【九十九路】カナエ【アフター】

空閑
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「飛べないンなら造りゃいいンだよ」

 
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 九十九路の羅針盤/illust/60865485

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貴方ともう一度。-illust/66826854

「お帰り。やっと会えたね」
 「お帰り。やっと会えたね」

「いや、お前と俺は初めまして。でも俺はお前を知ってる。何十年も前から、識ってる」
「名前は?───ネガイ、ネガイか。俺はカナエ。願いを叶えるで、叶。カナエ・スノゲルバ」
「良ければ、少し俺と一緒にいてくれねぇか?うん、良ければ。色々話したいことがあるんだ」
  「そう、私がね。それとも、もう逢いたくない?」

「飛行機を。空を飛ぶものを整備したり、造ったり、乗ったりするのが俺の仕事で趣味。ネガイ、お前も"飛"…で、いいのかな。飛が、飛という種族の名で、見ていた景色を、見えなくなった景色を見てみたくてこれをしているんだよ。そうだ、良ければネガイも見てみねえ?上空数千メートル上…までは無理かもだけど。飛べる所まで飛んで、そこの景色を見てみねえか」
  「ふふふっ、まるで空中デートみたい」

「ネガイ?大丈夫か?…眠い?…そうか、じゃあ、おやすみ」
  「…ユガ?」

 「ユガが出てきたらネガイはどうなるの?」
 「消えちゃうの?」
 「じゃあ、ネガイがあのマスクを捨てたらユガは?ユガも消えちゃうの?」
 「そんなのやだ」
 「私はどっちも大切。どっちももう失いたくない。…私にそんなこと言う権利ないかもだけど。ユガを殺したのは私。苦しめたのも私。恨まれたって憎まれたって嫌われていたって仕方ないし、むしろ。…当たり前、で。だけど でも こうして逢えたのが奇跡みたいで えっと」
 「…好きなの、ずっと、私、わたし」

 「ユガとまた生きたい。」
 「もう苦しめたりすること絶対ないから、だから」



「ネガイ」
「ネガイはどんなふうに過ごしてここまで生きてきた?」

「俺の中にはノイラートがいる。俺とお前の曾祖母くらい?血が繋がってんだか繋がってないんだか、飛ってのは点の繋がりばかりでよくわからないな。だからかな、この人俺の中でじっと見ているだけ。ただただ、ずっと逢いたい人のために俺の中にいる。それが───お前と一緒にいる人」
  「カナエの中で幾度も逢いたいと叫んでしまったから仕方ないね。でも曾孫にそういうのがバレてるの気恥ずかしいなあ」

「ノイラートがその人に逢えるんだったら別に何でも良かったんだけど。この名前もそういう想いをコメられている気がするし。でも、ネガイと過ごしてて、…何でも良く、なくなった」
  「頑張れ。カナエ」

「ネガイ、俺はネガイのことが、好きだ」
「だから、消えてほしくない、一緒にいて欲しい」

  「…叶うなら、」

 

ある朝、目覚めると眼前一杯に快晴の青空が瞳を焼かんばかりに広がっていた。
一呼吸。
春の匂いがする。土の感触が皮膚を撫ぜる。生きている音が聴こえる。
私は、私の体で呼吸をしている。

「奇跡?」

カナエと向き合う。ああこんなに背の高い子だったのか。
ネガイが私を見る。変わらず笑っている。
そして、


「ユガ!」

 
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 ✧カナエ・スノゲルバ/叶
 ✧18歳|男性|181cm|太陽
 ✧一人称/俺、二人称、お前

✧前期|絆相手様 メ・ルチア/エイデスさん:illust/64042918

✦誰そ彼:illust/64037995

 
✧夕空と海原が鏡面のように広がる場所から生まれた”飛”。
 いつぞやの少女と同じくして「水平線の子ども」。
 性格は寡黙で無愛想、おまけに仏頂面。

 飛とは空から落とされた生物とあり、飛ぶことを渇望はすれど
 今の今まで飛どもはその手段の模索をしたことはなかった。
 それは皆総じて自身の翼で、全身で空を感じたいがための思考の偏りだった。

 カナエは空に何があるのか、そこだけに好奇心が向いた。
 かつて先祖が駆け回っていた庭は、景色は何なのか、それを見たかった。
 だから彼は思考を転換し、飛行機を操るようになった。
 彼は自身のことを「飛行技士」と呼んでいる。
 地に落ちてから歴代の飛の中で 唯一空を我が物顔で駆け回る飛。

 腕っ節が強く護衛も度々請け負うが、自分がしている作業を邪魔されるのは嫌い。

「見てみたい 上空数千メートルの景色を」
「見下ろしてみたい 人々の発達を」
「空に果てなどあるのか確かめてみたい」
「――――探してみたい いや、探したいんだ」
「あの人が 叶えたいって言うから」

 
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✧飛/novel/8210122

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「皆、私のこと置いていっていくんだもん。お母さんが出ていかないわけないでしょ?」

 
✧ノイラート・スノゲルバ
✧?歳|女性|152cm
✧一人称|私、二人称|きみ、呼び捨て

✦いつかの姿/illust/62306570

✧カナエに宿っているもう一つの人格のようなもの。
 どちらかと言えばノイラートが主人格に等しいが、鳴りを潜めている。
 いつかのような水を汚染する力はなく、他の飛同様水を浄化する。
 精神体なのか姿は少し成長しており、無邪気さはなく、平凡な少女と等しい。
                       「忘れちゃった?」

「だって、ユイも、オートも、…あの人も、皆私を置いて舞い戻るんだもの」
「置いて行かれたくなんてないし、あの人がいるなら私は何度だって戻ってくるよ」
「だってあの人を殺したのは私だもん。もうあんな悲しいこと繰り返したくない」
「…」
「笑ってたいの、叶うなら、あの人ともう一度」

「ねえ、彼岸花の花言葉って知っている?」

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2018-01-27 12:21:47 +0000