【フェシーナ】星喰らいの国ユルドゥズ【第二期】

オススメのぶたやろうこぺん!
Go back

先代 星喰らいの国ユルドゥズ リュース・ギュネシー【77048792】10pt
先代開花 霧花の寝台ノシュト=ニーナ エドナさん【illust/77082820
「お久しぶりです。体調は如何ですか?先日外に買い付けにいった際に薬学者がおりまして、ノシュト=ニーナ の話をしましたら非常に興味を示していたのですよ」
先代開花当代 霧花の寝台ノシュト=ニーナ ジーナさん【illust/77855739
「ジーナは立派につとめをこなしているようね。でもあまり頑張り過ぎず時に肩の力をぬいて、ゆるりとね」

***
▪️素敵なご縁を頂きました。
咎の都イムスルツカ・白銀の魔女さん【illust/77876437
(文化交流、痛みを伴う愛)

知らなかったら、幸せだったのに。こんな気持ちは

***

「はじめまして、白銀の魔女様。ユルドゥズより参りました、星喰らいのマニャンと申します。以降お見知り置きを」

ここより離れた地にイムスルツカという白亜の国があるらしいーーー。商人から国の概要を聞き、一度彼の地の鎮魂祭を見てみたいと兼ねてより思っており、今回それが許されここにいる。
いくら墜星との戦いが安定化したとはいえ、年間を通じ幾ばくかの犠牲は出てしまう。行き場のない魂が、空気を震わせ泣いているのを感じていた私は彼らを弔う事は出来ないか、と方法を模索していた。

「私達の国は山と山の間にありますから、自然がとても多いの。だから冬が長くてとても大変。どこもかしこも真っ白になってしまって、小さい子供はたまに自分の家が解らなくなって泣いてしまう事もあってね…」
「長い冬は苦手なんです。寒いし、作物は成らないし、銀世界に墜星が出ると、いやでも視界にそれしか映らなくて…」

反吐がでる、という言葉が出かかって口を噤む。初対面だからと話しやすいからといって話しすぎだ。彼は話を聞いてくれているが、辟易とされていたらどうしよう。
にこり、と笑って話題を変える。ここにくるまでにあった活気ある一番の話、悪名高い賊のグループの話…。向こうにも益のある話をしようと心がける。

***
「ええ、手ぶらというのも何ですから。考え事があると、ついちくたくと縫ってしまうんです。私達の国の女達は、皆なかなかの腕前で」

何度目かの来訪で彼に贈り物と称して自身が刺繍を施したハンカチを渡す。一国の王として質素すぎやしないだろうか、と思うところもあったが何となく、彼には煌びやかな宝石よりもこっちの方が喜んでくれるだろうなと思った。

「…色が無くなっても、白と黒でも美しくなるように考えてみたの。イムスルツカからユルドゥズに帰る時、貴方と話した事、オクリ火ト達が行う儀式の事、色々楽しいもの、美しいものを思い出しながら針を入れているの。また今回帰る時も想って縫うわ。だからまた、受け取ってくださると嬉しいわ」

ハンカチだから汚れたら捨てて大丈夫だからね、と付け加える。もしもこの色が、彼に嫌な思いを持たせるのならば火にくべてほしい。

*
その年はこれまでの祭事とは違うらしい、という事を聞き開始を見守っている。
するとバルーンが白亜の都を美しく照らす。きらきら、きらきら…。色と色が重なり、複雑な色彩を生み出す。言葉に出来ないような美しさがそこにはあり、つい賓客だと言うのにそれに見入ってしまう。
言葉を失いそれに魅了されていると、魔女さんが戻ってくる。

「素敵…とっても素敵よ。なんて言ったらいいのかしら…。いいえ、私の言葉じゃ言い尽くせない。綺麗…」
「魔女さん、すごいのね。私達じゃこうは思いつかなかったわ」

他に言う言葉はないか、必死に脳を働かせる。しかし、見つからない。
…それでも、いいか。なんて思ってしまう。この美しさの前には。
次第に私と魔女さんの間には言葉が無くなる。この瞬間が永遠に続けばいいと思ってしまったのは、この幻想的な景色に対してなのか、それとも、彼と一緒にいるから、なのか。

***
私の心は何時だって晴れているのに。凪いでいたのに。最近頭の中にもやがかかったようにぼんやりしてしまう。ただ何となく、本当に何となく、逢いたい、と願ってしまう。
そんな隙を連中ーーー墜星が見逃す筈がなく、手痛く反撃を受けてしまった。

『お恥ずかしい話ながら、墜星との戦いの最中怪我をしてしまい今回はそちらにお伺いが出来なさそうです。大変勝手ながら次回の訪問を楽しみにしております。』

そう書簡に認め、送らせる。傷は深いが、5日程眠り続ければ完治の手前位まではいけるだろう。家臣達にその旨を伝え、意識を完全にシャットダウンする。

*
目が覚め最初に入ってきたのは、彼ーーー、白銀の魔女がこの地にいるという事だった。

「な、何故こちらまで!?いえ、迷惑だなんて、そんな…!心配して下さって、本当に、その、うれ、しい、わ…」
「いえ、眠り続けたおかげで元気になりました。…ずっと眠っていて、体が鈍っているんです。宜しければ散歩がてら国を案内させて頂いてもいいかしら」

浮ついてる自分を必死に押さえつけながら彼に国を案内する。嬉しいけど、彼はきっとすぐ帰ってしまうのだろう。そう思うと、感じた事のないような暗い感情が自分を支配する。

*
次の日の朝、この地を発つという彼が部屋まで挨拶に来てくれた。呪いがあるのだ、安易な路ではないだろう。気をつけて戻って欲しい、と伝える。
笑顔で見送ろうと思っていたのに、涙が一筋溢れる。ごめんなさい、と涙を拭っても涙が止まらない。自分を制御出来ない、こんな私を、私は知らない。

「貴方が居なければ、私は星喰らいのマニャンでいられたのに」
「貴方のせいで心がこんなにも乱されてしまった。嫌い、憎いわ」

彼が、戸惑っているのが伝わる。当たり前だ。こんな事を言われても困るだろう。自分の心が憎い、出会わなければ、と叫んでいる。でも私の口から次にでた言葉は、絞り出すようなすき、だった。

「呪いがあったとしても、私は貴方がすき。すきに、なってしまったの…」

***

時は進み、私達は幾つもの季節を過ごす。幸い次の王の発現は早く私の在位は短く、彼の側に早く行く事ができたのだ。
「わ、見て…笑ったわ、可愛い…」

*

そしてさらに幾つかの季節が来て終わりは訪れる。
彼が死ぬのが耐えられない、竜に敵わなくとも一矢報いようと挑んでしまうからという理由で手をかけて貰う等。
彼に多くの幸せを渡したいと思っていた。だけど最後がこれではと申し訳ない気持ちにもなる。

「ね、私の代わりに世界を巡って、美しいものを見てきて頂戴。とっておきを見つけたら、教えてね」

送り出す言葉を送りながらも、彼に新たな呪いをかけてしまった気がする。
ごめんない、と言おうとした口はもう動かなかった。

#【フェシーナの花々】#【フェシーナ】第二期#【フェシーナ】女性#【フェシーナ】王#【フェシーナ】星喰らいの国ユルドゥズ#【フェシーナ】開花済

2019-11-15 15:00:14 +0000