模倣種です。
ちなみにこの模倣種は討伐されたか、同じ模倣種にもぐもぐされたか、
ゲンヘ博士【illust/79771887】にもぐもぐされたか、
どれかの理由でもうこの世界にはいません。

◆こちらの非公式イベントに参加します。
鏡の迷宮を看破せよ【illust/79917343
ギルド外ですし、看破もしてなくてすみません。
何か問題ありましたらパラレルスルーでお願いします。

◆設定お借りしています
模倣種【illust/79007237
模倣種の鏡の映り方を参考にさせて頂きました。

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鏡に映ったその姿は自分が望んだ『強いもの』
映した結末は「恐怖」の感情しかなかったかつての自分なら到達しえたもの。
なら、今の自分では……?
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◆pixivファンタジアAOS【illust/78509907

#pixiv Fantasia: Age of Starlight#星の降り立つ都【黄】#鏡の迷宮を看破せよ#星座銀行#ピクファン奇譚#【模倣種】#【エスカリト盗掘商団】

2020-03-10 17:56:06 +0000