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「――――!」
竜の首狩りシアの振るう大鉈が、巨剣を握る<簒奪者>の右腕を半ばから断ち。
けれど異形の騎士は一切怯んだ風もなく、獣のような野叫を轟かせてその左腕を振るって少女の小柄な体を弾き飛ばす。
「っ、一か、八か!」
そんな削り合いの果て――魔女騎士リィンが選んだのは捨て身の一突き。
そしてまた合わせる獣使いアッガリオもまた、ほぼ同時に異形の騎士の背後から拳を繰り出す。
魔力の青き刃と、紅蓮を纏った拳の一撃。
リィンの鼻先まで迫っていた<簒奪者>の爪先は――そこで辛うじて、その動きを止めた。
「……っ、はー……。やった、か」
「”やったか”はやめとけよ。そいつぁ古くから伝わる復活の呪文だぜ。……ともあれ。どうやら、一息つけそうだな」
軽口を吐いた後、軽く咳き込みながら告げるアッガリオ。満身創痍であったが、しかし彼は不敵な笑みを崩さぬまま小さく肩を揺らす。
彼の言うとおり。どうやら削り合いを制したのは、自分たちの方であったようだ。
「しっかし復活者ってのは何でもありだな。どこぞの大昔の王サマだの、お偉い過去の英雄サマだのが大挙して押し寄せてきやがって。このデカブツも相当のバケモノだったが――ご多分に漏れずどこぞの騎士サマか何かかね」
ぼやくアッガリオの言葉をよそに、気が抜けると同時に痛みを訴え始める全身に鞭打って、異形の騎士の首元を貫いた己の刀を引き抜くと――そこでリィンは眉根を寄せる。
「どうしたよ、騎士の『お兄さん』」
『お兄さん』ではないととっさに抗弁しようとしたが、別段女性扱いしてほしいわけでもないのでそこはスルーし。
それよりも、<簒奪者>と称される復活者。恐らく戦闘中に剥がれ落ちたのだろう、黒布の解けたその顔をじっと見つめてリィンは静かに口を開く。
「……どうやら、違うみたいだよ」
「うん?」
<簒奪者>と呼ばれる異形の騎士の、その顔。
そこには――そこにあるはずの双眸が、なかった。
明らかに、人為的に刳りぬかれたであろう痛ましいその空洞。
「これは――かつての大罪人の証だ」
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というわけでこちら【illust/64440416】とかこちら【illust/64448723】とかこちら【illust/64469871】からの流れで。エンカありがとうございます!
お借りしました。
リィンさん【illust/63999973】 アッガリオさん【illust/63981431】シアさん【illust/64002032】
自キャラ:簒奪者【illust/64350832】
2017-08-17 14:26:43 +0000