企画元様【illust/52333018】
「俺、夜衣椿って言うの。好きに呼んでくれて良いよ?あっ、でも"ツバキ"は無し!」
「文かな?恋文かな?ふふっ、ちょっと興味あるよ」
「だって、こういう言葉遣いの方が楽しいだろ?そうでもない?……まぁ気にしないでよ、今更戻すのも面倒なんだ」
「君、人間だろ?言わなくても分かるよ」
夜衣椿(よるえつばき)/男/外見20代/180㎝前後(本性200㎝前後)/一人称「俺」二人称「君」/葡萄色髪・黒目(左のみ)
(古烏・水釈様・付喪神・化け狐・牛鬼・雀の化け物・火の鳥・人)
鏡と不死を司る大烏の妖。宛もなく各地を彷徨っており神出鬼没。
黒く淀んだ左目は殆ど見えておらず、右目は見たものの色を映し取り込む鏡の目。
胸に携えた鏡は彼の半身。鏡面では炎が赤く揺らめくばかりで他の何者も映し出す事はない。
人懐こく馴れ馴れしい口調は世渡の為に身に付けたものであり、本質は相手を模倣するだけの鏡であった父に近い。
母より受け継いだ不死鳥の性質を持ち、死ねば記憶をそのままに生まれ直す。
何れは魂が摩耗し本当の死を迎えるが、それがいつなのかは本人にも分からない。既に何度か死んでいる。
父方から受け継がれた人間に対する抗い難い憎悪は未だに絶える事が無い。
鎮める社も縛る楔も存在しないそれは人を無差別に襲い、喰らう危険な妖である。
父親(妖怪):依紡ゐ【illust/53824899】
「父上は俺と同じだと思ってたよ、母上を連れて行っちゃうとはね
……とりあえず、母上の名前をそのまま息子の名前にねじ込む自覚の無い惚気は嫌いだったよ!」
母親(半妖):生断々原餝弥椿城さん【illust/53849565】
「母上は未だ父上の欠片の中で共にあるのかな、それで二人が幸せなら俺は良いけど
正直、あの唄が聞けないのは少し寂しいかな。俺も唄えたら気も紛れるんだろうけど、残念ながら似なかったね」
弟(半妖):生断々原餝弥貝寄風さん【illust/54620749】
「俺は自分を抑えられないからね、貝寄風はちゃんと折り合いを付けて生きているから、凄いなって思うよ」
「やぁ、久しぶり。大丈夫?あれから死んでないよね?……まぁ貝寄風なら上手く食えてると思うけどさ」
妹(半妖):生断々原餝弥袮ゐ子さん【illust/54803185】
「俺は袮ゐ子の唄も好きだよ、俺の為に唄ってとは言えないけどね」
「いつか袮ゐ子がその瞳に映しても良いって思える相手に出会えると良いね……と、長兄は思うよ!」
◆◆◆
人に近い姿と大烏の本性を併せ持つ。部分的な変化も可能だが鳥脚と尾は隠せない。
人型時の服も体の一部。父と同じく線香の様な香りを濃く纏っている。
素敵なご縁を頂きました
どうしてそんな目をするのだろう あかねさん【illust/54584949】
仄かに椿の香りがする。
ふと視線を向ければ其処には、ああ、成る程と独りごちた。
「何だいお嬢さん、俺の顔に何か付いて……まぁ付いてるけど、そんなに珍しいかな」
同時に違和感を感じる。何故そのような目で見るのか。
その鏡に映る己はそんなに憐れむようなものなのだろうか。
彼女は己に興味がある様だった。だから、己も同じ様に、興味を抱く事にした。
彼女は交わり者で、探偵見習いだと言う。探しものをしている姿をよく見掛けた。
「お嬢さん、猫を探しているのかい?だったら俺も手伝うよ、空からも見た方が早いって!」
そうして彼女と時間を共にする時、己は楽しいと感じた。だから彼女が楽しんでいるのだろうと思った。
「似たようなものじゃなく、同じものだったんだね」
彼女は己の所作が虚しいと、己の所以も分からぬ憎悪が悲しいと呟いた。
祖は同じものである筈なのに映さぬ鏡面が寂しいと炎の揺らめくそれを指した。
それでも、己を咎める事は無く、己の建前に付き合った。
何故そんな事をするのか、何故そんな目で見るのか
「君を見ていると喉が疼く」
彼女にとっての己は、同じ鏡より分かたれたものというだけでは無いのだろうか
己は彼女を映しているだけではないのだろうか。
彼女は己に様々な綺麗を見せたがった。
彼女が綺麗だといえば己も綺麗だと返した。
それが真実なのか、模倣なのか、最早分からない。
彼女には分かっているのだろうか。
己の世界に綺麗はあるのか、ふと考えてみれば一つ浮かんだ。
椿の香りのする鏡。
傍でその言葉を聞き、空気を感じる程に、違和感は募り
漸く理解する。彼女は人を映し過ぎている。彼女は己とは違う。
これは最早人間だという声、その首に手を伸ばしそうになる、彼女は己と同じだと言い聞かせる。
こんな胸の内すらも悟られていると思うと、感じた事の無い澱みに己が侵されているような錯覚を覚える。
「君には全て見えているんだろ?おかしいな、どうして傍に居られるのかな……ああ、苛つくな」
彼女が悪い訳ではない、己が離れれば良いだけの話。
一度死んでしまえば見失ってくれるだろうかと考えた日もあった。出来なかった。
離れる事を考える度に声がするのだ。
彼女が欲しい。
それを言ったのは怨嗟を吐く者では無い。
「あかねが朽ちる時が来たら、その全てを、その目を頂戴」
では誰の声だろう
己にはよく分からなかったよ。
君が生きている内に 愛していると 伝えたかった。
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2015-12-31 15:02:47 +0000