「…二度、三度だろうと構わない。奴の命を奪えるのなら、私は何度だって立ち上がろう…!」
◆魔王と花嫁【illust/51208458】
◆オリガ=パルトノイエ(Oliga=Paltnoie)
一人称:私 / 二人称:貴方、君、お前、貴様(主に魔王相手)
かつて小さな町の仕立て屋の娘だった女性。
二度己の大切なものを奪った魔王と言う存在に対して並々ならぬ感情を抱く。
性格は冷徹で機械的。だが、唯一年の離れた妹の事は大切に思っている節がある。
己の全てを復讐のために捧げることを固く誓っているが、元が真面目で根の優しい人物であったためか、
心の奥底では未だ深い葛藤を抱えている。
しかし、深い憎悪と怒りから復讐の刃を取ることを止められず、
両親の形見であり、妹と刃を分け合った誓いの証でもある片刃の鋏を手に魔王の本拠へと乗り込む。
◆因縁の相手
(8.16)氷を統べる偉大な魔王:エルウィジーさん(夫殿、貴様→ガランツス、お前→エル)【illust/51694003】
太陽は未だ、昇らずにいる。
凍てつく氷が全てを覆い、何もかもを奪い尽くして行った、あの日。
闇と静寂が全てを包み、時は歩みを止め、世界は色を失った。
残ったのは凍りついた己の心臓と、亡き両親の形見の鋏。
憎悪、怨念、哀哭、残された全てを死の呪いに変え、私は復讐を誓う。
…嗚呼、太陽は沈んだまま、未だ、昇らない。
深夜、眠れない身体を引きずって訪れた郊外の丘に、其れはいた。
煌々と輝く月明かりの中、赤々と燃える瞳が自身を捕らえる。
忘れもしないその輝きは、夢にまで見たかの仇敵の物。
…あの子を奪った魔王が、其処に佇んでいたのだった。
魔王は短く、お前は我が花嫁となる、と告げると私の身体を捕え、大空へとその翼を広げた。
自分の何が気に入ったのかは分からない、…嗚呼、だがこれは、願ってもいない!
そう思い、私は懐に忍ばせた鋏へと手を伸ばすのだった。
「…オリガだ。オリガ=パルトノイエ。…だが、呼ぶ名など必要無いと思うがな。
貴様が私をここに連れて来たのも目的があるように、私がここに来たのも同じく目的がある。慣れ合いの為ではない。
そうだろう?夫殿?」
「…先程奴は何と言った、…覚えていない、だと?あの子の、私の大切なあの子の命を奪ったことを、…覚えていない?
――ッ!!…ッ!!駄目だ、抑えろ…!!まだ…ッまだ、その時ではない…!!
今はただ、この燃える激情を心に刻み付けるんだ…来るその時の為に…!!」
「…それにしても、嫌になるくらい広い屋敷だな。
奴は何と言っていただろうか…ええと、そこの角を曲がれば確か広間だったはず…(その後見事庭へ辿り着いた)」
こうして復讐劇は思いがけず幕を開けた。
…しかし最大の目的であるかの氷の魔王は、一向に隙を見せず、焦燥と苛立ちばかりが募って行く。
そんなある日、何を思ったのか自分に対して話しかけて来た魔王の口から飛び出た言葉は意外な物だった。
「土産だ。帰り道に咲いていたから貴様にと思ってな。
…スノードロップ、雪の雫…ふふっ、氷を操る貴様にぴったりな花だろう?」
「…賭、け?…何を馬鹿な事を、そんな茶番に誰が…何?…今の言葉嘘では無いな?
…良いだろう、その勝負乗った。」
「…今日は随分朝早い起床だな。
…何だその目は。笑いたければ笑えば良いだろう。負けは負け。事実は事実だ。…返す言葉も無い。」
それから、奇妙な共同生活が始まった。
単なる暇潰しだったはずの賭け事は、それだけでは終わらず別の何かに姿を変え、復讐と言う私の日常に食い込んで行く。
…何故その時に気が付かなかったのだろうか。
自身の中で決して変えてはいけない何かが、変わり始めている事に。
「…何か用か、ガランツス……は?呼び方?
急に何を言い出すかと思えば…全く、呼び名など何だって…わかった、賭ければ良いんだろう?…乗ってやるから。」
「晩酌?…断る、今何時だと思っているんだ。私はもう寝…おい、何故部屋に入ろうとしている。
は?…ここで飲めば酔い潰れても問題無い?いや、そう言う問題じゃ無…おい、待て、やめろ!
…ッ、ああもう、わかった!すぐ、…すぐ行くから、少し待っていろ、良いな?……エル。」
「気に入らなければそうやってすぐ掌を返すのか!!
なら、始めからそう言えば良いだろう!!嫌いなら嫌いだと…思わせぶりな態度なんて…ッ!?」
(…今、私は何て言おうとした?……嘘だ、これでは…まるで私が、この男のことを…ッ!)
それはまるで、天から地へと突き落とされた様だった。
電流の様な衝撃が全身を駆け巡り、汗が噴き出して行く。
…まさか、嘘だ、そんなはず、無い。
ほのかに色付いた世界から目を背けるように、私は顔を俯けると、祈るような気持ちで震える手を己の胸に添える。
掌の下で、どくんと、あの時凍りついたはずの心臓が、確かに脈打つ音が脳を揺さぶった。
…その時、私は気付いてしまった。否、気付かずに居られなかった。
己の内に秘められた、決して許されざる想いの存在を。
(いつからだ、いつから、私は、あの男の事を、)
(…だが、それでも、…それでも、私は、この刃を捨てる事は、決して、)
「…嗚呼、私の太陽は、未だ、」
◆素敵な関係者様
◇大切な妹:ナージャちゃん(ナージャ)【illust/51984833】
◆Twitter【twitter/mochimochi7110】
2015-08-14 18:52:26 +0000