【ポケフロ0】Slow me!

あると
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「むむむむむ……これマジでどうしよっか。もう一発へんげのたまでも食らえばいいけど……そもそも気づかれない可能性がなぁ……」

黄色い毛玉ことチトセはゴーグルの上で一つため息。二、三人ポケモンが通っていったが、気づいてくれるそぶりもなく刀だけでもかつげるならともかく、それすらできない今迂闊に動くのも不安だ。
とりあえず退屈しのぎにいとをはくの一つでも使えるようになろうと腹式呼吸なんかを試してみたり。
いつになったら戻れるかなーと呑気に考えているところに、女性の悲鳴が聞こえてきた。

「まってください、私じゃないんです!」

コイルに追いかけられる傷跡だらけのピカチュウの女性。そこからはもはや本能に近かった。
とっさに吐き出されるは蜘蛛の糸。粘性の強いそれはコイルを捕らえ、ベチャっという音とともに壁に貼り付けにする。

「あ、らっきー、できた」

チトセにとって女性を守る事は当然であり、反射とも言えるほど、物心ついたその日からずっとそのために生きてきた。だからこそ技を使えたのかもしれないな、とぼんやり考えていると、ピカチュウがゆっくりと近づいてくる。

「ありがとうございます。貴方は……」

そこで足元に転がる黄昏の灯台の首飾りがピカチュウの眼に映る。

「貴方は、黄昏の灯台の方ですか?」
「えっ、あー、うん。なんか球を投げられて、とっさに切ったらこのざまさ。立てなきゃ刀をふるえない。キミのための剣になりたいけれど、それすら叶わない」
「……そうですか。私は雪間のシュンスイと申します」
「ん、ボクはチトセ。……ん?んんん?あれ?雪間のシュンスイって男じゃなかったっけ?……あの球、性別まで変わるの?やばくない?」

どこか気取った口調から一転砕けた喋り方に切り替わるチトセに首を傾げつつ、シュンスイは今まさに狙われやすい状況であることを鑑みて、念のためとチトセにこの姿の時は偽名でよろしくお願いします。と伝える。

「ん、おっけ。ハルちゃんね。……それでさ、すっごく申し訳ないんだけどさ、刀だけでいいから運んでもらっていいかな?コレ、盗られたら死活問題だからさ……」

ピカチュウの体格でもそれなりに大きいが、まぁ不可能ではないし助けてもらった礼もあるからと刀とギルドを表す首飾り。ついでに銃を拾い上げ、この場を後にする。

「ごめんね、たすかるよ。……あの球さ、もう一回ぶつけられたらまた姿変わるよね。たぶん」
「そうですね、恐らくは……」
「見かけたらボクをぶん投げてくれる?」
「恐ろしく強引な方法を取るんですね……壁にでもぶつかったら怪我をしてしまいますよ?」
「それでも、女の子を守れないこの体じゃあなんの意味もないのさ。せめて刀を握れなきゃ、ボクは剣になれない」

まぁ、そんな都合よく現れないだろうけど。とけらけら笑っていると、まさにここぞというタイミングでデデンネの姿。しかしながら傷だらけのピカチュウを見て仲間だと思ったのか一目見ただけでどこかへと駆け出そうとする。

「こら、まてっ!」

そこでいとをはくを目の前にぶつけ、敵意をアピールすると、デデンネたちもこちらへと注意を向ける。

「オマエらも敵だったんチューー!」
「ハル、よろしく」
「……はぁ……かしこまりました」

デデンネの投擲に合わせて小さな小さな毛玉がへんげのたまにまっすぐと飛んでいく。

「!!?!!????」

流石のデデンネもこれには驚きを隠せないようで完全に思考が停止していると、へんげのたまはチトセに直撃し、煙を巻き上げる。

「……よっし!作戦成功!!せめてそれなりに大きいポケモンでよろしく!!」

歓喜の声が煙の向こうから聞こえてくる。そして、煙が晴れるとそこに立っていたのは、やっぱり小さくて黄色いポケモン。
ただ、幸いにもバチュルよりも大きく、立ち上がれる。

「……今度はピチューかよ!!!あぁもう……でもこれならまだましか……ホエルオーになったら大事故だもんな……」
「……チトセさん、貴方、その傷は」
「ん、女の子を守ろうとした時にねー、人質に取られちゃうとなかなか動けないでしょ?さっさと挑発して食らってスキをついた方が女の子が安全だからさ」

へらへらと笑うチトセは顔以外全身に火傷や傷跡が残されていた。

「これ、私と同じように勘違いされるのでは」
「……ぼ、ボクはそうだな、うん、女好きの主人に女の子をこの騒乱から守るように言われたって設定でいこう」
「……なんというか、貴方もくじ運がないですね……」
「シロノワよりはマシだよ……。というわけでボクもセンでよろしくー」

刀を肩に担ぎ、銃を腰に。体の大きさにはかなり不相応ながら、精神的な安定は大きく口調がひときわ軽くなる。

「さて、ハルちゃん。今の姿のキミのとびっきりの笑顔を見せてくれればボクはキミの剣となろう。……いつも通りにやれるかはわからないから何かあったらすぐ逃げてね。元男でも今は女の子。ならボクは守るだけだから」
「貴方は誰にでもその調子なんですか?」
「女の子はみんな尊いからねー。それに、両親の遺した言葉だから。いざとなったら肉の壁くらいにはなるよ」
「……はいそうですか、とはなりませんね。私も貴方を守るため、できる範囲のことはして見せましょう」
「……あはは、通りで似た匂いがするわけだ。よろしく、ハル」
「よろしくお願いしますね、セン」

こちらの展開(illust/73883513)をお借りしましてシュンスイさんに合流。
移動もままならないのでテロリズムくんにもう一回へんかのたまガチャに挑戦してピチューになりました。

お借りしました
シュンスイさん(ふだんのすがた)(illust/72234607

やっぱり黄色い(illust/73864211

#Pokémon Frontier#【ポケフロ0:交流】#【黄昏の灯台】#【それぞれの正義:ボウケン者】#【雪間】

2019-03-26 10:20:05 +0000