◇九十九路の羅針盤【illust/60865485】へ参加させて頂きます。
⦿Epigeniea(開扉国)
25 -> 強靭:4 知能:9 器用:2 機敏:1 幸運:9
海に浮かぶ島。道の突端、終点。
波と風が入り乱れた海域にあり、たどり着くには島の一方向から近づくしか手がない。
黒い木と黒い山と白い砂浜と白い崖壁と門がある。
現在はsedrieの時代の情景を映している。
sedrie(下天の王)
[Epigeniea歴代最後の王。
悪化した国勢を憂う、心優しき人。だったかもしれない。最後ぐらいそんな王だったと思っとこう。どうせ記録はないんだし。
それまで現人神とされた王族で始めて「下天人」を名乗る宣言で有名。
王族の価値が落ちきった、そういう時代の王。亡くなる以前、王位を譲ったという噂がある。 享年40。病死。 ――clieb]
⦿
前期絆相手様:聖白国/聖 禾綺 雪祁様【illust/61307361】
[王の道を選んだ貴方に、共感と畏敬の念を抱きます。PNはその道を選んで欲しくはなかったようですが、覚悟に応える事で感謝を示そうとしたようです。]
前期絆相手様今期:聖白国/聖 檡途 秦様【illust/61948335】
[高潔にして崇高なる王よ、格別なるこの日に祝いの杯を献上し申し上げる事、真に喜ばしく存じます。
風に伝わる新たな白き王、その御名に覚えがありました。参内は叶いませんが、この便りを祝福の代わりとさせて頂きます。
陛下の増々のご健勝とご多幸を。永きに渡り御在位されますよう、衷心よりお祈り申し上げます。]
前期:pren【illust/61246001】
✡絆
幽霊艇ウミボウズ 操舵守 巫瑚竜『シャウ』様【illust/62046192】
その日Epigenieaは完成した。
沈黙の幕が払われ、現れたのは、竜を従える女王の姿だ。
厳かに、王を称える国歌が流れる。歴史の浅い現王家の治世にあって、その歌は王の権威を確とする、最も尊き、そして、私の好きな──。
◆ ◇ ◆
その報は港より突然届いた。
往来で荷馬車の横転、死者の数、港に異国の船、乗員の数、北の国境にて勝利、勲章の数。
大臣はいつもこちらを伺う。問われる言葉も、返すべき言葉もわかっている。全てそのようにして、眠りについた。
港の騒ぎを納めるのが難しいようだった。多くの時間を費やす事となった。
こんな事は過去にあっただろうか。記憶にはない。
報告はいつでも同じ、皆の意見は分かれる。
混乱だ。誰かの一声が必要だった。もちろん、役目は決まっている。
「余が出よう」
皆の安堵する顔が見える。
その時、慣れぬ声音で誰かが囁いた。まさしく神の子、と。
夜半、床に就く前は記録を解きながら記憶を辿る。どこまで覚えがあるか。どこから違っていたか。
天の使い、そう報告があがる事もあった。その声音が揺れていた。興奮と歓喜。目が合わない。
恩師が突然連絡を寄越した。貴方はこれを知っておくべきです。早く報せたかったんですよ。
いつもの気楽な振る舞いにも不安が。視線が逸れる。
相手方に書を認めた。拝啓、略、敬具。
-追伸 当日は良き日和となりますよう。心よりお祈り申し上げます。
◆ ◇ ◆
聞いていた通りの容姿。
皆がなぜ、君らに危害を加えぬか、なぜ海向こうの者と区別出来たか。一目瞭然だった。
私も少し......囚われた。
今、私は試される立場にいる。
あの瞳は何を見るのか。海を知らぬ私にはわからない。
それでも、胸が踊る。御使いの竜のその力に。
竜は天より下り、王に献上された。
そうしてあの狂乱は始まった。
見えぬ災が、我らを損なう炎が、海原を渡り影を残す鳥が街を人を壊して飛ぶ。
霰の鉄が織りなす火の演舞は伝説に聞く不死の歌鳥のようだった。
その中に、見慣れぬ碧き希望が踊る。あるはずだった、なくすはずだった夢を奪い返す。
その度に声が湧き、皆が……見てしまう。あるはずのない夢を。
外れた役目は手の届かぬ高みへ、私の成す全てが皆を天へと導いていく。
王笏の示す先、遥か覗く未来はいつの間にかすぐそこ。風が巻き、いつか、海は凪ぎ、災は掻き消えた。
そして、夢は叶った。
神の子は降り、傍らの竜の祝福を一身に受けた、永劫続く國が生まれた。
―ここからは現実だ。
「甦る国など、とうに御座いません」
「国民の皆様の念願と弥栄は、 覚えておられますか、 何時かの折に潰えてしまいました。取り戻す事は叶いません」
「皆様、此度の夢は如何でしたか。この世に再び甦る、その希望、悦び。一時でも差し上げられたなら、幸いでございます。けれどそれは、全て嘘で御座いました」
一筋の弾丸が王を貫きました。
けれど幻の王は倒れる事なく、立っていました。
神の子。
声がする。
「終わり方はご自分でお決めください。それがわたくしから、皆様への最後の祝福です」
王の言葉は国民全てに染み渡り、やがて膨らみ、混乱の坩堝と化した。
皆が走り出す。この国の終焉へ、覚める夢から逃げてゆく。
滅んだ国の終わりは、やはり活気に満ちた、あの街のよう。
「…シャウよ。ここまで共に歩んでくれた事、感謝する。さすがに今回は肝が冷える。どこで破綻してもおかしくはなかった。
だが漸くわかった。余には覚悟が足りていなかったと。清々したよ。これで悔いなくあちらへ行ける」
父上が隠れられた時、最初にさせられた事がある。民への媚と謝罪の言葉。
それがsedrie王の初めの言葉。
全て用意された、そのままの人生であった。
余の言葉には誰も耳を貸さなかった。
「私には君が必要だったのだ。地へ伏した王も再び天へ上ってゆけるなら、と……それにしても見事な物だった。この国を見せてやるつもりが、私の方が君に魅せられてしまった。…生きて出会ってみたかったものだ」
「少々騒がしいが、私は眠るとする。このままこの国を見届けても良い、島を後にするのも良いだろう。島に囚われる者もいるらしいが、君はそうではないだろう?」
「君はどこへでも、漕ぎ出せるのだな。ああ、晴れやかだ。私にも遺せる物があった。君が運んでくれると嬉しい。私の届かない路の果てへ」
鳥が歌いだす。
白い岸壁に杖が刺さっていた。
2017-03-17 18:18:12 +0000