「さあ、手を出したまえよ」
☑️贈る花:カモミール、キミ【illust/62015259】に贈る輪。
蒼月の日だからといって、特に何も変わらない。
ただ月が青いだけのいつもの年末を過ごす。
いつもより少し片付いた(気のする)家でトーストを頬張ったり、彼の作り出した品々(一年分)を眺めたり。
けれど私にはひとつだけ。やりたい事があった。
* * *
「蒼月色のインクなんて、流行りそうだと思わないかい? “30年に一度の輝きを秘めた蒼月雫”とかテキトーに売り出せば結構儲かる気がするなぁ。他にも、そのインクで描かれた絵とか」
「…………」
「…それをするなら年末じゃあ意味がないから勿論冗談だけど、キミがそんなインクを作ってくれるならそれで何か描いてみたい気もする」
「“蒼月の日”懐かしいね。あの時は私もやんちゃだったから……確かキミのところに駆け込みに行ったんだっけ?」
テーブルの上に飾られた花を見る。私が好きで飾っているカモミール。
30年前贈ったのもこの花……だったハズ、実にちょうどいい。
ひとつ手にとって彼に問いかける。
「さて…キミが良かったらになるけれど。インクの製作の為にも、外に出てみないかい? きっと参考になる筈だ」
……なんて言って、彼の手を引き月明かりの下へ行く。
「なぁに、何も企んではいないよ。ただ、私の願い事を叶えたいだけ。さあ、手を出したまえよ。勿論左手の方を」
「まあ、憧れってやつだよ。30年前は、私小さかったでしょう?」
「子どもっぽいって思うかもしれないけど、私はどうしてもこの月の下でこうして花を贈りたかった」
そもそもそこまでの仲じゃなかったけどね。そう言いながら彼の指に花を結ぶ。
「キミに幸運を。私がいるのだから必要ないかもしれないけどね」
* * *
カモミールの花言葉:逆境に耐える、逆境で生まれる力、あなたを癒す、等々…
☑カノンノーヴェ【illust/62887362】30年前の私⇒【illust/66557389】
2018-12-31 09:00:01 +0000