※問題、不都合、解釈。口調違いなど発生の際はパラレル魔法の発動をお願いします。
※一部キャラについては場所・時系列・一部服装ファンタジア発生しています
※pixiv Fantasia SOZ illust/101965643
「はい、あーん。」
「自分で食べられる」
「あーん。」
何度目か有無を言わさぬマーセの押しに負け口を開けているところだった。
「随分、今日は暑いようだな。」
「っ」
「あら、ボス未だ出勤には早いんじゃないかしら?」
「ん?ああ、朗報というべきか。マーセ。」
「何かしら?」
「君の死亡届が通ったそうだ。」
失踪届や誘拐届け出はなく、それを飛ばして死亡届という言葉にムヅキはむせるが。
当の本人は驚いた様子もなくリンゴを置いていた皿を片付け始める。
「そう。案外遅かったくらいだわ」
「おそ……?」
「死体も買えるなんて怖い世の中よね。神様への冒涜だわ。」
「しっ」
先ほどから全てを言葉にする前に脳天を殴られる繰り返しでムヅキは目を白黒させる。
「言葉は悪いが、まぁ、そういうことだな。神様とやらがいるなら今回の騒動に関与した人間のほとんどが地獄行きだろう。」
「そうね……巻き込んでしまったボスやムヅキには悪いと思っているわ。」
強がってはいるが、なり替わる死体が買えたことがショックだったこともあり
言葉尻が弱くなるマーセだが。
「でも、それだけの覚悟を決めたことがお父様には伝わったから通った届けだと思って今は感謝をしましょう。」
オース=ガーキナ伯爵は、自らの娘が解らないほど薄情な人ではない。
他人から解らないような死体だった可能性はあるが、魔力痕を見ればガーキナ家の者には凡そ死体の真偽くらいは確かめられたはずだ。
ソレをしなかった、あるいはしたうえで、見つかった死体をマーセだと申告したのは。
マーセ=ガーキナが正式に家督相続レースから降りると決めたことを二度にわたる家出という形で。
理解した父がひと芝居打ってくれた他ならない。
マーセは確かにすべてを捨てる覚悟をしていたのだろう。
けれどそれ以上にたくさんの事を飲み込み、彼女を受け止める覚悟をしたムヅキには何とも
拍子抜けな結末を迎えるのだった。
「ムヅキ、怒っている?」
怒っているかどうかで問われれば怒っている。相談位しろと言いたかったが。
この発想のネジが何本か緩んでブレているお嬢様、いや元お嬢様の暴走は今に始まったことではないとため息をつく。
「もういい。」
骨折しなかった方の手でマーセの手を握る。
「仲直りのキスは?」
「バッ、人前でするわけないだろう。」
「私は気にしないぞ?」
揶揄うボスこと、所長であるメルテとじゃれるマーセ、振り回されるムヅキ。
運命の悪戯か、新しい就職先、生活がマーセとムヅキの運命の色をコロコロと変えていくのを知っているのは。
今は神のみというところだろう。
Fin
【お借りしました】
ムヅキさんillust/102230736
メルテさんillust/101965748
ただのマーセillust/102755043
【ご挨拶】
SOZ参加、閲覧おつかれさまでした。
トンチキ企画的に投下したマーセでしたが。
ムヅキさんやメルテさん、他の方たちと共に物語を紡がせていただき楽しい限りでした。
この作品をもって一度マーセのお話はエンディングとなります。
本当にありがとうございました。
・マーセの拙い計画を汲んだオース=ガーキナ伯爵(マーセの父)の計らい表向きは死亡したことになっているため。墓を暴いたりされない限りは追手はかからないかと思います。
・計画は一人で実行したわけではないため(多分)マーセの死亡に噛んだ人たちは真相を知っています。
・簡単な経理や書類整理などは家督相続においての後継教育の一環でできますが、家事がまだまだお子様のお手伝いレベルなので。これから学んでいくと思います。
・基本ムヅキさんにべったりなままです。
・ムヅキさんが五体満足で帰ってきてるのは私の願望です。
2022-12-28 08:43:35 +0000