✧九十九路の羅針盤【illust/60865485】
「私にはまだまだ知らないことが沢山ある…とても素晴らしいことだわ。だって出会いが沢山あるってことだもの!」
「花たちに混じって舞うのはとっても楽しいわ!歌声に合わせてステップを踏んでみて、身体が軽くなるんだから」
「愛情の形や表現なんてそれぞれでいいじゃない、そう、いいのよ自由で」
✧今期代表 ロサメルテア
年齢:18歳 身長:158cm 一人称:私 二人称:あなた
長となってまだ日は浅いものの、先代の仕事をよく観察しており、
またよく気が利き民の話を積極的に聞き出して要望を叶えるよう努めるなど奮闘中。
妹からの手紙が届くのが日々の楽しみ。
✧前期代表 ウィリフォリア【illust/62578042】
「フィリアママ。あなたの意志は私が継ぎました。危なっかしいかもしれないけど、見守っていて」
前期絆相手 レベッカ様【illust/62575257】
「大好きなレベッカママ。この森に光を、華をありがとう。」
「あなたたちが来るとわかると、みんなとっても明るくなるのよ」
今期絆相手 オルガ様【illust/62896110】
「可愛いオルガ。あなたが主役としてステージの中央に立つのがとても嬉しい」
「ねえ次に帰ってくるのはいつ?手紙だけじゃ足りない、あなたにお話したいこと、たくさんあるの!」
✧海漂森珠アルニラグローブ
リアンノードの一座が興行へ来る際は、森をあげて大掛かりな飾り付けで華やかな場所になる。
ガラスと螺鈿、また森に自生する白い花たちを利用した飾りが施された集落が美しいと評判。
✧素敵なご縁をいただきました!
戀い襲の国ルピネラ 元舞手 «若風» ヒエン様【illust/62936214】
***
強い瞳をしたひとだった。
見かけない服装に風貌で、すぐにとても遠くの国から来たのだとわかった。
聞けばそのひとは遊学しているのだという。
この森の話を聞いて、足を運んでくれたのだと知って嬉しくなりつい饒舌になる。
「100年くらい前まではただ海底で揺られてるみたいに日々過ごしていたのだけれど、曾祖母が外の人と結ばれたのが切っ掛けになって拓いていったんですって」
「わずかに土の集まった、小さなところで農業を営んで、螺鈿や硝子の細工を作って、たまにリアンノードが来てみんなで飾り付けてお祭りになって。
外と繋がるたびに豊かになったって母が言ってた」
「私たちは変わっていくことに抵抗がなかったの。水は同じところに留まり続けたら澱んでしまうもの。
そして海を進む波がひとつの形にとどまらないように、この森もまた時代と共に移ろいでいく」
私にとっては当たり前のことだった。
だけど彼はどんな気持ちで聞いていたのだろう。
*
共に過ごすうちに自然と距離が縮まっていった。
静かな夜に、森の上へと誘う。穏やかなさざ波の音がして、涼しい風が抜けていく。
外から来た人にほとんど聞かせたことのなかった昔話。
「元は真珠貝なんだって子供の頃に聞かされてた。
その昔、陸に焦がれて水の路を登っては流されて帰されて。
諦めきれずに月に願って、人の形になった。
だけども月に願ったことに太陽が嫉妬して、私たちを昼の光に弱くして深海みたいなこの森に住まわせたんだって」
「あなたの国のお話は、焦がれたのは月そのものだったのね。
この森の一番高い木よりもずっと高いところから見る月はきっともっと近くって綺麗だわ」
「ずっと不思議だった。海は居心地がいいから。
でもなぜあの貝は陸に焦がれたのか、あなたといるとわかる気がする」
*
激しい夕立が葉を打つ音がする中で、部屋の明かりも灯さないまま。
私は子供みたいに泣きじゃくりながら彼の背にしがみついて、何度も何度も名前を呼んだ。
漏れる声は吹き荒れる風が閉じ込めて、このとき確かに私の世界はふたりきりだった。
*
彼がこの森にいたのは長いようであっという間だった。
別れがつらくて、つい言葉少なになる。
木漏れ日の降る桟橋で知る彼のこと。
こうして彼の内面をちゃんと聞くのは初めてな気がする。
旅人の詮索はせずに受け入れるのが、この森だから。
彼の言葉に「だけどあなたは私にも皆にもずっと優しかったわ」と言うとそういうところを気をつけろと言っているのだと笑った。
その声も触れる指も優しくて、ちっとも説得力なんてないのに。
そして彼に渡したピンクブルー。
子供の頃から宝物だった、妹がまるであなたのようねと言ってくれた花珠真珠。
そんなことはひとつも告げなかったけれどこの真珠に誓いを立てるその意味をきっと彼は気付いていたのだろう。
行かないで、と我儘を言えるほど子供でもなく、
またね、と笑顔で約束できるほど大人でもなかった私は、
ただ心の内を晒して一言寂しいわ、とこぼすのに精いっぱいだった。
あのキスはどちらのための逃げ道?
触れた唇の熱が忘れられない
私にできることは彼を信じて待つことで、月の出る夜は森の天辺から見上げて寂しさに泣いた。
見かねた母がそっと、背中を押してくれた。
*
月満ちれば、潮汐もまた満ちていく
*
沢山話したいことや聞きたいことがあったはずだけれども、
彼の瞳を見れば再びこうして会いにきてくれたことただそれだけでもう充分に思えて、まっすぐに見つめ返す。
あのときの答えの口づけを。
拙い触れるだけのものしかできなかったけれど、これが私の全てだった。
「ぜんぶぜんぶあげるから。
あなたのために自分自身を明け渡すことも投げ出すこともこわくないから。
ただ離さないでいて。そばにいさせて。
目の前のあなたがこんなにも恋しい」
あのピンクブルーの真珠は今も彼の手の中で輝いている
***
生きていく中で、自分でも気付かないうちに纏ってきたかたい殻を、私たちは否定しない。
だって柔らかなままで渡れるほど、海は優しくないから。
でもね、ただ、ただひとりでいいの。
ふとのぞいた殻の中の柔らかなところを、優しく触れてくれるひとがいたらそれが幸せ
そうやってお互いに支えあって暮らしてきた。守りあって生きてきた。
それが私たちなりの誰かを愛するということ。
ねぇヒエン、あなたにとって私はそんな存在になれるのかな。
2017-05-22 17:46:40 +0000