企画元:ポラリスの英雄歌【illust/80979654】
□青星(あおぼし)/Fyllovolos-フィロヴォロス(400pt - 白雨国)
第3期:illust/86416731
山間に凍りついた精霊の弟の、名を「フィロヴォロス」という。
兄が春を告げるなら、弟は恵みの糧を守るものだった。
彼らにとって落葉は、いのちを育むもの。芽吹きをもたらすものなのだ、と。
❖Skill
□エスカフラージュ
力をうしなったそれは童子のようであったが、おのれの苗床に辿り着くと、かつての姿の幻をおのれに被せた。
それを見た違う雪童子が、細々とした声をあげて、喜んでいた――。
❖家族
あの子:鋭心さん【illust/85902236】
「」
「こちらに来てはいけない。辛くとも。……守れるかい」
子供たち:鋼宿さん【illust/87695094】/雪声【illust/88045468】
父:雪果【illust/85456412】
母:アイデースさん【illust/85160566】
兄:雪解さん【illust/86415471】
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その姿はずっと稚いものだった。
それは元にも増して力が無かったが、時世だけは、彼に味方した。
当時は母や兄に頼らなければ、渡ることのできなかった国境。
暗い空なら、不思議と行けるような気がして、目覚めた紫の森の木陰を龍はするり出た。
雪のない大地に蛇の下肢は鈍重で、這いずりながらの道行はけして安泰でなく、そして鈍い。
有利な気候と再生する身体のみを頼り、果たして幾許月日が過ぎたか。
――六花がちらつきはじめた頃、視線の先に龍を見た。
確か、あの子は言った。見えたのだと。「山のほうに龍が飛んでいるのが」と。
白い山間を、ソラノツカイが泳いでいた。見覚えある龍が。
⋆
「こっち、こっち」
囁き声を弾ませて、雪童子がふわり先頭を切っていた。
胡蝶のような身形のそれは、時折背後を振り返っては宙に留まり、またふわり道なき道を進んでいた。
その後ろから、新雪を退けながら進む蛇龍が、ひとつ。
幾らかそれを繰り返したのち、「ここだよ」と雪童子は言って、そこにあった樹の根に留まった。
――地を突き破るそれに留まって、その先の樹を蛇龍に示した。
堅牢な氷塊より生える樹がひとつ。枝葉に霜を揺らしながら、鋭利で透い氷のように高くへ伸びる。
おのれの躯を食ってそびえる、かつての宿り木を見上げていた蛇龍の、その足元に。
踏み固まった小さな、けれど記憶より大きな足跡が、氷になってそこに在った。
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「君が、また来ていたんでしょ。鋭心。嬉しかった。……お別れを、言わなくちゃ」
2022-12-20 14:32:23 +0000