—————————
「兄さん、どうして。」
—————————
その日、僕はたまたま「----村・跡地」を訪れていた。
記録蒐集にご協力してくださった村長代理の「コハルさん」を訪問したかったのだが、
先客が現れた。
なので、当日中の蒐集は急遽中止にすることとなった。
一人の兵士が帰って来たのだ。
先日コハルさんを訪ねた時に思ったのだ。
不器用な彼女は、控えよう、控えよう、と思っても、
ついつい、ただ一人の家族のことを話題に上らせてしまうのだ。
そして、彼に対する行いを、深く後悔していることも。
僕はあのお二人の仲がどのようなものなのか、詳しくは知らない。
きっと、当の兄妹二人にしかわからないのだろう。
どんな兄妹関係が正しいのかだなんて、僕が口出しするべきじゃない。
ただ一つ、蒐者として確実に言えることがある。
戦乱の世を耐えて生き延びた二人の兄弟の絆は、
容易くは絶縁することはできないということだ。
僕は、戦場の英雄の逸話には死ぬほど興味がない。
嘘や虚飾が混じったデタラメに、僕は興味を持てない。
そのかわり、100年後には消えてしまう、
今日を生きる人々の足跡が、
僕はとても、たまらなく、大好きだ。
とても深く、精一杯、大地に刻まれた、小さな足跡が。
今日はこの後あの兵士から、沢山の土産話を聞かされることになるのだろう。
嘘か本当かわからない、彼だけが見届けた真実の山を。
そうやって、伝説(ファンタジア)は生まれてくるのだ。
僕はこういう瞬間になんども出会えるから、蒐者という仕事が大好きだ。
また今度、あの兄妹を訪ねてみようと思う。
…
その日、ノーザリア連邦「----村」には、
暖かい春の日差しがさしていた。
とてもいい天気だと、僕は思った。
-(蒐者ランマの手記より抜粋)-
—————————
●竟の花道【illust/74011493】
●PFLS最終回【illust/73919564】
—————————
【illust/74048755】
ナムチの命を助けてくださり、ありがとうございました。
精霊のお方は、顔も名前もわからずじまいになりそうですが、
あなたの行いを、ナムチは一生涯忘れることはないでしょう。
—————————
original
ナムチ【illust/72943676】【illust/72968279】
蒐者ランマ【illust/73435893】
—————————
この投稿を持ちまして、本編時系列中のナムチのお話はおしまいです。
異世界や次のPF世界に行くことなく、
ナムチ達はラスト大陸で
最後まで幸せに暮らしました。
こんなにスッキリした形でPF内で物語を終わらせることができてよかったです。
短い間でしたが、お付き合い大変ありがとうございました。
ファンタジーが大好きな人たちに幸運あれ。
—————————
2019-04-07 06:59:13 +0000