辺りには一面炎が燃え、黒煙が昇り、戦況は激しさを増している。
煌々と燃える炎は黄昏時のように世界を彩り、
今が一体何刻と称すべきなのか全く判断がつかない。
そんな戦場の石畳を踏む途中、ふと真白な光とすれ違う。
煙の中に、闇の中に確かに、炎の明かりとは違う、穢れのない光だった。
導かれるようにして思わず振り向いて見たそれは、少女の姿を形どっていた。
「――…カンパネラ?」
その光が本当に彼女だったのか、似ていたような気がしたのか、
それとも全く似てもいなかったのかどうかも判断がつかなかったが、
光を見た瞬間、5年前に死んだ少女の名前が口から漏れた。
少女は振り向かず、立ち止まりもせず、
溶けるように淡い光の粒になって、そこから消えてしまった。
そう、5年前に夜空に溶けた、あの娘と同じように。
闇の中に溶けて、消えた。
「ロフト、今の」
スルトの声に頷いて、そのまま天を仰いだ。
空には煌々と赤や青の星が輝いている。
世界の命運を巡る戦いに呼応しているのか、
いつもよりも騒がしく、強く光っているような気がした。
――消えたさっきの娘は、きっと彼の元へ行くのだろう。
心から愛する大切な彼の元へ。
そんなことを思いながら、息を吐いた。
我ながら馬鹿馬鹿しい下らない、と肩を落としながら戦場の方を見やる。
もうすぐこの戦いも終わるのだろう。
その先、世界がどうなるかなんてもう、
舞台から降りた自分にはどうだっていい話だ。
騒がしい地上を見下ろしながら、十字の星が赤々と燃えている。
世界の運命を決める決着の時が近づいていた。
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お借りしました。 ▼
終末の空【illust/53797069】
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うちの。▼
ローゲとスルツェイ【illust/51009821】
2015-12-05 14:45:02 +0000