水底の祭壇illust/110062517
を攻めるバイティングドッグスに
協力を打診する
堕魅耶illust/108973795
(※この共闘は勢力全体への強要ではなく、
堕魅耶の独断によりバイティングドッグスに
対してのみ要請したものとなります)
三勢力がぶつかる水底に、さらに雪崩れ込む存在が・・・!
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※
「ムリするナ!カイメラ、一旦下がレ!!」
さすがの光学欺瞞機能も日中は効果が薄い。
増してや、再三の爆雷攻撃に対し警戒網が敷かれているとあれば
如何なステルスワイバーケンといえども迎撃は必至であった。
2機のワイバーケンからの追尾を受け、
ステルス化に伴って喪失した機動性が仇になる。
背後に迫る敵機の視界を、散布された銀紙の呪符が覆うが
それで撹乱できたのは前列の一機のみ。
「リバースカードオープン。グラヴィティ・ピット!!」
カイメラの飛行経路上に設置されたネフェニーのトラップが
重力の井戸を生み出し、追尾するもう一体のワイバーケンを
水面まで引き寄せる。
「からのォ!行けぇ、ダイナモ・スティングレイ!!」
水中から姿を見せたエイ型のスピリットが放出する電撃が
直撃し、感電によって麻痺したワイバーケンが川底に沈む。
「よぉ、ヤバかったねぇ!こりゃもう
空中から仕掛けるのは無茶だね」
カエリム側の陣地へどうにかたどり着いたカイメラに放水し、
装甲の破損を修復するマナのレテカスタム。
「次の法撃までたぶんもう時間がないナ。
これ以上ムリをすれば、こっちまで巻き添えになるゾ」
鉱山へポメ親方の救出に向かったハッシュに代わり、
残留したメンバーの指揮を預かったカルバが
地図を睨んで眉根を寄せる。
彼らが請け負ったのは、ボルソルン連合が
グリンデル城西北の川底に設置した巨大法台の
排除作戦への協力だ。
正面を引き受けるのは、城西南での九尾党への対応を
済ませてきたばかりのダークグリーンタワー。
制空圏内であれば優れた拠点防衛能力を空輸できるのは
まさに得難い戦力ではあるが、カニジャンやジュグーを主力とし
水中に布陣するボルソルン連合を攻め立てるには
機動的に運用可能な水中戦力が欲しいところだ。
「・・・スシヘイ隊は俺が突入するまで待機しろ。
『カエリムの水上からの攻撃に便乗して』仕掛けるぞ」
バイティングドッグス各機の通信網に割り込む音声は・・・
「大十島の堕魅耶。なるほどね・・・あの法台が
城砦に穴を開けたとしても、それを利用できるのは位置的に
ボルソルンだけ。みすみす連中にくれてやるくらいなら
カエリムに協力して法台をぶっ壊しちゃえ!ってワケですな」
そして、この通信は意図的にこちらに傍受させている。
どこまで信用できるかはわからないが、
当座の利害は一致している。
「どうする?行けってんならアタイはやるよ」
マナの言葉に、カルバも頷く。
「少なくとも、法台の破壊までは大丈夫だろうナ。
でも、一人では行かせナイ。オイラたちも一緒に戦うヨ」
通信と共に送られた、大十島の水中部隊の位置情報から
付かず離れずの距離感を維持して、バイティングドッグスも
再び水底の祭壇への攻撃を敢行する。
南洋諸島の戦士に、水場を苦手とするものはいない。
特化した専用機には及ばぬまでも、堕魅耶の愛機となるべく
建造された零吟愚霊武も水中での戦闘に適応している。
展開した爛華璃掘惧をスクリューがわりに、単騎で祭壇へと迫る
