走って走って走った先は海だった
底は暗くて深くて冷たいところ
...?
海の底なんて見たことないのにどうしてわかるのかな
わたしはまたなにか忘れちゃったのかな
それとも誰かの夢なのかな
◆ユークレース(Eu_clase)
(10年/♀/135cm(30cm)/依代の宝石:ユークレース)
◆家族
父:サファファイアさん【illust/68042629】
「いつのまにかね、紙がなくなっちゃうの、ふしぎだね。...?かばんがあいてる?...ほんとだ」
母:スフィ【illust/68011901】
「...おさかな...ちょっとあきた...」
妹:オニキススちゃん【illust/68507501】
「スス、あっちにね、本がたくさん置いてあるおうちがあったよ。窓、あいてるといいなあ。」
からくりの子犬の尾羽から生まれた、こいぬのようなこねこのようないきもの。
「書き残すこと」に傾倒しており、いつも大事そうに臙脂色の本を抱えている。
鞄の中は殆ど紙しか入っていない。紙を与えると喜ぶ。
母や妹に比べやや鈍くさい。
爪は名前と同じ石で出来ており割れやすい。
都合が悪くなるとただのこいぬのフリをするが、犬なのか猫なのか自分でもよくわからない為鳴き声が雑。
光輪は回路であり、光の消滅を機能停止とする。
◆(5/6)素敵なご縁を結んで頂きました!
ビトリさん【illust/68538523】
なんだかかばんが軽い。
そう思ったときにはもうたくさん紙が飛んでいて
風に吹かれてするする逃げるから、うまくひろえない。
あっちにこっちに追いかけていると、
上のほうから声がした。
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(すごく おおきい とりだ...!)
鳥はにがて。
つつくし、吠えてもぜんぜんにげてくれないし。
おかあさんやススみたいにうまく追いはらえないからいつも逃げるしかない。
あんなに大きな羽根の鳥もいるんだなあ。
「......?」
いっぱい走って少し落ち着くと、紙束を握っている事に気付いた。
...きっとさっきの鳥のひとはこれを拾って届けにきてくれたんだ。
どうしよう、びっくりして逃げちゃった。
今度会ったらちゃんとありがとう言わないと。
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「えっと...あの、さっきはありがとう。あ…紙、また拾ってくれたの?」
息を切らした「鳥のおにいさん」の手には紙が握られていて、かばんを見るとまた開けっぱなし。
何も言わずに逃げちゃって怒ってないかな?
鳥のおにいさんは同じ目線までかがむとはい、と笑って紙を手渡してくれた。
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鳥のおにいさん、ビトリは旅をしているみたいで、よく旅先の話しをしてくれる。
彼を探しに、街へ出ることが多くなった。
「外にはここの他にもいっぱい街があるの?そこって遠い?しらないとこ、こわくない?」
「ビトリ、ビトリ、あのね、このまえのお話しの続き、聞きたい」
「ビトリはぴかぴかしたものが好き?ユーク?ユークはおとうさんやおかあさんのふかふかとか、妹と本を読んだりとか、好きだよ。
あ、あとね、ビトリとお話しするのも好き。」
拾った小石をぴかぴかに磨いたらすごくほめてくれた。うれしい。
今度はもっとぴかぴかにできるようにおとうさんに教えてもらおう。
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旅の話を聞くのはたのしくて、よくほめてくれるのがうれしくて
同じくらい、忘れることが、また怖くなった。
忘れちゃったら、変だと思われないかな。嫌われないかな。
けれど、返ってきた言葉は、とてもとてもあたたかなものだった。
「そう、かな...ユークはこのままでもいいのかな...?...うん、ありがとうビトリ。」
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時々考える。
ビトリは旅人さんだから、いつかどこかにいっちゃうのかな。
また帰ってきてユークとお話してくれるかな。
考えだすと、なんだかとってもさみしい。
「...!一緒に行ってもいいの...?あ...で、でも、ユーク何にもできないよ?じゃま...じゃない?」
「うん、うん...!ユークもビトリと一緒に行きたい!」
「一緒に旅に出よう」
その言葉がうれしくて、うれしくて、耳も尻尾もぱたぱたと動く。
何を書くか少し迷って、「いってきます」と書き置いて外に出る。
いつものかばんと本を持って彼の元へ。
繋いだ手が、とてもあたたかい。
旅に出てからは毎日はじめて見るものだらけで、
忘れたくないものがどんどん増えて、今ではもう書ききれないくらい。
ビトリはたのしいやうれしいをたくさんくれる。
一緒にいると安心する。
それから、それから…
言葉にできないから書いてみるけど、この気持ちは文字にするのも難しい。
少女は1枚の紙をかばんの底にそっとしまうと、
自分を呼ぶ声の方へと駆けて行く。
2018-05-02 18:07:31 +0000