侵略者の犬

角砂糖

◆日本侵攻にあたり、自由統一政府占領政策局は日系人ならば日本人も安心すると考えたのだろう。
カズエ・メデイロス・イマムラ自身も、彼女に会うまではそう思っていた。
◆「ああ・・・これが本物の日本人か・・・」
小柄な体躯にのっぺりとした顔。細く切れ長の目………
通訳として現地徴発されてきた女を見て、犬好きのイマムラは密かに思った。
「この国のシバイヌみたいな顔だわ・・・」
イマムラの仕事は、まずはこの警戒心剥き出しの「柴犬」を飼い馴らすことになった。
◆だが時間はない。一刻も早く占領地の治安を確立することが、
イマムラたち占領政策部隊の任務なのだ。
アジア侵攻の橋頭保として、また、今後の占領政策の試金石として、
日本皇国の迅速かつ完璧な占領統治は、失敗が許されなかった。
◆「珈琲でも飲む?」微笑みかけるイマムラに、柴犬は能面のような表情で答えた。
「せっかくですがけっこうです・・・私、珈琲は飲めないので。」
「ん・・・あぁ・・・・そう、覚えておくわ」
珈琲豆の袋を棚に戻しつつ、イマムラは思った。
「・・・シバイヌは容易に馴つかない犬種だったな」          
◆「シ―バ!通訳をお願い!」イマムラは、通訳の千葉彩夏を「シ―バ」という
愛称で呼んだ。「チバ」と、柴犬の「シバ」をかけたつもりだった。
もっとも彩夏自身は、単にイマムラが日本語の発音ができないのだろうと思っていたのだが…
◆彩夏はイマムラの脇に駆け寄ると、忠実な柴犬のように凛と前を向いた。
侵略者に媚びる犬とでも思っているのだろう。
それまで脅えていた警察官は、彩夏に侮蔑の視線を向けたが、彩夏は怯む様子を見せない。
◆「なるほど……シバイヌは、熊にも挑む勇敢な猟犬だというのは本当かもしれない」
相棒の姿に勇気づけられると、イマムラは温和な表情を作り、武装解除の交渉を始めた。 続く…
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2009-04-24 16:23:06 +0000