【九十九路】白の標本録【第四期】

倖路
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◈九十九路illust/60865485

集めた宝物を箱にしまった。大切に鍵をかけて。
けれど、いつの間にかその箱も、鍵ごとどこかへ無くして忘れてしまった…。
此処はそんな忘れてしまった記憶の欠片達が集まる、誰かのかつての宝石箱。


◇"白の標本録"エミリアン・レコーズ
50pt [強靭:0 知能:15 器用:15 機敏:0 幸運:20]

◇エミリアン・レコーズ / 男性 / 外見年齢16歳 / 165cm
標本館『エクラン』を営む少年の姿をした記録の管理者。
穏やかな性格で丁寧な言葉で話し、見た目は幼いが大人びた雰囲気も持つ。
彼自身の存在も想いや記憶の標本に心が宿り人の形として目覚めた者。
"心ある白き標本録"である。

◇標本館『エクラン』
名の通り記録が集まる【宝石箱】であり、それを観る事が出来る【銀幕】でもある。
懐かしさを感じるその館内には零れ落ち流れ着いたもの…様々な想いや記憶の標本達が並ぶ。
館内にある標本の他にも依頼を受けその想いや記憶の標本も作製している。
幻のような光る白い蝶を追いかけて行くと、気付けば標本館の扉の前や館内に立って居るらしい。
時が止まったかの様な館内は『まるで白昼夢の様だった』と訪れた者は語る。

◇白の標本録
『白の標本録』と呼ばれる記録魔法やそれを使う記録の管理者の名称。
白色の髪持ち、想いや記憶の欠片を魔法で形にしたもので標本を作る。
記録の形は植物・蝶・色・鉱石等その中の最も印象的なイメージが形となる。
記録者はその標本から想いや記憶の記録を引き出し観る事が出来る力を持つ。

* * * 

◇素敵なご縁を頂きました!(5/13)
ソアレさん【illust/62802222

◈Record:Ⅰの記録

――それはある記録を見ていた時だ。
そこには互いに手を繋ぎ、あたたかいと言って笑っている誰かが映っていた。
ふと小さな疑問が芽生え、自分に触れてみるが感じたのは硝子の様な冷たさだけで
僕は、ヒトの形をしているけれど中身はそれではないのだろう。そう思った。

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その日、小さな足音が館内に響いた。
「ようこそ小さなお客様。標本館『エクラン』へ」
お客様それとも迷子だろうか。足音の主の視線に合わせ話しかけると、その丸くした瞳からぽろぽろと涙が零れたのが見えた。
「ごめんなさい、驚かせてしまいましたか?初めまして、僕はエミリアンといいます」
「良ければきみの名前を教えていただけませんか?」
それは白い蝶に導かれた、小さな出逢いだった。

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迷子にならないようにと、小さな手をとって館内を案内する。手を差し出した時、その子は驚いた様子だった。
「ここにある標本達は想いと記憶の欠片から作られているんですよ」
記憶を見る事も出来る、そう説明するとその子は少し考えてから自分の事を話してくれた。
『ソアレ』と名乗ったその子は、どうやら僕と同じ『元々ヒトではなかった者』らしい。
気付けば自分もそうなのだと、此処に並ぶ標本達と同じなのだと伝えていた。
どこか自分と似ているこの子の力になりたかったのかもしれない。

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ふわっと青色が目の前に広がり甘いような懐かしいような香りがする…ああ、これは花だ。綺麗な青い花。
蝶々のようだから好きかと思って、そう笑うソアレの笑顔を見て自然と笑みがこぼれた。
あの日から標本館に響く足音がひとつ増えた。自分一人だけではなく、まるで弟の様な友人と過ごす毎日。
その時間はとてもあたたかく、自分の中の世界はこの標本館と記録の中の世界の景色の欠片だけの僕にとって、
ソアレの話す故郷である水の国の話はとても楽しく、外の世界への興味も芽生えた。

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「ぼくの骨のむかしを見てください」
そうお願いしてきたソアレは決心した表情で僕を見た。
本当にいいんですね?そうきくとソアレは力強く頷いた。この子の中で気持ちは決まったらしい。
「わかりました」
そう言って僕は白い鍵を取り出した。
鍵を近付けると目の前に、ほのかに光る鍵穴と映像フィルムのような無数の帯が現れ
開錠すると、光の帯がふわっと広がり、二人の目に記憶の記録映像が浮かんだ。
ソアレ、君はこの記録を見て何を思い出し、何を思うのだろう。

「僕の手は少し、冷たいかもしれないですが…」
そう言って、初めての触れる感覚を確かめる様に優しくそっと手を繋ぐ。
繋いだ手から体温が伝わる。小さなその手は…
「…とても、とてもあたたかいですね。ソアレ」
手を繋ぎながら、僕はあの時に見た記録を思い出した。
ああ、本当だったんだ…人と手を繋ぐ事はこんなにもあたたかい…。
小さなその手から伝わる優しい温もりに、いつの間にか目に涙が溢れていた。

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今日もパタパタと標本館を訪れる小さな足音と影がひとつ。
「おかえりなさい、ソアレ」
いつか君は旅に戻り此処から旅立つのだろう。
この手の温もりが離れていってしまうのは少し寂しいけれど。
君の成長と君が話してくれる旅先の話が今からとても楽しみなんです。
ソアレ、君が帰ってきた時はまたこうして「おかえり」と言ってもいいかな

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2017-05-10 11:20:59 +0000