堕魅耶を認めたカニジャン隊が接近してくるが、
速度で勝る零吟愚霊武を捕捉できない。
遠隔攻撃手段を備えたジュグーが、追い立てるカニジャンの
反対側に回ったところで後続のスシヘイ隊がこれと交戦開始。
水底の祭壇を舞台に、ボルソルン連合と大十島の水中戦力が激突する。
「よぉし、ようやくここまで辿り着けたね!」
マナのレテが水中からの攻撃を警戒し、
レテに牽引されたカルバのガルガントとネフェニーのラビガタが
対空迎撃に備えるその頭上を、ステルス状態のカイメラが進む。
カルバのバスタークラブによる砲撃とネフェニーが召喚した
テンペスト・シルフがワイバーケンを引き受けるなかで、
カイメラが投下した爆雷が祭壇へと降り注ぐ。
水中でこれを迎撃するはずのジュグーも、今はスシヘイ隊と交戦中。
かくして、バイティングドッグスの攻撃がついに祭壇を脅かす。
「ウググ・・・マサカカエリムト大十島ガ手ヲ組ムトハ」
今はまだ致命傷には程遠いが、カエリムの正規軍がこの状況に乗じて
押し込んでくれば状況はかなり危うい。
対応を苦慮するルリムのジュグーを、思いがけぬ水流が翻弄する。
それは、地図上にさえ記されていない小さな支流の方角から。
オリアンデル鉱山から注ぎ込んだ鉄砲水が、
河川で繰り広げられる戦闘に混乱をもたらす。
流れに身を委ねるマナ機にしがみつき、上流に異変の原因を探す
カルバの目に、見覚えのある白いウーガーが飛び込む。
「・・・ハッシュ!?よかった!無事だったんだナ!!」
操縦席に流れ込む水を頭のバケ・・・兜で必死に掻き出している。
「ナンダ!?コノカニジャン・・・仲間ジャナイ!?」
激流と共に戦場に飛び込んだカニジャンが、
一層巨大にカスタムされた爪でルリム機を拘束する。
「おつまみにはちょうど良さそうな珍味だね!」
本領である水中戦に、ワカバも気合十分だ。
操縦席の格子から出した手を必死に振り、ハッシュが撤退を訴える。
「いえ!まだ全然大丈夫じゃないんです!!
カルバさん、早く逃げてください!!」
「あ〜はん?」
なんぞ?と瓶底眼鏡の奥で目を凝らすネフェニーが見つけたのは、
ガオに禅岳、キア、セオや、援護に向かってくれた仲間達の無事な姿。
年季の入ったゴーリアが背負う巨大なゼオジストが、件の龍脈石か。
その手元。カイメラからの警告に、彼女は気づいていなかった。
水底まで響く猛々しい咆哮と共に、水流がさらに激しくのたうつ。
迫り来る巨大な気配が、水底の戦士達の肌を粟立たせる。
「不本意ながら・・・受けた恩義は無碍にはできぬ」
川面を引き裂いて祭壇に降り立つ灰色の巨竜。
振るわれる爪がカニジャンを撥ね飛ばし、ルリムの窮地を救う。
「汝の捧げた供物の価値。その目でしかと確かめよ」
満ちる流水を沸き立たせ迸る竜の息吹。
ゼオジストの光が、祭壇を踏み荒らす侵入者達へと降り注ぐ。
光の瀑布の只中を、逆鱗目掛け遡上する深紅の機影あり。
「遂に───見つけたぞ」
今こそ唸れ、爛華璃掘惧。
奪われた全ての怒りを背負い、復讐を果たす牙となれ。
「我が郷の、目の、腕の、足の、角の───」
ブレスの合間を縫って翔ぶ零吟愚霊武の渾身の一撃が、
ディオニダスの喉笛に突き刺さる。
「妻の!子の仇!!・・・ここで討ち果たす!!!」
それは、好餌を見出した悦びか、
あるいは不埒なる叛逆への憤りか。
見知った妖気を身に受けて、贋作竜皇の双眸が真紅に燃える。
2023-07-27 19:47:14 +0000