頭が割れるように痛い。ぶっつけ本番、しかも中規模以上の細やかな地脈操作は幼い火浣竜には大きな負荷であった。
出来てあと3時間、夜明けまでが限界である。
雨を切るように金の輪を背負った竜───エルズゥが主人の頭上に舞い戻ってきた。
「殿下! 敵がこちらに! 回収しますから中断してヒトガタに戻ってください!!」
「ま、まって、まだ人が……!」
貴人用の搭乗鞍には当然ながら殆ど武装はない。まだ避難の終わらぬただ中、しかも市街地地表で火炎弾など放てるものではない。
まごつく内に敵が直ぐ近くまで現れた。鉄の獣の群れ、渇土獣である。
そして先ほどの魔術通信を聞いたのか───はたして肉声以外も騒音とみなすのかあの六枚翅も居た。
地脈の根に近いここで間欠泉は出せない。 土壁? この群れを防ぎきるほどのものを? しかも飛行している魔物までいるのに何の意味があるのだろうか。急がなければ、大きいだけで身動きすら取れないリュウタイは戦う術を持たない。
だがまだ避難は終わっていない。六枚翅が降下してきた、だが今手を引けば───
迷える思考は雷光と喊声で中断し、そして無意味な物となった。
「よぉ羽公共!!さっきはよくも殺してくれやがったなァ!!」
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【鱗巨人の槍】
かつて七悪魔との戦いで巨人の英雄が使ったと言われる槍。多くの悪魔を屠ったが、最後に討たれた悪魔が
「バラリアの支配する地(現ゼラルディア)に生まれた者が触れればそこから腐り落ちる」呪いをかけた。
錆びず欠けず恐ろしく切れ味のいい業物だが、
先述の呪いと、巨人が扱う事前提の汎人族では扱えない重量からある商人の蔵のどうにもならない危険物になっていた。
身なりからしてゼラルディア人ではなく、膂力もあるガルキープが安価で押し付けられた。
切れ味に比してあまりに安かったためガルキープはリース価格だと思い込んでいるが、商人としてはこのまま売り逃げする気満々である。
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「待たせたな! お嬢、エルズゥさん!」
「「誰(ですか)!?」」
「酷い!」
■※時系列的には民間人の避難が完了する前となっております。新キャラシと詳細どうしてこうなったかはアフターで出します。
奮えよ宝剣【illust/103741811】に参加します。豪商モブの人に槍をおしつけ……購入しました。
願い継ぐ竜の雨【illust/103663022】引き続き参加します。(雨を浴びたガルキープの回復速度が上がっていた)
本投稿はイスリアド家ですがPCはフリーです。
■お借りしました
月咲ノ花獣【illust/103662780】
雷鋼の民【illust/88293453】
■イメチェンした【illust/102467850】
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雷鋼の民の電撃の源は魔力である。
しかし魔力は体内で電気に変換される。出力されるのは純然たる放電。
魔力をそのまま電気の形に表出する一般的な雷魔術とはそこが異なる。発生する結果と作用には差がないため本来はさして注目されないもの。だが今は違う。ましてやこの大雨、水を経由すればさらに魔術性は薄まりただの物理現象に偏るのだ。
結石種子という同居人を失った心核は仇とばかりに住まう鋼体を変質させ、電気を巡らせる。
すなわちこの電流を伴った刺突は───
「25年分の充電だ。中々痺れるだろ?」
2022-12-25 13:40:49 +0000