企画:仁本物語弐【illust/52333018】
「あなたの見ているものはなぁに?」
◆あかね/半妖(付喪神+化け狐+人間+古椿の霊)/16/154cm/あかね/あなた
建前を飛ばして本音を聞く耳と、ものの本性が見える左目を持つ半妖。
右目には、大切に想うヒトの見ている世界が映る。
婚姻前は母の持つ認識や価値観を反映した景色が見えていたらしい。椿を見ると嬉しい。
本音が聞こえる耳や本性が見える目について
ヒトと違うことは自覚しているものの、あまり気にしてはいない。
多少ずれたことを言っても、母譲りの明るさで見逃されているところがある。
垂れた狐の耳と3本の尾を持ち、尾と髪の先が雲状に溶ける。
尾の間には、野路菊の花が咲いている。
現在は父の後に付いて探偵見習いをしている。
迷い猫探しが得意。
甘いものは勿論大好き。
◆家族
父(半妖):ゆき乃【illust/53824764】
「父さまのように難しいことはわからないけれど、迷い猫探しはあかねのほうが上手よ!」
母(半妖):夢椿さん【illust/53868425】
「右の目で見ると いろんなものがきらきらして、やさしそうに見えるの。これがきっと、母さまの見ている世界なのね」
姉:つゆ椿さん【illust/54601312】
「飴をくださいな。ねえ、向こうの通りに新しい甘味処ができていたの、今度のお休みに姉さまと行きたいわ」
◆素敵なご縁をいただきました!(01/08)
放っておけない 夜衣椿さん【illust/54364762】
椿の所為かと思ったの。
でも違った。ひと目見ればすぐにわかった。あの鏡は、あかねと同じ。おんなじ、なのに。
「ううん、違うの。あなた、見かけないひとね」
哀しかった。
揺らめく炎以外、なにも映さない鏡が。
着物でも着替えるように、気軽に繰り返す死が。
自分のものでもないのに、絡み付いて離れない憎悪が。
それでも、世を過ごす為に塗り重ねた上辺が。
みんな見えた。見えてしまった。
葡萄色の大きな烏が、たったひとりで立っているのが、見えてしまった。
それが、堪らなく寂しかった。
それから、そのひとはよく姿を見せるようになった。
「えっ、えっ、あっち?もう見つけたの?すごい!」
遠巻きに見ていたり、探しものを手伝ってくれたり。
一足飛びに距離を詰めるような、人懐こい物言いも馴れたもので。
寂しいところなんか、ちっとも見せなかった。
ちょっと変わったお友達ができたみたいだった。
たのしかった。
「夜、みて」
指差す先には、夕焼けの空。
星が煌き、月が昇る前の、燃えるような。あかねと同じ名前のいろ。
見てほしかった。あかねの、きれいだと思うものを全部。ぜんぶ。
知りたかった。そのひとの目に、なにがきれいに映るのか。
気がつけば、右目はもう母の色を映してはいなかった。
やさしくしたかった。
ときには、姉さまのお店で、あかねの好きなお菓子を買っていった。
雨の降る日には傘を差して、寒い日には綿入れを持って。
伸ばしかける手が、どうしたいのかは知っていた。
それでも、その手に乗せてあげたかった。
あかねに与えられたもの、あかねのあいしたもの、
そのひとに与えられなかったもの、そのひとの手が落としてしまったもの、すべて。
「夜、あかねが憎い?」
憎かったら、たべてもいい。
知っていた。でもその後で、哀しいと思ってくれたらいいと期待した。
ひとは、きれいなばかりではない。間違えるし、嘘も吐くし、弱い。
だからこそ、好きになるのだ。弱さを知って、嘘を知って、間違いを知って。
それでも、好きになって、許すのだ。
傍に居たかった。
きっと、あいしてほしかったのだろう。
あかねの好きなもの、あいしたもの、きれいだと思うもの。少しだけでもいいから。あなたに。
鏡ではなく、夜、あなたに。
「みんなあげる。みんなみんな、あなたにあげるわ」
そうして、あなたがこの目で見たものを きれいだと思ってくれたなら。
それは、どんなにか幸福なことだろう。
ぽとり。白い椿が落ちた。
白い椿は真実を告げる。
教えて、“あなたの”ほんとうのことはなぁに?
2016-01-07 04:18:11 +0000