【仁本物語弐】四方山彼方【第参世代】

オトンヌ
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 「いらっしゃい、ゆっくり見ていってくれて構わないよ。」

こちら【illust/52333018】の企画に新規家系参加させていただきます。

➷四方山 彼方(よもやま かなた) 外見年齢20代前半 男 身長184cm
 種族 妖怪(しゅのばん)
 一人称:俺 二人称:お前さん 
 骨董品を扱う店を営む男性。店の中には壺や古書など、仁本のものを幅広く取り揃えている。
 あまり日のもとに出ることは少なく、色白でいつも血色が悪い。
 不気味な容姿とは裏腹に人当たりがよく、優しい言い回しをするために、
 大通りから一歩入ったところにある店だがそこそこのもうけを出しているとか。
 独占欲が強いため、本当に気に入ったものは誰にも触れさせないようしまいこむ。

 「なあに、俺みたいなやつにはこの薄暗い部屋が似合いなんだよ。」
 「奥の部屋?ああ、悪いね。そこは倉庫でお客に見せられるような場所じゃないんだ。」

 ある月のない晩。
 男が酔いを醒まそうと近場を散歩していれば、骨董品屋の赤い後ろ姿。
 「おお、奇遇だな。アンタも酔い醒ましか。」
 ポン、と後ろから肩を叩くと、振り返った顔はいつも隠れている瞳が露わになっており、その光のない目がすぅっと細められた。
 『俺を見たな?』
 冷たく響く一言を聞いたと同時に、男の意識は途絶える。残ったのは上機嫌な店主と、男の亡骸だけ。
 店主の持つ壺の中には、かつて男だった魂が入っている。


 『しゅのばん』
 会った相手の魂を抜く妖怪。

 『四方山 彼方』
 人間を装って骨董品屋を営むが、それは新月の晩以外の暇つぶし。
 新月の晩に片目を出して散歩し、その際に目があえば、「会った」と認識して相手の魂を奪ってしまう。
 魂を集めることが好きで、誰にも見せない店の奥に並ぶ大きな甕に貯蔵。
 愛する人が出来、用意している特別な壺に入ることを望んでいた。

➷関係者様
 片割れ 四方山春過さん【illust/54110376
 「ハルー、最近どう?捗ってるか?今日はなー、自慢したくて来たんだ。
      ……ほら、どうだこの魂。でかくてどす黒くて、まさに傲慢な人間でしたってのがわかって良いだろう?」

➷素敵なご縁をいただきました!
 暁月さん【illust/54047828
 いつものように暇な日を店で過ごしていたら、なんとなく調子が悪くなった。
 久方ぶりに風邪でもひいたかな、と思ってふと思い浮かんだのは先日買い物をしていった客のこと。
 薬屋をしているという事だったから、買いに行ってみようか、と気まぐれに足を運んだ。

 薬を買って少ししたら、今度は別の症状が。こりゃあ合わなかったのか?ともう一度。
 それでもらった薬を飲んで居たら、まぁた別の症状が現れた。そこでやっとわかったんだ。
 この調子が悪くなっている原因は、あの女だってね。怒る?いやいや、何も言わないさ。
 幸い、人間と思ってくれているのか軽いものばかりだから、騙されたふりをしておこう。
 丈夫な妖怪の身体とも知らず、何度も何度も病を与え、探るように店に来る姿はとても面白いんだ。
 全く、不思議なお客もあったもんだと思っていたら、行き来するうちにどうも違う思いに変わっていったらしい。
 こちらをまっすぐに見る瞳にやられたのかもしれん、あいつが欲しくて堪らなくなった。

 どうやって俺だけのものにしようかと考えていたら、向こうから知りたいと言ったからこう答えたんだ。
 「もっと近くで俺のことを見られる場所を特別に教えてあげよう」ってね。

 甕が並ぶ奥の部屋は、はじめこそ殺風景だったけれども今では暁月のための調度品が揃えてある。
 薬や病については詳しいが、恋や愛についてはさっぱりのようだから、俺の知る限りを教えて。
 相も変わらず撒かれる病に蝕まれているのを前髪の後ろに隠して、今日も笑うんだ。
 一番特別で大切なお前さんが傍に居る生活ってのは、何にも代えがたい良いものだと思うよ。
 鍵はかけないのかって?そんなものは必要がないんだから無駄さ。
 俺があいつだけを見ているように、あいつも俺だけを見ている。強要せずとも、そこにいるんだ。
 『恋人はその相手だけをみるもの』だって教えたからな。あいつの世界は俺だけいればいい。心からそう思うよ。


 「さあさあ、もう店じまいの時間だよ。それじゃあまた、会う日まで。」
 塵も積もれば山となる、弱い病とはいえ何十年も経てば丈夫な身体も限界に近付いて。
 肉体の限界が近づいたのを悟られないようにしつつ、最大の愛を伝えれば、頷く姿に愛おしさが沸き上がる。
 決行の夜、じっと向かい合って、普段は隠している瞳をさらしてから、おびえさせないよう笑って見せる。
 「俺のことだけを見ていてくれ」これからも、ずっとそばにいるために。
 力の抜けるその体を抱き留め、敷いていた布団へと寝かせる。まだ暖かな器よりも、出てきた魂へ目を奪われた。
 「あぁ、お前さんがこれを見たら喜ぶんだろうなぁ……まるで柘榴石のようだ。
  光に当たれば純真なように赤く透き通っているが、陰ではなんと欲深い…魂まで愛おしいよ。」
 美しいそれを特別の壺に入れて、それを大事に抱いて、空の器に寄り添うように横になる。

 『魂になっても傍に居ることが最大の愛情』だなんてこと、信じてくれてありがとう。
 本当にそうかはわからんが、俺はそれが一番幸せだと思っているんだ。輪廻転生よりは現実的だろう?
 新月の晩に人の魂を抜いていたのは、見られないようにするため。人のふりをしているんだからね、見られちゃ困る。
 満月の晩がいいってお前さんが言ったのは驚いたさ。俺もそうしようと思っていたんだから。
 月明かりの下なら俺のこの目も良く見えただろう、それでいい。俺のすべてを見てほしかった。

 さぁ、最後の大仕事。自分の魂を、愛おしい魂と同じ入れ物に入れて、ずっと傍に居よう。
 術のために力を使ったせいか、こぽりと口から鉄の味の赤黒い液体が溢れる。だけど、なんとか保ってくれたようだ。
 あぁ、力が抜ける……これでいいんだ、あとは子供に任せよう。おやすみ、暁月。これからはずっと一緒……だ。
 飽き、て…も足りない……ほど。伝え、なきゃ、ならな…ぃ…なぁ。愛……し、て…る……って…。

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2015-12-18 16:01:28 +0000