九十九路の羅針盤 - the compass of 99 Roads -
(しぃっ
知りたがりは死にたがり。
花愛でるには無用な野暮よ――)
沈黙の国 くちなし
金融業と花街で栄えた国。
一面の金色にふわりと跳ねる毛玉を追って
気づけばやれ 路は既に彼の国に続いている。
住人は皆、許された場所以外では口をきかず、琴や鈴で意思疎通する。
しきたりを知らぬ外人(ソトビト)が無闇と騒がしくすると、
いつの間にか姿が見えなくなるという噂があり、影では"拐かしの里"とも呼ばれている。
民の半分は、拾われ子や、どこからか流れてきた者で、親が無い者も多いという。
淡々としているが、実は寂しがり屋で、一度懐に入れた者には情が深い。
戀い襲の国と路が繋がったことで、妓楼の芸事も少しずつ変化を見せた。
芸妓の舞や、色とりどりの紙を用いた遊びを楽しみにする客人が後を絶たず、商売繁盛。
ルピネラの自然を気に入り足を運ぶものも増え、
一仕事終えた客人が、妓女を引き連れ湯治に行く姿も珍しくないとか。
木蓮 - Mokuren -
くちなしの当代斎主。朗らかで世話好き。
若い頃にルピネラの娘を妻に迎えたが旅先の大火で故人となり、それ以来独り身で通している。
先々代斎主が世話をしていた妓楼の現顔役であり、国内最大手銀行の頭取代理。
中々姿を見せぬ頭取の「あくまで伝令役」という本人の言に反して、
おおらかな気質と親しみやすい人柄で、住人からお客様に至るまで、広く顔を知られている。
かしこまった場に引きずり出されることもあれど、堅苦しいことは苦手。
姐さんの話し相手や、舞手の身繕い、裏方仕事が好きで、側仕えの者にはよく叱られている。
近頃は、どこからともなく彼の元に届けられる文が噂となっている。
さては意中の姫君かと問われれば、さて、と首をひねるのみ。
歴代斎主には及びもつかぬ、人がいいだけの御仁だと侮る者があれば、
妓女たちは顔を見合わせくすくすと笑い声をあげる。
「――ええ、ええ、ほんとうに。そこがまたよろしいでしょう」
瞬きひとつ分の沈黙に隠された真実はいかほどに。
「頭は悪いが、一度見た顔は忘れませんや。
20年ぶりですか。どうぞ心置きなくお寛ぎください」
「俺ぁ、金儲けやら心理術やら、そういうのはてんでだめだ。
姐さん方にも勝てた試しがねぇや。
代わりと言っちゃあなんだが、仲間や部下には恵まれてるもんで、なんとかやれてるよ」
「だもんで、あの方のお考えなんざ想像も及ばねぇが、情の深いお方だ。
悪いようにはなさらんだろう。あとは、ご自愛くださることを祈るばかりだな」
年齢:38歳 性別:男性
ステータス:強靭 17 / 知識 38 / 器用 20 / 機敏 10 / 幸運 15
一人称:私、俺 二人称:◯◯様、◯◯の旦那
親しい間柄の者にだけ「フク」と呼ばれている
「こんな格好ですまない。どうも堅苦しいのは苦手でね」
えん えん えん
あかごに ちちを
むすめに はなを
おとこに さけを やりましょう
ぬしには なにが ありましょう
ほねものこらぬ こえひとつ
∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞
◆ 先 代 ◆
杜若【illust/62275494】
戀い襲の国ルピネラ 舞手候補 «花泪» ノア さん【illust/62578025】
∟今期 元舞手 «若風» 飛燕 さん【illust/62936214】
「こぉんなチビ助だったのに、立派になっちまって。
へそを曲げた姐さんたちを俺に押しつけて出てったこと、忘れちゃいないだろうな。
貸しはそのうち耳を揃えて返してもらうぞ ――なぁんてな。思うままに羽ばたき風を起こせばいいさ」
◇ 絆 ◇
記録者 キオウ・ユルハイネ・ディーナロアさん【illust/63027942】
どこからともなく現れ居ついた子ども。そう、子どもだ
姫さんらに耳にタコができるほどに聞かされたルピネラの姫の話を思い出す
ああ、そういえば、あいつもあの話が一番のお気に入りだったか――
何度追い払っても聞きやしない
姫さんどころか野郎までもが面白がってお膳立てしようとするわ
先生という呼び名も、むず痒くて逃げ出したくなる
うっかりと愚痴めいたものを書いて送れば、いずれ降参するよと
聞いたこともないのに、柔らかな声が聞こえた気がした
「貴方のようになりたい」
全く理解に苦しむが、苦しむ、が、が、だ、これが初めてでもない
同じように側に置けと言い寄る輩を、何度追い返したことか
それに、こいつの見目は良くない
もし受け入れてしまえば、面白おかしく噂をする者も多いだろう
ならば噂となる前にしかと形を作ればいい
そう囁いたのは誰だったか
「どうしても、と言うのなら、下働きとその主として」
「お客様の前では、木蓮様、と」
知りたがること、まことを求めることに、否やはない。
真実は金、されど毒
それゆえに沈黙の内に預け秘して安堵を得ようとするのだ、と
やがてあの子――否、彼は気づくだろうか
『変わる、かぁ。
変わらないことを望まない場所だってひとつくらいあっていいんじゃない、ねぇ――?』
今日も別嬪に仕上がったな
元がいいもの、当たり前じゃない
いつもの掛け合い、いつもの空気
嗤う女の背を見送れば、いつしか
"いつも"になってしまった"白"が目の端にうつった
2017-05-20 14:35:08 +0000