「じゃあ一緒に、紐無しバンジーで 運試しでもして遊ばない?」
「……!?」
それは負傷したカシャ隊、最後の一人「隊長カシャ」を運んでるときの事であった。
戦闘の音がすると目を向けた先の二つの人影が、よろめいたかと思うと消えたのだ。
いや、消えたのではない、前の言葉を聞くに恐らく————————
(人が落ちた。)
そう認識した後のスズの行動は早かった。
出来るだけ丁寧に、応急手当をしただけの傷に触れないように安静にカシャを毛布で包んで地に下ろすと、カシャの言葉も聴かずに迷わず地を蹴り、崖の底へと飛び込んだ。
………
……
…
……数秒後。
二人のクッションになる形でスズは、地面に伏していた。
如何にか空中で二人を捕まえて、大きな猫の姿で二人のクッションになることは成功したが、それでも二人は怪我を負ってしまった。
片方は同じ金烏傭兵団に所属しているヨスガだということは顔を見て分かっているが、もう一人の彼は誰だろう?
状況を見るに恐らく敵国の傭兵だろうけども――……そんなものは関係ない。
怪我をしているなら手当しないと、それが、白樺隊の信条なのだから。
(で、も だめだあ)
猫の姿から自由に指を使える人の姿に戻ることは成功したが、顔が潰れ、内臓が潰れ、骨は折れ、肌を突き破ってるのか起き上がれない。
如何にか二人を庇った片腕は使えるけれどもこれじゃ二人の手当ては出来ないだろう。
そもそも、痛みでまともに思考がまとまらない。生きてることが奇跡だ。
(早く、二人の容態を見なきゃいけないのに)
(コトユリお姉さまだったら、きっと もっとうまく動けたのに)
(私にはこんな方法でしか、まだ人を助けられない)
口の中にたまり続ける血をごぼ、と吐き出しながらスズは近くに鋭利なものはないかと手を伸ばして探す。
そして丁度いい尖った石を見つけると、一瞬だけ、……ほんの一瞬だけ。迷ったそぶりを見せた後、強く握りしめて自分の胸へと突き刺した。
既に赤く染まり切った、本来白い筈の隊服が見る見るうちに湿っていく。
ぴく、ぴくと動いてた指先も、もう。動かない。
暖かかった体も、冷え切って、温度は消えていく。
——————どう見ても命はないと、その場に人がいたら誰もが思っただろう。
それでも彼女は起き上がった。
「……痛みなし、これで動ける。」
ぐっぱーぐっぱーと掌を結んで、開いて。
体が動くかどうか確かめて。痛みがないのも確認して。
まるで今までの怪我が全て消えたかのように怪我一つなく彼女は立ち上がった。
"二人"を手当てし、カシャさんとヨスガさんを団に連れ戻す為。
(怪我が酷かったらシタラさんも運ぶつもりマンマンです。)
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お借りしました。
流れはこちら
【illust/73113998】→【illust/73130682】→【illust/73206683】→【illust/73219709】
スズがカシャさん抱えてる絵【illust/73209498】
問題があったらパラレルスルーしてください……。
二人の熱い戦いに割って入るようなことを失礼します。ここまでずっと一人で頑張ってくれなヨスガさんを死なせたくない一心で手を動かしてました…。
見逃せないほどのミスがあればお手数ですがご連絡ください。
顔が出てなくて申し訳ございません
ヨスガさん【illust/72942354】
シタラさん【illust/72937644】
カシャさん【illust/73122297】
残り残機5つ 死体運びのスズ【illust/73209498】
2019-02-16 19:08:42 +0000