こちらの企画に二人目を参加させて頂きます。
花冠を戴く者【illust/55830776】
第一期【illust/56903115】
「ああ、どうして僕が幸せになることを望めるだろう。どんなにあなたを愛しても、目が覚めたら殺してしまっているかもしれないのに。」
■ルーキス lucis
一人称:僕
二人称:あなた
男性/70歳/陽の国/占術師
「因果応報」
♡素敵なご縁を結ばせて頂きました!
閉じた世界に差した光 ヤシュムさん【illust/57353013】
何もかもから目を閉ざしていた僕に差した、外へ導く光。
見えなくなった何もかもを、もう一度見える所へ連れ出してくれた人。
◇
気が付いたときには故郷から随分と遠いこの国でひとり、薄汚れた服で立ち尽くしていた。
伝え聞けば、勇者が現れ、魔王を打ち破ったという。
頭の中はぐちゃぐちゃで、それなのに、ただ自分の行いを覚えていた。
吐き気がするほどに何度も思い返される感触から逃れたくて、行きついた先。
その廃教会でただ、信じてもいなかった神様に縋りつくように祈った。
同胞を殺しました。
抵抗のない子供を殺しました。
またいつか、僕はあのような所業を行ってしまうのですか。
◇
「っ、え…あ、!
…ごめん、なさい。…大丈夫。大丈夫だから…」
それは光の蝶が照らす、仄暗い教会の中。
不意に現れた少女に、全身が強張るのを感じた。
――また僕は、ひとを傷付けてしまうのではないか。
「……ええと。何かご用、ですか。」
短く答え、早く立ち去ってくれることを願い。
目を見ることは出来なかった。
◇
「食事を、?…はは、あなたは物好きだ…。」
「…ああ、その…んん、言いづらいんだけど…いや、あなたの料理は、その、とってもおいしそう。
…ただその、僕には、お肉を消化する機能がないというか…ごめん、なさい。」
誰かの手料理なんて何年ぶりだろう。
いいや、それどころか、親の料理以外で誰かに作ってもらったことなんかあったかな。
祈り、罪悪感に潰され、『美味しいもの』を食べたいとも思わなくなっていた。
…嗚呼、なんだろう。
彼女は、とても暖かい。
(いけない。忘れたのか、自分のしたことを。)
(…自分がまた『ああ』ならない確証なんかどこにもないだろう。)
(彼女を遠ざけなければならない。僕には、人と関わる資格などない。)
「…もうここにきてはいけないよ。悪い魔物が、出るからね。」
◇
結論を言えば、どんな脅し文句も彼女には通じなかった。
優しく笑いながらまた訪れる彼女を見るたび、嬉しくて、恐ろしかった。
「…僕はあなたの思うようなものじゃない。
ただ…そう、ただ…僕は罪人で…だけど裁いてくれる人は居ないから…こうして、贖罪を。」
「…あのね あなたが、あなたまでが、僕の罪を、一緒に背負うことなんて、ないんだよ。」
拒んで、逃げ出したかった。
暖かい手で涙を拭ってくれる幸福を享受し続ける自分が、許せなかった。
お願い許して、許さないで。
僕が幸せになりたいなんて、願うことがおこがましい。
◇
何も見えないほど苦しかった。
例えばそれは、暗い暗い海の底で溺れているようだった。
押しつぶされながら、消えたくなりながら、救われたいと心から願っていた。
――もう、いいかな。
ほんの少しだけ顔を上げても、神様は許してくれますか。
◇
優しい手を、握り返す。
嗚呼、――ああ。本当はずっと、この手を取りたかった。
「…今はまだ、恐ろしい過去を振りきれない。
だけど…あなたの声に…あなたの言葉に、応えたい…そう思うよ。」
大丈夫。魔王はもういないのだと、自分に言い聞かせる。
僕の心は、僕のものだ。
もう支配は、とうに尽きている。
だから、伝えなければ。
「ヤシュム。…あなたが居なければ、僕はきっとずっと暗い場所に居た。
ありがとう…そしてどうか、願わせて欲しい。
あなたの永き安寧と、その安寧を僕が守ることを。」
「どうか、あなたの隣で生きる許可をくれないか。」
―――神様、神様、この世界を救ったという、勇者様。
僕はきっと、生涯この手に残る罪悪感を抱えていくでしょう。
だけど、だけど――もう、逃げないから。
罪と向き合い、目を合わせて、生きていくから。
だから、ほんの少しだけ救われることを。
彼女という光を愛することを、許してください。
■種族
闇喰みの民(やみはみのたみ)
霧の国に住む「光」を食し闇を産む種族。
正確には光を有形化する魔法を代々受け継ぐ一族で、どんな形にすることもできるが大抵は鳥や蝶を象り外出の際連れ添う。
この魔法がカンテラ代わりとなるため、カンテラを持ち歩く者はあまり多くはない。
光を食す行為を行うことで、光のない場所でも自身の食した光を吐き出し有形化することができる。
栄養にはならず、蓄えるといった形が正しいといえる。食事は菜食寄り。
「闇喰み」とはそもそも誤用で、「光喰いの民」と呼ばれていたものがいつしか連れ添う光の魔法により闇を払うものと誤解され、「闇喰みの民」と呼ばれるようになった。
彼らの一族の多くは魔法を扱い、魔力をエネルギーとする兵器の生産や銃などの武器の生産に携わってきた。
霧の国を攻め落とされた際一族の殆どの者が魔王に操られ、また残った一族は操られた者との戦いに応じた為生き残りはごく僅かとされる。
寿命は200年程。
ルーキスから始まった信仰は彼の勇者を神とするもので特に大きな禁止や推奨はなく、強いて言うなれば道徳的であることを規範とした教えの内容になっている。
※闇喰みの魔法につきましては指標程度ですので、ご自由に解釈して頂いて大丈夫です。
■スキル
闇喰み:
光を操る魔法。光を生物の形などに有形化させ、従えることが出来る。あくまで生み出すのではなく操る力なので、元となる光が無ければ扱うことは出来ない。
救いの祈り:
祈りによって小さな災厄を退けることができる。一度の祈りにつき一度しかその威力は発揮されない。
■子供達
息子 オラシオン【illust/57712667】
「聡明で信心深い、いい子に育った。旅に出ると言われた時は驚いたよ。
今では時折僕が彼に叱られることもあるからね…もっとしゃんとしないといけないなあ。」
娘 バルジャさん【illust/57864308】
「心の綺麗な優しい子だ。沢山の人と関わりを持ち、前を向いて生き…とても、心根の明るい子に育った。
ただ、一人でも町中歩き回っているようだから心配でね…。」
よろしくお願いします!
2016-06-15 13:42:54 +0000