◆神様の生まれた日【illust/46838532】に参加させていただきます。
◇ファルド|Lv.1|男|160cm|一人称:私|二人称:きみ、あなた
11月9日:トパーズの守護石・猛禽類の特性
感情というものがよくわからず持て余している少年。けれど知りたくて理解したくて仕方がない。
知的好奇心にあふれ機械が好き。本も好き。
◆使い魔:アルベミ
猛禽類(ミミズク)の姿をした使い魔
ファルドの側によりそいモフモフしてる。
言葉は理解しているような気がする。
◇課題:探している本「銀河鉄道の夜」
手当たり次第に探してはいるものの課題以外の本にも興味が沸いてしまいたびたび手が留まる。
◆命途について
■素敵なご縁に恵まれました
ファルドの初めての「ともだち」アリオールカさん【illust/47469320】
(あぁ、どうしましょう)
少年は悩んでおりました。
探さなければならない本があるとに、彼の目の前に現れる本達はどれもこれも少年の心を掴んでやまないのです。
こんなことではあっという間に30回の日は沈み、31回目の朝日が上ってきてしまう事でしょう。それは長い永い時間を無為に過ごしてきた少年にとって初めての焦燥でした。
(まずは課題の本を探さなくては)
気になる本を横に避け、山となったそれらに後ろ髪を引かれながら次の箱へと手を伸ばします。課題をクリアすることも大切だと思ってましたし、それ以上に課題の本の内容が少年は気になっていました。
一人一人違う本が指定されたという課題。ましてここへ導いてくれた大樹から定められた本ですからきっと少年にとって必要な本に違いないと思ったのです。それから表題の「鉄道」という単語が更に少年の興味を引き付けました。
もういくつめか、ここでみる日の数はゆうに越えた数の箱の前に立ったとき一人の少女が声をかけてきました。
「ねぇ」
その声に振り向き主を見たとき少年は海をみた気持ちになりました。見たことはないのですが。希望と絶望を孕み、沢山の人を飲み込み、それでも彼らが越えようとした広大な命の母はきっとこんな色をしているのだろうと思ったのです。
「この装飾には何の意味があるの?使い方はある?それを貴方は知っている?」
少女は少年の纏う飾りを不思議に思ったようでした。けれど少女の言う装飾がどれのことかわからず少年は少し悩んで口を開きました。
「この、顔のものは目に見えるものが大きく見えます、文字など小さいものを見るのにとても便利です。」
その時モノクルの説明をする傍らで少年は初めて自分の声を聞いた事に気が付きました。
本を探す手を止めて一つ一つ説明する少年の声に少女はじっと耳を傾けているようでした。
少年は知りたい、と思う気持ちにはとても心当たりがありましたから出来うるだけ解りやすくあまり多くない語彙から丁寧に言葉を選んで説明しました。
誰かと会話をするというのも初めてのことでしたからこれでいいのか不安でもありました。少女は言葉に耳を傾け自分の中で咀嚼するのに必死なようであまり反応を返してくれないのですから。
とはいえ少年はこれが普通か異常かもわかりませんからただただそのまま少女の蒼い目をみながら言葉を続けました。
少女は少年の言葉を聞いて飲み込んだ後少年から視線をその傍らに移して、それから少年の前に座りました。少年の後ろと左右には少年が後で読もうと選別した本が積み上げられた彼の城がありとてもではないですが座れる有り様ではなかったので。
その山のなかから手近にあった本をパラリとめくるとそちらを見たまま言いました。
「わたしは、卵の中で人がモノを作る過程を見てきた。」
少女が開いたそれは船の歴史の本でした。
少年はその言葉を聞いて今まではうろんだったのかと思うほどの表情をしてぐっと少女に顔を向けました。
「そうですか、それは素敵ですね!」
先ほどより勢いを増した少年の声に少女は顔を上げて一度瞳をパチクリさせて、それからもう一度ゆっくりと唇を開きました。
「でも、それを何に使うのか、どう使うのか……私は想像する事しか出来なかったの。貴方は卵の中で、どんな景色を見てきたの?」
「私は人が物を作り、それで夢を叶える姿を見てきました。」
二人は手を動かしながら色んな事を話しました。
卵のなかで見てきた人のこと、そのとき思った時のこと、ここに来るまでに目にした神候補のこと、課題のこと、いま手にした本のこと
二人はとても似ていて、それでいて全く違いました。これが他人というものなのだと少年は思いました。
けれどそれはとても心地よいものでした。
(こういうのを、何て言うのでしょうか)
そう思いながらもういくつめなのかとうにわからなくなってしまった箱に手を伸ばしたときそれまで静かに二人の回りの城でうたた寝と散歩を繰り返していた鵂がホゥと一声鳴きました。
驚く二人を他所に鵂は少年の手の中の本にちょこんと飛び乗りました。少年が慌ててそれをどけるとそれは柔らかな藍色に銀の粒が散った表紙の本で真ん中に細く繊細な飾り文字でそっと「銀河鉄道の夜」と書かれておりました。そう、少年の課題の本でした。
少年は急かされるようにその本を開きました。掌より少し大きな頁に小さな文字がみっしりと並んだその本はとても薄くそれがとても短い物語であることを示していました。
内容ははじめ少年が思っていた様な話ではありませんでした。鉄道は出てきますがあくまで空間で移動手段で、きっと課題でなければ読まずに戻してしまうであろう本でした。
けれどそれはきっと、今、必要な本だと思えました。
読み終わったときその本は掌の上でいつのまにかひとつの鍵になっていました。驚いて顔をあげると二人の間には遮るように二枚の扉が聳えていました。導かれるように手の上の鍵を目の前の扉の小さな穴に差し込んだときファルドは弾かれるように扉の、二枚の扉の向こうへ向けて生まれてはじめて声を張り上げて叫びました。
「ありがとうアリオールカ!君との時間はとても、そう、楽しかったです!人々を見ていたときより、卵のなかで思いを寄せているときより、本を読んでいるときよりも!ぼくの初めてのともだちが君でよかった!」
いつの間にか鍵がまわり開いた扉の向こうへ鵂が先に文字通り飛び行ってしまいました。少年は慌ててそれを追いかけました。この先に彼女はいないけれどとてもとても大切なものはこの先に持っていけることを知っていましたからなにも怖くはありませんでした。
◇メッセージ返着について
三日たっても音沙汰がない場合は不具合の可能性がありますので追ってご連絡いただければ幸いです。
■12/25までにいただいているメッセージに関しまして全てお返事いたしました。
未着の場合は不具合の可能性がありますのでご連絡ください。
2014-12-18 16:26:06 +0000