【えんもの】 やむ 【一世代目】

ひつじ
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✿縁は異なもの味なもの【illust/67011335

❀巳(やむ)
 ✾怪物(白娘子)
 ✾女性
 ✾身長150cm程
  (蛇は15〜150程度に収縮可能)
 白蛇との血を引くとも白蛇の化身とも白蛇に貢がれた末路ともされる娘
 自分でも出生はよく覚えていないほどに永い時を生きている
 とある村を守っていたがその村がなくなってからはあちらこちらを転々としている
 しかし人里に近づくことはあまりなく遠くから様子を見るだけ、接し方がわからないとも言う
 感情の喜怒哀楽が薄くほとんど無表情で口数も少ない
 人と接した事が殆ど無いため世間知らずどころかものを知らずで知ってる知識も片寄っている
 大人しいが生きた年月に反して少女じみた少女で人の営みに混ざりたい欲もそれなりにある、ただ少し怖いし恐がらせるのも怖い
 連れている蛇は自身から作り出した分身のようなもので個たる意志はない。

✿婚姻
 温かい光の様な方✿秋保さん≫ 【illust/67511640
 「美しい…な、ここは。花も、だが…ここにいる、人々が……そして、お主も。」
 「言葉で、なんと…なく、知ったつもりに…なっていた。そんな沢山を…教えてもらった。かけがえのない、いとおしいもの。」

 日差しが眩しい時期だった、それなのにどこからか小さな花が舞ってきて気になって山を降りた。
 そこには真っ白な花を咲かせる木が生えていてそこから花が溢れる姿はまるで雪の様で思わず見惚れてしまった。
 だから他の誰かがきた事に気付かず物音に驚いて振り返ればそこにもまた真っ白で美しい彼がいた。思わず人里に降りるからと縮めていた蛇を戻してしまいとても驚かせてしまったが。
 驚かせたいわけでも恐がらせたいわけでも危害を加えたいわけでもないが、うまく出来ず伝えられもしないことが不甲斐ない。
 これ以上気を害さないうちに白く美しい花と久々に間近で出会った人に後ろ髪を引かれつつもそそくさとその場を去ろうとした。
 しかし彼はワタシの手に触れた。優しくしっかりと。そうしてワタシを表にあるという彼の住まう温泉旅館へと連れて行ったのだ。
 ワタシはさっきまで山の奥に一人で白い花に心惹かれただけなのに目まぐるしく移り変わる展開について行けずとも、ただワタシの手をとる彼の手があたたかくてそれだけでされるがままになってしまった。
 ワタシに声をかけた者も、触れてきた者も初めてで心の臓が跳ねてごうごうと血の流れる音が耳に響いて触れたところは温かいを通り越して熱いようでけれど不快ではなくて
 花はこんなに綺麗だっただろうか、風はこんなに涼しかっただろうか、日はこんなに眩しかっただろうかなんて気にならない事が気になって、思い返せば混乱していたのだろう。
 彼は妖とは思えないほど普通に人に挨拶してワタシを館に招き入れた。
 そこは不思議なところだった。人間と妖怪とが並んで当たり前のように肩を並べ言葉を交わし身を寄せ合い、親しそうな二人組にに子供を挟んだ男女や親子孫らしき団欒に親しげな集まり、交流といわれるものが目の前で行われている。
 それはワタシがずっと遠くから見て見守っていたものだった。そしてそんな人々を見る隣の彼の視線はとても温かくてきっとかつてのワタシと同じなのだと思った。
 だからワタシをここに連れてきてくれたのだろう。きっととても優しい人。
 彼がワタシに教えて与えてくれたのはワタシがずっと遠くから見守っていた人の営みそのものだった。何も知らないワタシに彼は一つ一つ隣で教えてくれた。
 ここは張った湯を浴びる場所で疲れがとれるのだと。お言葉に甘え試そうとしたら置いていかれて少し心細かった。
 季節ごとの美味しい食事、食べ方に道具の使い方や名前、込められた意味。箸を器用に使う所作はとても雅だった。
 服装も晴れの日と普段は違うということしか知らないワタシに季節や特徴、柄の意味や流行りなんかも交えて。彼がワタシにはあれがこれが似合うと言ってくれるのはなんだか嬉しかった。ただ身に付けていただけのものが違うものに感じた。
 彼はこうしてほかの誰かも飾るのだろうか、優しく側で手解きをするのだろうか。それはなんだか少し嫌だった。
 すぐにいなくなるつもりだったのに、少ししたら出ていくつもりだったのに。
 次の季節はあの花が咲く、この食べ物の旬はその次だ、もうすぐその木に実がつく、彼が楽しそうに“また”と“共に”と言うからつい楽しみだと思ってこたえてしまって
 あれよあれよと季節はめぐり後にする機を逃しワタシもなかなかに人の営みに混ざるのが堂にはいって来た。ずっと遠くから見ている方が長かったのに。
 旅館の客に覚えられるほどに腰を据えてしまってよく来る老婆がワタシに饅頭を二つくれた。うまく礼を謂うことができた。おそらく。
 それを彼と食べようとおもった。共に並んで語らいながら。そうしてそれを老婆に報告したいと思った。
 気付けばここに来てから二つ目には彼のことを考えている。
 初めはどうしてワタシに接してくるのかわからない少し不思議な人、人の営みを見守る優しい人だと気付いてからそれがワタシに向けられたのだとも察した。
 いつからかワタシを気にかけてくれることが嬉しくて、隣にいてくれると落ち着いてけれどどこか心が騒いで、優しくされると胸が高鳴って、
 そして彼がくれた沢山を返したい、彼にもこの喜びを感じてほしい、それがワタシからならと思うようになって、
 温かい饅頭を抱えて彼のいるだろう裏庭へ向かいながらそこまで思い返してふと気づいた。
 彼のおかげでずいぶんと人らしくなり人の営みに馴染んだワタシは気づいてしまった。
 たくさん、たくさん、こんな風になってる人々を見てきた。時に笑い、時に泣き、それでも供にとありたいと願う人々を。
 それをなんというかワタシは知っている。知っていた、けれどはじめて知った。
 あの日のようにヒトツバタゴの花が雪のように咲いていて、その麓に彼がたっていて、その風景はあまりにも美しくて
 あの日彼に手をとられて心の臓が跳ねてごうごうと血の流れる音が耳に響いて触れたところは温かいを通り越して熱いようでけれど不快ではなくて
 花はこんなに綺麗で、風はこんなに涼しかくて、日はこんなに眩しかった意味がようやくワタシはわかった。

 「秋保、ワタシは秋保と共に添い遂げたい、あの夫婦の様に、あの家族のように。病めるときも、健やかなときも、一緒に笑って泣いて楽しんで怒って、ワタシはそうしてずっと秋保と共にいたいのだ。」
 「また、来年も再来年もその先も、ここで共にヒトツバタゴの花を見よう。」
 「ワタシも好きだ、ずっと、秋保を…愛しているんだ。」

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2018-03-08 12:59:06 +0000